「展示会ブースの集客を増やしたい」という想いは出展者が当たり前に抱く想いだ。しかし、そんなに集客が簡単なことではないことは皆さん自身の経験としてご存知だろう。
「来場者目線で効果的なパネルや展示品をつくったぞ!、なのにあれ?、なんでお客さんがブースに入ってきてくれないの・・・!?」そんな「なぜ」という状況が生まれた理由は、来場者が抱く2つの心理がどう働いたかを整理すれば、ある程度は説明がつく。
- 欲求と警戒心の綱引きをコントロールして集客を増やす
- 前提として理解しておくべき来場者の状態
- 来場者は欲求(好奇心・興味)が無ければブースには足を踏み入れない
- せっかく高めた欲求にバリアーを張る困ったちゃんの名は「警戒心」
- 警戒心を高めてしまうスタッフの行動
- どんな来場者でもウェルカムなのか
- おわりに
欲求と警戒心の綱引きをコントロールして集客を増やす
来場者がブースに足を踏み入れるかどうかを決めるときには、2つの心理が影響しあっている。
それは、欲求と警戒心。
来場者がブースに足を踏み入れるのは、欲求と警戒心が綱引きをして欲求が勝った場合だ。
展示会ブースへの集客のコツについて、一般的に「欲求」へのアプローチはそれなりに謳われているので重要性を理解している人も多いだろう。キャッチコピーや目を引く展示物をレイアウトし、来場者の「このブースで話を聞いてみたい」と思わせるための打ち手を打とうとする出展者は多い。
が、来場者が持つ「警戒心」に対してはそもそも意識が向いていないケースが多い。そのため、欲求を高めるような適切なキャッチコピーを配したのに、警戒心を高めてしまったがために集客に失敗するようなケースが発生する。
そんな状況を回避するため、欲求と警戒心の綱引きを適切にコントロールするための考え方・方法論を考えていきたい。
前提として理解しておくべき来場者の状態
そもそも、来場者はどんな状態で展示会にやってきて、どんな気持ちでブースをまわるのだろうか?
【来場者の気持ち】
- 自分の課題や悩みを解決してくれる会社とは繋がりたい
- それ以外の会社とは積極的に繋がりたいわけではない
有り体に言えば「自分の課題を解決してくれる人とは関係を築きたいが、そうでない人とは関わり合いになりたくない」という状態だ。「関係ない人は来ないで!」、「メンドクサイから営業して来ないで!」、という状態と言ってしまえる。
実際、ここまで言語化できている来場者は少ないだろう。しかし、心の奥底にあるこれらの想いが、来場者の行動としては現れてしまう。展示会という場の特性が持つ特徴が来場者のそんな心理をさらに増大させる。
そう、来場者はとっても忙しい(時間がない)。もしかしたら自分に関係あるかも?ぐらいの情報では見向きされないことだってある。この前提条件をふまえると、欲求と警戒心の双方に向けた適切なアプローチ方法が見えてくるだろう。
来場者は欲求(好奇心・興味)が無ければブースには足を踏み入れない
欲求を高めないことには、そもそも来場者はブースに足を踏み入れてくれない。間違いなく最初の一歩を進めるのは来場者の欲求であることは事実。
例えば、来場者の困りごとに対してアプローチしよう。例えば、ブース全体を課題解決型にしよう。例えば、商材のカテゴリ名でなくベネフィットを謳おう。これらの打ち手はいずれも来場者の根源にある欲求に働きかけ、それを高めようとする行為と言える。
欲求を高めるとは、このブースで話を聞きたい!と思わせること。そのためには通路を歩いている来場者の足をとめることが最初のステップになる。このときに重要な役割を果たすのがアイキャッチ要素と呼ばれるアイテムだ。
どんなアイキャッチ要素にするのか考える際に重要なポイントがひとつ、「目を引くこと自体は手段であって目的ではない」と理解することだ。
「そんなこと当たり前でしょ」と思うかもしれないが、展示会場をまわってみると単に目を引くことだけを目的にしたようなアイキャッチ要素で溢れかえっている。いかに手段と目的が入れ替わってしまっているのかという現状を目の当たりにする。
来場者の気持ちになって考えてみるとよいだろう。
例えば、とても目立つ情報があったとしても、しかし自分の興味を引く情報でなければ見切って目線を移すだろう。「とってもおトクな情報だよ、見てね!」、あるいは「とっても面白いコンテンツだよ、見てね!」、というアイキャッチに釣られて見てみたときに、自分の期待しているような情報ではなかったときのガッカリ感たるや・・・
つまり、注目させたらさせたで、その先の「内容」が重要になる。内容が伴っていない場合、ガッカリ感・失望感を伴って、来場者は意識をあなたのブースから外してしまう。変に注目してもらわない方がまだ良い結果に繋がった、なんてことになったら目も当てられない。
そこで重要になってくるのがキャッチコピーだ。
キャッチコピーとは来場者の欲求を最短経路で増大させる最も効率的なアイテムと断言できる。展示会の成否はキャッチコピーの出来が左右していると言っても過言ではない。キャッチコピーの作り方については別の記事で触れているので、参考にしていただきたい。
■キャッチコピーの作り方
せっかく高めた欲求にバリアーを張る困ったちゃんの名は「警戒心」
あなたの会社や所属する担当者とまったく関係性を築いていない場合、来場者はあなたの会社に対してまったく情報を持っていない状態と言える。名前や評判程度は知っているかもしれないだ、その程度だ。
言い換えると、「信用がない状態」とも言えるだろう。あなたの会社が(あるいはあなたという担当者)が信頼のおける人物なのか来場者は判断がつかない。だから、来場者は警戒心を持っている。
