展示会の強化書

展示会ブース出展の成果を劇的に向上させるための方法論をギュっと濃縮した強化書です。あなたのビジネスは展示会で大きく伸ばせる!

アフターコロナの世界で展示会産業は生き残れるか【後編:価値観アップデート 展示会2.0】

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※この記事は私の個人noteにUPした記事を転載しています。

 

展示会に関わるプレイヤーのなかでも、出展者の皆さまだけでなく主催者や装飾会社などサプライヤーの皆さまにも見ていただき、これから先を考えるきっかけにしていただきたいと思っています。

 

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アフターコロナの世界において展示会産業はビフォーコロナのような存在感を発揮できないかもしれない。私はそんな危機感を覚えています。

前回の記事では、その課題意識を共有しました。まだお読みでない場合には先にコチラの記事をご一読ください。

www.tenjikaibooth.net

 

後編は課題に対する解決アイデア。価値観をアップデートして展示会2.0の姿を模索したい。そんな提案です。

展示会は、これまでずっと1.0の世界でした。小さな変化はあれども「イノベーション」と呼ばれるような変化はありませんでした。それだけ強いコンテンツだったとも言えますが、ウィズコロナは展示会産業そのものに対して価値観の革新を迫っています。

 

 

展示会産業に発生する課題のおさらい

改めて、展示会産業に発生する課題を整理しましょう。

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ウィズコロナの現在、企業のマーケティング活動のうちオフラインのチャネルは壊滅状態です。展示会は軒並み中止、自社セミナーも開催が憚られる、テレアポしようにも客先への電話がつながらない、対面営業なんてもってのほか。これまでに「リアル」なコミュニケーションから獲得していた顧客との関係性は、いま機能していません。

よって、必然的にビジネスの関係性づくりはオンラインにシフトしていきます。

特にこれまで展示会が主役を担っていた「リード(見込み客)の獲得」については、一気にオンライン化が進むでしょう。何しろリードを獲得しないことにはビジネスが先に進まないのですから。

そして、ウィズコロナの状態が長引けば長引くほど、市場のオンライン化は顕著になります。「オンライン化に対応出来た企業が生き残る」とも言えるかもしれません。

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アフターコロナの世界で展示会の価値を高めるシンプルな2つの方向性

では、アフターコロナの世界で展示会産業はどのように価値を生み出していけば良いのでしょう。従来の価値であった「リード獲得」は既にオンラインが一定の役割を担っていると想定します。

シンプルに考えたときに展示会が価値を生み出すための方向性は2つあります。

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1.獲得できるリードの質が劇的に向上する
見込み客をオンライン上で獲得できる、しかし同じ見込み客であっても展示会の方が受注確率の高い「質の良いリード」が獲得できる。そんな状態になれば展示会の価値は高まります。当然ですね。

2.リード獲得の他に生きる道を探す
見込み客の獲得においてオンライン施策が存在感を得ることは間違いありません。よって、ビジネスプロセスにおける「リード獲得」以外の接点に生きる道を探ります。例えば「リード育成」や「商談」「契約」など。どんな可能性があるでしょう。

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まずは、「獲得できるリードの質を向上させる取組み」について考えてみましょう。

そんなコトできるの?、結論から言うと出来ます。というより、ビフォーコロナの展示会はまだまだ「獲得できるリードの質が低い」と言わざるを得ない状態でした。

「あれ?、ウチは十分良いリードを獲得できていたよ?」と思われた出展者の方もいるでしょう。そんな方でも実は「もっとリードの質を向上させる」ことができていたのかもしれません。

私は普段から「来場者がブースに立ち寄る動機」をデザインできている企業が余りにも少ないと、展示会を視察して感じていました。だから実は、出展者側の努力次第でリードの質を向上させることは可能なのです。

しかし、これは「出展者の努力」によるものです。

「リードの質の向上」は出展者の努力によって成立します。主催者がアプローチできるのは「リードの総数」を増やす方策です。

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ところが、アフターコロナの世界においてオンラインで一定以上のリードが獲得できている場合、敢えて負荷をかけてオフラインの展示会に出展する意味はどの程度あるのでしょうか。

