ここでは2回にわけて、展示会ブースのキャッチコピーづくりについて触れてみたい。
似たような製品・サービスをPRする出展者が数多くひしめく展示会場、通路の状況も会場内のどこも似たような状況。このような条件下ではキャッチコピーの選定を誤ったがために、あなたの製品やサービスを求めていたはずの来場者と出逢えなかった・・・!、そんな失敗はよく聞く話題だ。
この記事では展示会ブースにおいて、なぜキャッチコピーが重要なのかということについて考えてみよう。
展示会ブースにおけるキャッチコピーの重要性はどの程度だと捉えているだろう?、大多数の出展者の皆さん、あなたが捉えているよりも10倍は重要だと考えていただきたい。キャッチコピー付けで失敗すると、まず展示会ブースは失敗する。
仮に、現状キャッチコピーは重要視していないが効果はそれなりにあがっているという状況なら、キャッチコピーを適切に選定することで効果はさらに向上することは間違いない。
展示会ブースでキャチコピーが重要な2つの理由
キャッチコピーが重要な理由は主に2点ある。
理由①:求めてやまない来場者を見出す
展示会場は広く、数多くの出展者がひしめいているうえに、来場者も数万人という規模になる。そんななかで、あなたのブース・商材を求めてやまない来場者とどのように出会えばよいのか。後述する展示会の特性を踏まえると、キャッチコピー次第であなたのブース・商材を求めてやまない来場者と出会えるかどうかが決まってしまうのだ。
キャッチコピーはブース誘因の最初の一歩だ。キャッチコピーは成功の第一歩であり入口でもある。来場者に入口を通ってきてもらえるから、はじめてブースでのコミュニケーションが発生する。
理由②:関係ない来場者を接客するロスを減らす
この重要さには意外と目が向いていない場合が多い。
展示会は基本的に3日間、1日7時間程度ということが多い。そして、ブースで接客できるスタッフは何名いるだろう。そんな限られたリソースのなかで、自社の商材と関係ない、つまり決して顧客にはなり得ない来場者を接客してしまうというリスクを、もっと大きく考える必要がある。
仮に15分、顧客になり得ない来場者に接客の時間を使ったとしよう。それは無駄な時間なわけだ。キャッチコピーのチョイスを間違ってしまったがために、ブースに入ってきた来場者が実は展示製品とはまったく関係のない人だった・・・接客に使った15分は出展者にとっても来場者にとっても無駄で不幸な時間でしかない。お互いにこの展示会では短時間の間で成果を出さないといけないというのに・・・!
展示会のキャッチコピーには、このような無駄・不幸を排除するスクリーニングという効果がある。特に、来場者でひしめく会期最終日の午後の時間帯に無駄な接客をしている余裕はない。スクリーニングが機能していない場合どんな事態が起こるか、わかりやすくイメージで見ていただこう。
このように、スタッフが接客で埋まっていると来場者は早々にブースから立ち去ってしまう。そして、持ち帰った資料は他のブースの資料と混ざり・埋もれ、忘れ去られてしまう。
「とりあえず資料だけでも持ち帰ってもらった」としても、そのあと実際の問合せに繋がる可能性は如何ほどだろうか。おそらく、多くの出展者にとってその可能性は低いのではなかろうか。であれば、展示会においては「リードとして獲得する」、つまり来場者の名刺を獲得することは必須条件なのだ。
スクリーニングが機能していないと、顧客になり得ない来場者の接客にスタッフのリソースを割いてしまい、取引までが近いはずの来場者を接客できず逃してしまうという不合理が起こってしまう。だから、キャッチコピーは重要となる。
展示会という環境を理解する
展示会という場は、人の行動やコミュニケーションが独特だ。テレビCMや、ホームページ、カタログ、交通広告、メールマガジンなどといった一般的な広告コピーに対するアプローチとは異なった考え方をする必要がある。しかし、展示会という場の特性を理解すれば展示会のキャッチコピーづくりはそこまで難しいことではない。
展示会ブースのキャッチコピーに影響を及ぼす3つの来場者特性
展示会場にやってくる来場者の思考や行動のうち、キャッチコピーに反映される要素として意識するポイントは3点。
①来場者の制限時間
来場者の滞在時間はほぼ半日程度、加えて自分が見るブースもある程度は決めて来場している。また、滞在時間のうちすべてがブース訪問に使われるわけではなくセミナー等に参加する場合も多い。つまり、フラっとブースに立ち寄ってもらうことは、それなりにハードルが高いのだ。