もしかしたら、商材を強引に売りつけられるんじゃないだろうか、あるいは下手に名刺交換をして鬱陶しい営業攻撃に逢いたくない。言語化できていなくとも潜在的にこんな不安を抱えていることは想像できる。
例えるなら草食動物とハンターの関係性だろうか、来場者が草食動物で出展者がハンターという関係性だ。来場者(草食動物)からは出展者はある種のハンターに見えているといイメージするとよい。
さて、「警戒心を解く」ことは一朝一夕にできない。人と人の関係性に依存している要素もあるため、時間をかけて警戒心を解きほぐすしかない。では、警戒心が解けないなら展示会ブースではどうすればよいのだろうか。
警戒心が解けないなら、せめてブースでは警戒心を高めないように気を遣う。つまり警戒心を高める要素を排除する、というアプローチが中心になる。
警戒心に大きな影響を及ぼす要素は主に以下の2つ。
- 空間の作り方
- スタッフの行動
特にスタッフの行動については見過ごされているケースが多いので、注意を払う必要がある。
【警戒心を高める空間の要素】
例えばブースの入口が狭い、全体的に圧迫感がある、といった空間では警戒心が高まってしまう。その空間はまるで罠のように、来場者を捉えて逃がさない場のようなイメージを持たれてしまうからだ。
また、キャッチコピーが多過ぎるブースも警戒心を高めてしまう。家電量販店の特売チラシかのようにキャッチコピーをブースに配し、来場者の欲求を高めることを狙っているブースも見受けられる。多過ぎるキャッチコピーは、確かに欲求は高めるかもしれない、しかし同時に来場者の警戒心も高めてしまう。
この状態は「売りつけモード」と感じられてしまうことが問題なのだ。極端に表現すると「買ってくれ!、買え!、今すぐ買え!」というメッセージに見える。そんな来場者がそんなメッセージを向けられてしまったら、当然ながら警戒心は高まってしまうだろう。
家電量販店やスーパーの特売チラシがあのデザインで効果があがるのは基本的に訪問者は「買う」ことをある程度前提にしているからで、展示会来場者とはそもそも状態が異なる。警戒心が既に下がっている、あるいは欲求をふまえて次の行動が具体化に言語化できている(〇〇を買う)状態だから効果があがる。
売りつけモードにある状態のブースで活動しているスタッフは、来場者からはこのように見えていると考えよう。
極端に表現すると、爽やかな笑顔の裏には恐るべき恫喝、キレイな表現で相手を騙す詐欺師の言葉、そうなると配られるチラシは督促状だろうか・・・
と・・・かなり誇張ししたが、コレぐらいに思われているという前提に立った方が、良いアプローチ方法が見えてくるだろう。自分たちの行動を振り返るにもよいはずだ。
警戒心を高めてしまうスタッフの行動
スタッフの声がけ方法ひとつで警戒心はカンタンに高まってしまう。そして、展示会ブースでは最も見過ごされてしまっている要素とも言えるだろう。スタッフの行動を最適化することは集客において重要なファクターになる。
アプローチの方法一つで警戒心は高まってしまう。どのようなスタッフ行動が警戒心を高めないことに役立つのか、今回の記事と幾つか重複する部分はあるが、以下の記事に取りまとめているのでご一読いただきたい。
■アプローチ時の来場者がもつ警戒心について
警戒心が高まっている来場者は、話しかけられることを「売りつけられる」と感じてしまう。適切な接客を開始する前段階として、警戒心を高めないアプローチを心掛けよう。
どんな来場者でもウェルカムなのか
とかく来場者を増やしたい増やしたいと思いすぎると、意味のない集客が増えてしまうことがある。展示会来場者はあなたの顧客候補だけではなく、同業他社・リサーチ目的・冷やかしなど、収集しても仕方のないリードも多く存在する。
それでも、集客がたくさんできているのであれば、その先のマーケティング活動で有望な顧客にアプローチしていけば良いだけだから、顧客になり得ない来場者も含めて集客をたくさん増やすのは別に悪いことじゃないんじゃないの?、と思う方もいるだろうが、それは誤りであるケースが多い。
展示会の集客と来場者のスクリーニングは、どちらも切って切り離せない。顧客になり得ない来場者をたくさん集客してしまったブースではどんなことが起こるだろうか。
いかがだろうか。来場者は基本的に「多くの資料」を持ち帰る。そして、接客を受けた優先度の高いものから捌いていき、そのほかの資料はゴミ箱行きになる。
展示会場においては、集客した顧客候補の情報を収集すること、つまり「名刺をもらう」ことが必須なのだ。そして、名刺をもらうのは、顧客になり得る来場者が極力多い状況を作らなければ、集客そのものができても展示会の成果としては思ったほど伸びないという状況も起こり得る。
おわりに
いくらよいキャッチコピーを作ってもスタッフの行動が来場者の警戒心を高めている場合は集客に結び付かない。しかし、よいキャッチコピーが無ければそもそも集客できる可能性は圧倒的に低下する。
いま取り組んでいるブースづくりの要素は「欲求」に働きかける要素なのか、「警戒心」に働きかける要素なのかを整理して、双方を最適化することがブース集客のキモなのだ。
さらに一歩踏み込んで、「集客を増やすにはどうしたらいいんだろう?」と考えるのではなく「質の高い集客を増やすにはどうしたらいいんだろう?」と考える視点が重要だ。
この視点が無ければ、集客が増えたように見えてもマイナス方向に機能してしまうことすらある。しかし、「質の高い集客」という視点を持った時点で、既に集客の改善に向けて、あなたは第一歩を踏み出している。