展示会でしか出会えない顧客がいる?、展示会を中心に情報収集していた顧客がいる?、この前提だって、覆る可能性が高いということを忘れてはいけません。

顧客(来場者)側もオフラインでの情報収集ができないのであれば、今よりもオンラインでの情報収集に力を入れます。そして、これから先はオンラインの情報量が一気に増大します。

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それでは、「リード獲得」の他に展示会が活きる方策はあるのか。今回の記事はその可能性を探るものです。

これは、主催者だけでなく関連サプライヤー、もちろん出展者や来場者も含めた「オール展示会プレイヤー」で探るべき価値になります。

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既存の価値観が置き換わるこのタイミングだから、展示会の価値を再定義する必要があります。今まで長いあいだ展示会1.0で進んできたモノを、ようやく展示会2.0にアップデートするタイミングなんだと感じています。

 

いまいちど考えたい「そもそも論」

展示会の価値を考えるにあたって考えたい「そもそも論」があります。

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展示会って、誰のために存在しているのでしょう?
誰のためのモノだと思いますか?

建前を排除して敢えて述べましょう。現在の実態はズバリ「出展者のための場」となっています。

なぜなら展示会産業は基本的に「出展者のカネ」で成立するビジネスモデルだからです。

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よく展示会は「主催者」「出展者」「来場者」の三者によって成立すると言われがちです。その表現はキレイな三角形をしているコトが多いです。が、これは建前。(右図)

実態は主催者と来場者の間には距離が存在します。一応は繋がっているのですが、あくまでも「出展者」を中心としたビジネスモデルです。(左図)

当然ですよね。誰のカネで成立しているんだ。三方良しと言えば聞こえは良いですが、それは「出展者に対する貢献」を至上命題としたうえでの表現です。

だから、展示会産業は「出展者のためのコミュニケーション」を作り上げてきました。そのような活動を「出展者」自身も価値として感じていたので展示会を活用していたわけです。

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しかし、ウィズコロナを経て出展者の価値観が変化します。オンラインへの移行が顕著になった社会では展示会の存在感は間違いなく低下しています。

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近年、マーケティングに対する新たな手法の開発やその知見の広がりは凄まじい速度です。しかし、これらはすべて売り手が主体の言語です。

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いかに「自分たちを見てもらうか」という価値観のもとマーケティング界に現れる数々の手法・概念。その流れは一気にオンラインへシフトしていきます。

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マーケティング側の「リアルの展示会に対する期待」は相対的に低下します。だから、マーケティング側を主語にしていても解決策は中々見いだせないのです。

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では、今この話題のなかにまだ出てきていない「来場者」はどうでしょうか?

展示会を支えているプレイヤーの一角でありながら、その存在感は実に産業のなかで薄いものです。

「いやいや、近年は来場者のためのサービスも充実しています。」という反論もあるでしょう。展示会のホームページでは課題から出展者を検索する機能が付いています。アポイントシステムも充実してきたので、気になる出展者から適切に説明を受ける機会をつくることだってできます。

ですが、それも「とことん来場者中心か」と言えばそんなことはありません。

基本的に来場者は「自力で良さげな企業をピックアップ」して、「自力で訪問予定リスト」を作成して、事前に気付けなかった「自力で価値ある出展者を展示会場から見つけ出す」ことが必要なのです。かなりの手間と苦労です。

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来場者が完全に主体となっているサービス。来場者に貢献することを第一義としているサービスは展示会産業のなかで圧倒的に少数派です。存在するのかもしれませんが、その存在感は非常に薄い。

これは先に触れたビジネスモデルに原因があります。産業そのものが「出展者のカネ」に依存している構造だからです。

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しかし価値観が変わった社会では、これまで存在感の薄かった「来場者」に対するアプローチが価値をもつ可能性があります。来場者に対する「あり方」を考えることが、展示会産業の活きる道へつながる。そう感じるのです。

 

来場者が主体の展示会へ、主語をチェンジする

さて、来場者にとって展示会とはどんな場なのでしょうか?
まずは【ビフォーコロナ】の世界における来場者にとっての展示会を整理してみましょう。

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来場者の多くは「情報収集」を目的としていました。自社の課題を解決するようなサービスがないかを探す最初のステップです。もちろん緻密な商談をする・その場で発注に近い状態まで至るといった使い方をする来場者(あるいは業界)もありました。しかしそれらは少数派です。

