展示会ブースのコンセプトをつくる・・・コンセプトとは何のことなのだろう。
コンセプトとは展示会ブースにとって設計図であり、羅針盤と言えるものだ。
もし羅針盤や設計図に必要な要素が漏れていたら、どんなものが出来上がって、どんな場所に辿り着いてしまうのか。イスを作るための設計図が間違っていてテーブルを作ってしまった、南に向かうはずが北に向かっていた、そんな失敗をしたんだろうなぁ・・・というブースも展示会場のなかには存在する。
あなたのブースを作るための設計図・羅針盤は間違っていないだろうか?
コンセプト(羅針盤・設計図)が必要な理由
設計図・羅針盤に必要な要素とは何なのだろうか。
装飾会社にブースのデザインを依頼する、映像制作会社に製品PR映像の制作を依頼する、広告代理店やコンサル会社にマルっと戦略策定を依頼する。だいたいこのような場合には制作前に「オリエンテーション」を実施したうえで作業にかかることになる。このオリエンテーション時に正しく情報が伝わっているか伝わっていないかで、その後の仕上がりへの影響が非常に大きくなるのだ。
展示会ブースという場を作り込んでいくプロセスには、初期の段階で認識を固めておかないといけない取り返しがつかない要素と、後からでも修正できる要素の2つがある。なぜか往々にして後から修正できる要素が重要視され、取り返しのつかない要素が後回しになっているケースが多いのでは、と感じる。
このような事態が起こる要因として装飾会社側に問題がある場合もある。
装飾会社にとってはブースを作ること、空間として成立させることが最重要ミッションになっている。一方出展者にとってはブースを活用して成果を出すことが目的であり、展示会ブースを作ることは手段の一つでしかない。
そもそもの目的がズレている両者が制作を推進するわけだが、このような状況にあると目的の実行に必要な情報がデザイン側で重要視されず、空間として成立させるために必要な情報(手段)が重要視されてしまうケースが多くなる。
このようなズレは根本的に避けなければならない、ズレを避けるためには何が目的なのか双方に共通認識をもたせるため必要がある。共通認識のもととなるものはコンセプトである、つまり設計図や羅針盤となる情報はオリエンテーション前に固めておく必要があるのです。
さて、設計図に必要な要素、コンセプトとして押さえておかないといけない要素とは何だろう。これは、超がつくほどビジネスで一般的な5W2Hの要素のことだ。そのなかでもさらにWho、Why、Howの3要素が展示会の制作プロセスにおいて重要な項目でだす。
Who・・・誰が必要としている?
Why・・・なぜ必要とする?
How・・・どのように解決する
誰に向けたサービスなのか明快に分からなければ来場者は足を止めてくれない。なぜそのサービスが自分にとって必要なのか理由が分からなければ来場者はブースに足を踏み入れてくれない。どのようにそのサービスが自分の課題や悩みを解決できるのか納得できなければ商談はそこから先に進まない。この3要素を明快に固めることが、展示会で成果を出す必須要件だ。
設計図・羅針盤となるコンセプトシート
このまとめ方として展示会の教科書では展示会ブースの成果を最大化する13のワークシートを制作・販売している。以下のページを参考にしながらシート制作に取り組んでいただければ、コンセプトは適切にまとなるだろう。
出展予定の展示会
目標数値
ターゲット(ペルソナ・組織ペルソナ・関与者)・それぞれの困りごと
出展製品・サービスの概要
出展製品・サービスがターゲットの困りごとを解決できる理由
キャッチコピー
感情の誘導
納得してもらうためのプロセス
コンセプトをつくる際の心構え
さて、コンセプトをまとめる際に留意しておいていただきたいことがある。自分たちが思う認識が案外ユーザーの認識とはズレていることが多いという事実だ・・・
本当にそのターゲットでよいの?
本当にそのメッセージでよいの?
本当にそのコミュニケーションでよいの?
ということを、
しつこく、ねちこく、執拗に、執念深く、しぶとく、くどいぐらいに探るべきであろう。
展示会の企画シートは、徹底的に顧客目線で検討するために、何度も同じようなことを、ちょっとずつ違う角度から検証するようなプロセスを経ている。
少しテーマがズレるが、展示会という場は新たな顧客を開拓するというだけではなく、自分たちのビジネスの方向性を正しく整理して世に問う場所が展示会であるとも言える。自社のもつ価値を徹底的に磨き上げるためには、優秀なパートナーがついているだけでは不足していて、事前に自分たちのなかでどこまで自社の価値を整理して磨き上げることが出来るかどうかにかかっている。
パートナーも価値を磨き上げるための手伝いは出来るがが、BtoBのビジネスは往々にしてその価値の発見が難しく、クリエイターの能力を発揮させるための前提条件として自社内で情報の整理ができていることが前提となる。
アドバイスはもらえたとしても、正解は誰かが提示してくれるわけでなく、結局決めるのは自分たち。自分たちが自分たちの顧客のことを一番よく知っている。そのことを意識しながら徹底的な顧客目線でシートを作り上げてみていただきたい。
おわりに
展示会の企画づくり【コンセプト・企画立案編】はここまで。次は【実施設計編】に入る。コンセプトとしてまとめた要素をいかに現実の空間に落とし込んでいくか、その手法について紹介していこう。