時間がないということは、来場者の課題解決に深く刺さる言葉をチョイスする必要があるということでもある。
②来場者自身でも課題が言語化されていない
そもそも人の意識のなかで明確に意志が言語化されている部分はごく僅か。ほかの要素は意識の深い領域に沈み込んでいる。
課題を解決することが来場者を誘因するフックになることは間違いではないことではあるが、課題が言語化されていない状態では、来場者が自分の課題解決策を探すことも難しく、意識にあがっている課題や思いのみを中心にブースを巡ることになる。
ここで、来場者の課題に対する「気付き」を与えることができるのがキャッチコピーの強みだ。課題として「認識」し、そしてその解決手段に対して「興味」を持つ。このようなあり方も展示会のキャッチコピーづくりにおいては重要だろう。
③ブースに入るかどうかは2つの心理が影響
来場者がブースに足を踏み入れるかどうかは欲求と警戒心という2つの心理の綱引きによってきまる。この心理に適切にアプローチすることがブースの集客に影響を及ぼす。
来場者の「欲求」に最も強く働きかけるのがキャッチコピーだと断言できる。欲求を高めるという視点で考えると「課題解決に即したキャッチコピー」ほど効果を簡単に発揮するコンテンツはそう見つからない。
スクリーニングも兼ねながら集客を増やす際に何をすればよいだろう?、キャッチコピーをしっかり考え抜くことが最もシンプルな近道であり、費用対効果の高い方法と言える。
展示会ブースのキャッチコピーに影響を及ぼす2つの展示会場特性
来場者の性質と合わせて、展示会場という場そのものが持つ特異性についても考える必要がある。
①多数の出展者がひしめく
一つの展示会で数百のブースが存在するうえに、各出展者とも自社のPRをしようとキャッチコピーを打ち出す、右を見ても左を見ても、前を見ても後ろを見てもキャッチコピーだらけなのだ。
しかし、諦めないでいただきたい。
多くの出展者がキャッチコピーを打ち出してはいるが、効果的なキャッチコピーを掲出できている出展者は僅かだ。関西機械要素技術展を訪問したときの記事を参考にご一読いただきたい。
各出展者とも、キャッチコピーでの差別化は思った以上にできていません。そもそもキャッチコピーという状態にすらなっておらず、商材名や商材カテゴリ名を掲出しているだけという場合も多い。
このような状況ではキャッチコピーは集客の役に立っていない。つまり、効果的なキャッチコピーを打ち出すことができればライバルから抜きんでることができるということだ。キャッチコピーを制すものは展示会を制すと言ってしまってもよいだろう。
②同じ通路は何度も通らない(通らない通路もある)
展示会場は多くの出展者がひしめいている。当然ながら全ての出展者ブースを訪れることなど不可能だ。しかし、「なるべくたくさんのブースを周って何か参考になりそうな情報を持って帰りたい」と来場者が考えることは自然だろう。
よって、会場の多くを見てまわるために、非効率な会場の回り方をする来場者は少ないということだ。同じ通路を何度も通るような行動はせず、場合によっては「この通路は見なくてもよい」という発想になる。
展示会ブースのキャッチコピーは居合切り
だいたい、お分かりいただけたかだろうか。
展示会ブースにおけるキャッチコピーとは、
- 一度しかブース前を通らない来場者を
- 一撃で仕留める
そんなものでないと効果が薄い、まるで居合切りの世界のようではないか。
参考:良いキャッチコピーづくりのフレームワーク
展示会キャッチコピーの制作は大きく分けて2つの段階で進める。
①何を伝えるか
②どう伝えるか
キャッチコピーという一言をいきなり考えようとしても上手くは進まない。自社の提供するサービスの特徴、顧客の特徴や課題、顧客が真に価値を感じる自社サービスのなかの要素、これらを整理することからスタートし、それらが最も効果的に伝わる表現を考える。ここで言う表現とはキャッチコピーの言葉そのものの他に、キャッチコピーをどのようにブース内でレイアウトするかという見せ方も含まれている。
自社の価値を言語化して、その価値を一言にまとめる作業になる。しかし、何も手掛かりの無いところからスタートすることは難しいので、その助けになるフレームワークをnoteで販売している。ここではキャッチコピーを作り上げるためのフレームと、考えるにあたっての注意点やポイントがまとまっているので、今すぐキャッチコピーを作りたいという方は、このフレームに沿って検討するとよいだろう。
絶対に展示会で成果を挙げたい人のための「刺さるキャッチコピー」を作る方法(フレームワーク付き)|たけうちのぶお|note