「リード獲得を目的とする出展者」と「情報収集を目的とする来場者」は相性がよい、マッチしています。だからこそ展示会はこれまでビジネスとして成立していました。

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さて、アフターコロナを迎えると当然マーケティング側だけでなく顧客側にも変化が現れます。

売り手がオンラインへの活動に注力することで、今よりも格段にオンライン上の情報が増加します。つまり、顧客は今よりも格段に「情報収集しやすい」環境になると予測できます。

そうなると、顧客側にとっても「情報収集のための展示会」とはビフォーコロナと比較して意味の薄いものになります。しかし、情報収集に限らず考えると、その可能性はまだまだ眠っています。

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余談ですが、オンライン上に情報があふれ出すと、その情報の洪水のなかから「自社に最適な情報」を探し出すテクニックも重要になってくるでしょう。いまインターネットを取り巻く世界のなかで皆さんが感じているコトがBtoBの世界でも発生するわけです。

だから、BtoBの課題解決に関わる情報を集約する「ニッチなメディア」が一気に増える可能性もありますし、企業の「調達」が今よりも重要度の増すポジションになる可能性だってあるはずです。もしかしたら、「調達」じゃなくてもうちょっとカッコイイ概念と部門名が生まれるかもしれませんよね。

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展示会産業のスタート地点は「アフターコロナで変化する来場者のビジネスプロセス」において、最も効果的な「自らの活用方法」が何なのかを模索することです。

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ビフォーコロナは出展者起点、アフターコロナは来場者起点。これが展示会2.0の姿ではないでしょうか。

ここから先は、具体的な私のアイデアを提示したいと思います。

 

実践アイデア①:来場者の課題解決マッチング

ビフォーコロナの展示会で来場者が最も困ることは「どの企業が自社の課題を解決してくれるのか分からない」という点です。

事前にリサーチはします、アタリもつけます。しかし、本当に課題を解決できるのかは分かりません。忙しい日常業務の合間を縫って展示会を訪問するため、十分にリサーチができず場当たり的に展示会場をウロウロせざるを得ない人もいます。

そんな課題を解決する方法はシンプルですよね。「あなたの課題を解決するにはこの出展者が最適です」とマッチングすることです。

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現在でも実践しているよ、という事例はあるでしょう。しかし、ビフォーコロナのマッチングは不十分です。真に来場者のためのサービスを構築できているとは言えません。その理由は先に上げた「出展者のカネ」によるビジネスモデルが理由です。

「出展者」が中心にまわるビジネスでは、出展者に差をつけることは出来ません。出来たとしても、それは主催者に対してさらなる「広告費」などを支払った場合に限ります。

例えば、来場者のとある課題を解決できる企業を、マッチングしようとしたときに「来場者のためにならない」と判断された出展者をハジくことができるかどうか。

その出展者自身は「その課題の分野を解決できる」と主張していたとしても、「いや無理でしょ」とハジくことができるか。これは、既存のビジネスモデルでは不可能です。

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だから、真に来場者のためになるマッチングサービスとは、出展者に差をつけることでもあります。来場者のためになる出展者だけを紹介する。これが実現できると来場者は嬉しいでしょう。

さらに、それらの企業に対して自動でアポイントを取っておいてくれるということなしですよね。

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「自分たちの課題を自分たちで正しく認識する」
コレは思った以上に難しいものです。正しく自社の課題を言語化できていなければ、自社の課題を適切に解決するサービスにも辿り着けません。

2つの言語化

この図はまた別の機会に作ったモノを持ってきています。顧客側と売り手側の双方が自身の本質を言語化できているかという点は、この先さらに重要となるでしょう。

「自社の本質的な課題を言語化できている」顧客と「サービスの本質的な価値を言語化できている」売り手との関係は幸せなものになります。そのどちらかが欠けてもいけません。

だから、展示会においてはマッチング側が双方の言語化をサポートできるとさらに良いでしょう。

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意外とサービスを提供している側も「自社の本質的な価値」を掘り下げられていません。先に挙げた「来場者がブースに立ち寄る動機」をデザインできている企業が余りにも少ないという状態は、まさにこの言語化の不足を象徴しています。

 

実践アイデア②:意思決定のための展示会

もう一つ、こちらの方がさらに展示会の価値を拡大できると感じているアイデアです。まずは、顧客の「ビジネスプロセス」から考えを深めてみましょう。

従来の常識では展示会は「情報収集」の場です。しかし、それは単なる固定概念です。この先入観を取っ払ってみると、展示会を「情報収集」から「意思決定」の場にするためのアプローチが見えてきます。

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つまり、展示会をコンペ的に活用するのです。

アフターコロナの世界では顧客はオンライン上から既に情報を収集できています。その情報が自社に適合するものになるかどうか、展示会を提案日として複数社に提案を要請し土俵に上げる日として活用するのです。

もし展示会が「意思決定の場」として機能するようになれば、間違いなく展示会期間中は来場者も出展者もキーパーソンが揃い踏みする日となるでしょう。

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BtoBは意思決定のプロセスが複雑であり、かつ案件の長期化という課題が常に付きまといます。

意思決定のプロセスが複雑になる理由は「関わる人」が多いからです。多くの場合、その製品・サービスを「使う人」「調達する人」「決済する人」の三者が関与しています。この三者のうち誰かが反対すれば発注に至る可能性はぐっと下がります。

BtoBのビジネスにおいて「組織ペルソナ」や「関与者ペルソナ」を設定しなさいと言われる理由はココにあります。調達プロセスは思った以上にボトムアップの文化で成り立っている。

しかし、展示会が意思決定の場として機能すれば、そんなBtoBビジネスの一般常識にも風穴を開けられるかもしれません。

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展示会が、トップセールスと関与者セールスを兼ねる。しかも、その選定対象が一気に複数社集まる。これほど意志決定に向いた機会は無いのでは?

出展者にとっても一定のメリットはありますよね。関与者に対して一気にアプローチができるうえ、競合に対する優位性があると自信を持っている場合には、一気にライバルを土俵から追い落とす機会になるのです。

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もし、「意思決定の展示会」を本当に実践するのであれば「展示会という場のあり方」も大きく変わるはずです。

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来場者がその場で「いかに意思決定するか」に特化した会場構成が必要になります。会場内にプレゼンゾーンが必要になることはモチロン、来場者がじっくりと滞在し検討するための場も必要になります。プレゼンゾーンを各来場企業一つに対して一室提供しても良いでしょう。

このように、ビジネスの「目的地」に展示会を活用することで、そこに臨む来場者・出展者のあり方もまったく変わります。

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そもそも展示会産業は、ビフォーコロナの役割である「情報収集」の機能が重視されている風潮を変えたがっていたはずです。「商談」が重視されるような「あり方」を目指していたはずでは?

「情報収集のための展示会」と来場者が捉え、「見込み客獲得のための展示会」と出展者が捉えているうちは、「商談」に特化した展示会は実現できません。

しかし、展示会の活用目的が「意思決定」になると、その重要度は飛躍的に増すでしょう。展示会産業が目指していた「商談」を重視する場のあり方にシフトするためには、来場者のビジネスプロセスのどこで展示会を活用することが来場者にとって最も有難いものになるのか。この視点が大切でしょう。

 

ビジネスモデル自体を変える

さて、先に挙げたアイデアはどうすれば実現できるのか。残念ながら今の展示会ビジネスモデルのままでは難しいでしょう。

「来場者のための展示会」を全力で実践しようとしても、それは必ずしも出展者にとって歓迎すべき状況ではありません。

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マーケティング側は様々な打ち手を活用し「顧客の目が自分たちに向く」ように努力しています。自分たちの土俵に顧客を引き込もうと活動しているわけです。

しかし先に挙げたアイデア、特に「意思決定の展示会」とは、そんなマーケターの努力をちゃぶ台のようにひっくり返し、強引に顧客と売り手を別の土俵に上げようとする行為です。来場者にとっては有難くとも、出展者としては歓迎できないこともあるでしょう。

そこでハードルになるのが、再三挙げている「出展者のカネ」で成立する展示会というビジネスモデルです。

これは主催者に限ったことではなく関連サプライヤーも同様です。「展示会におけるマーケティング支援」のサービスもソコソコ世の中に溢れかえっていますが、コレも当然「出展者のカネ」で動くビジネスです。

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出展者のカネで動いている以上、出展者の歓迎しないサービスを導入するのは難しい。だから、ビジネスモデル自体を変えられないかを考えてみるのです。

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これまたシンプルに対応策を考えるのであれば、展示会を「来場者のカネ」で動くビジネスにしてしまうのです。つまり「入場料収入」を事業予算の柱にする考え方です。

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「来場者のカネ」だから「来場者の得」になることへ全力で注力できます。ここにアプローチできるのは「主催者」と「新たなサプライヤー」の二者です。

しかし、主催者がそんなに大胆にビジネスモデルを転換できるかなぁ。そもそも来場者からの収益で展示会は成立するのだろうか?、ビフォーコロナの展示会産業に関わっている人ほど、その達成は難しいと可能性を切り捨ててしまうでしょう。

難しさの理由は、具体的な展示会で考えてみると分かりやすいですね。ここでは「関西ものづくりワールド」という総合展示会を例に取ってみます。

この展示会で主催者が出展者から得る出展料収入は、およそ12億円程度ではないかと想定しました。(勝手な想定なので全然違っているかもしれませんが・・・)

来場者は4万人です。つまり、出展料収入に相当する12億円を来場者から得るためには一人当たりの入場料を3万円に設定する必要があります。しかも、4万人がそのまま来場したと仮定してです。

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普通に考えると夢物語でしょう。現実味なんて皆無です。ですが、ここで留まると新しい発想は生まれません。だから逆から考えてみるのです。

「来場者が3万円払っても参加したい展示会とは」・・・と。

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例えば、意思決定の展示会として活用したうえで、出展企業との契約を締結した場合には「出展企業から入場料のキャッシュバックを受けられる」というシステムを作っても良いかもしれません。本気でビジネスをするつもりの来場者なら確実にキャッシュバックに辿り着くので、むしろ商談の質が向上するかもしれません。

100%来場者からの入場料で運営するなら、出展者の出展料はゼロです。つまり、展示会出展にあたって必要な経費は装飾費用や人件費程度になります。キャッシュバックは成功報酬みたいなモノなので、出展者側にとってもリスクを抑えて出展することができます。

その代わり、出展者をタダで出展させている分、主催者には出展者に差をつける権利が生まれるのです。

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と、これは「主催者」「出展者」「来場者」の立ち位置を新たに定義したモノなので少々大げさになっています。しかし、「新たなサプライヤー」はこのサービスを非常にスモールに始めることができます。

来場者との取引による、来場者のためのマッチングサービスを開発する。こんな新たなビジネスがアフターコロナの世界では成立する可能性があります。

もしかすると今までにも存在したかもしれません。しかし、ビフォーコロナの展示会ではその存在は不要でした。その価値観が変わるタイミングだから、もしかすると来場者向けのサービスは新規事業の立ち上げ・起業として良いタイミングなのかもしれませんね。

この視点・ビジネスは、起業の際に重要と言われる「Why Now?」の問いには応えることができています。

 

各展示会プレイヤーは、何を考えるべきか?

個々のプレイヤーは、来るべきアフターコロナの世界に向けて何を準備しておけば良いのでしょう。それぞれに向けた私のアイデアを幾つか提示します。

ー 主催者 

「来場者のための展示会」の模索

いきなり大規模展示会で、このようなあり方を実践することは難しいでしょう。だから小さな成功体験を積む必要があるはずです。小規模な会場でテーマも絞り、ビジネスモデルを来場者起点にした展示会をスモールに実践する。そのプロジェクトを複数回繰り返すことで展示会の新たなあり方が見えてくるはずです。

結局、ビジネスモデルは変わらないかもしれません。そんなときでも「意思決定の場」にするための工夫を取ることが最善の策だと思います。例えば、「同一企業でありながら別担当者が複数名で来場」することに対する強いインセンティブを設定するなど、まだまだ工夫の余地はあるはずです。

 

ー 出展者 

「来場者の変容」を想定した向き合い方

リード獲得よりも育成・意志決定として活用する方法を模索してみてください。他社と比較してもらいながら自社を説得する絶好の機会です。商談プロセスにおける「勝負のタイミング」と考えると展示会はまだまだ有効活用できるはずです。

また、実はリード獲得においても可能性はあります。なぜなら、ビフォーコロナの段階においても展示会の価値を最大限活用できている出展者は少なかったからです。このウィズコロナ期間中に「顧客に向けるコミュニケーションの精度」を高めることに注力してみれば、リアルで効くコミュニケーションのあり方も見えてくるはずです。

 

ー サプライヤー(イベント・装飾会社) 

「コミュニケーションをつくる」というそもそも論。

実は、アフターコロナの世界で最も苦境に立たされる業態だと思っています。もし「意思決定」の展示会になっていくとすれば、展示会は予約商談が中心になり偶然の出会いは少なくなります。極論、装飾要素が不要となってしまうかもしれません。

現状の展示会サプライヤー(特に装飾会社)の課題はコミュニケーションをデザインできていないという点です。来場者の行動そのものをデザインできていないので、実は展示会装飾業界のデザインは「薄っぺらい」ものが多いのです。これは自分自身がその業界に身を置いて強く感じていた課題意識です。

本当に出展者のコミュニケーションに深入りするのであれば、一つの展示会で何社も装飾を請け負うビジネスモデルそのものが本来おかしいと気付かないといけません。このビジネスモデルを装飾業界が採用している時点で「出展者のビジネスに深入りしません」と宣言しているようなモノです。深入りするなら間違いなく競合になるような出展者のブースに携わることは出来ないはずですから。

せめて、今のうちに「コミュニケーションをデザインする」とはどういうことかを考えましょう。それは「出展者と来場者のビジネスモデル」と「双方をつなぐビジネスプロセス」を理解しなければ、「場のあり方」には辿り着けません。ココを理解するスキームを持つだけでも少しは変わってくるはずです。

 

ー 新プレイヤー 

この誕生には大きな期待感を抱いています。アフターコロナの世界だから成立する展示会ビジネスは確実にあります。

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個々のプレイヤーだけでなく、業界全体で知恵をしぼるプロセスも必要だと思います。カンファレンス、ワークショップなどを今のうちにオンライン上で積極的に開催し、各々が立ち向かう方向性を見出すべきでしょう。

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先に挙げた実践アイデアは私個人から出てきたモノに過ぎません。しかし、業界の知恵が集まれば、もっと画期的なアイデアだって生み出せるはず。それを作るには「場」が必要です。

 

価値観は変化し始めた。展示会2.0を探そう

もう一度、アフターコロナの世界を想像します。

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・ビジネスプロセスが変化する
・ビジネス価値観が変化する

この状況をリアルに想像したときに、展示会はどこへ向かうべきか、考えましょう。

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もしかすると、アフターコロナの世界が到来したときにビフォーコロナと同じような展示会の姿が見られるかもしれません。

なんだ、イロイロな可能性を想定したけど結局のところ元通りじゃないか。やっぱりリアルなコミュニケーションは求められているんだなぁ。良かった良かった・・・と考えてしまうのは早計です。

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オンラインの価値は右肩上がりで上昇します。しかし、アフターコロナの到来が早く、顧客がリアルなコミュニケーションに求める価値をまだ上回っていない場合、展示会も元のような賑わいが「一旦は」戻るでしょう。

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しかし、それはリアルの価値が高まっているわけではありません。確実にオンラインとリアルの差は詰まっています。

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アフターコロナの到来に時間を要すると、オンラインの価値がリアル価値を上回ります。これはオンラインの価値の伸び率によって変わりますので、いつこの状態が訪れるかは分かりません。

しかし、リアルの価値が高まらずオンラインの価値が高まるのであれば、早晩オンラインに逆転されるはずです。ウィズコロナもアフターコロナもオンラインの価値は上昇し続けます。リアルの価値が伸びないのであれば、いずれ追いつかれてしまうことも目に見えています。

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だから、よく叫ばれる「リアルにはリアルにしかない価値がある論」には違和感を覚えてしまうのです。リアルの価値を高めようとする取組みが存在しなければ、いつ逆転されてもおかしくはない。そして、オンラインの価値向上はウィズコロナの期間中に右肩上がりが加速します。

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何度でも同じことを言います。私たちは新しい価値観で新しい価値を作り上げなければいけません。それが産業全体のためになるはずです。

そして、ビフォーコロナの世界における展示会の価値を、展示会2.0は超えられるはずです。今までとは異なる展示会の捉え方が、展示会をもっと魅力的で、もっと多くの人に求められる、もっとステキな場になると信じています。

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展示会2.0を、考えていきましょう。

 

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