展示会の強化書

展示会ブース出展の成果を劇的に向上させるための方法論をギュっと濃縮した強化書です。あなたのビジネスは展示会で大きく伸ばせる!

展示会ブース装飾・デザインの常識を疑え①【目立てば集客に繋がるのか】

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一般的に展示会ブースづくりの「常識」や「暗黙の了解」となっているような考え方は様々なものがある。しかし、中には本当に正しいのか?と疑ってしまうような暗黙の了解も多数ある。今回のテーマは「目立つ」ことと実際の「集客」との関係性。

 

出展者が展示会ブース装飾のデザインを装飾会社に依頼する際に、「目立つ」ブースにしてほしいという依頼をするケースは多いように見受けられるが、「目立つ」ことを目指した結果、「意味のない目立ち方」、あるいは酷い場合には「悪目立ち」とも言えるような状況を目にすることも多々ある。

 

これは、引っ掛かりやすい展示会ブース装飾の落とし穴だ。ハマらないように注意を払う必要がある。

 

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展示会ブースの理想的な行動プロセス

 

前提として、理想的な来場者とのコミュニケーションの流れを整理しておきたい。

 

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【動機付け】

ブースに足を踏み入れる「理由」となるものを提示し、来場者の心を動かす。

【後押し】

ブースに足を踏み入れようか入れまいか迷う来場者の背中を押す。

【説得・納得】

ブース内で来場者の課題解決に向けた道筋を提示する

【行動のお膳立て】

展示会後、来場者の組織内で来場者が具体的な行動に至ることができるようサポートする。

 

このプロセスをふまえると、来場者は「動機付け」が無ければブースに足を踏み入れることがない。そして展示会ブースを「目立たせる」という方策は「動機付け」に影響する要素だ。

 

目立たせたい!がために実行してしまうブース装飾

 

「展示会ブースを目立たせたい!」と思ったときに実行しがちな方策には以下のようなものがある。

 

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確かに目立ってはいる。しかしその「目立つ」は集客の役に立つ「目立ち方」なのだろうか・・・目立ってはいるものの「集客の役には立っていない」という状態になっていないだろうか?

 

社名を目立たせることに意味は無い

 

上記の方策は、「明るくする」「大きくする」「印象的に」するといった【手段】と言える要素だ。しかし、ここでは「何を」明るくするのか、「何を」大きくするのか、「何を」印象的にするのか、といった【目的】の要素が深く検討されておらず、結局光らせるのは社名だったりするのだが、それでは集客に繋がらない。

 

先ほどの「動機付け」という視点で考えてみよう。あなたの会社は「社名」を掲示するだけで来場者がホイホイやってくるようなブースだろうか?、もしそうであるならば何も迷うことはなく社名を掲示しておけばよい。しかし、多くの場合そうではないはずだ。あなたの会社を知らない人が多い、知っていても取引したことがない人が多い、だから展示会に出展するのではないだろうか。

 

不快感を感じる言い草になるかもしれないが、来場者にとっては、あなたの社名は最初の段階では興味がないのだ、あなたの社名はどうでもいい。来場者の興味は「あなたの社名」にあるのではなく「あなたが解決してくれる自分の課題」にある。課題を解決してくれる相手だと認識するから、はじめてあなたの社名に興味を持ってくれるのだ。

 

つまり、社名が煌々と光っていたからといって来場者にとってはどうでもよい情報でしかない。ただ目立っているだけで何の動機付けも成されていないので、来場者の視線は別のブースに移ってしまう。これでは何の意味もない。

 

使い古された消費行動モデルにAIDMAというものがある。そんなモノは十分に承知という方も多いだろう。どちらかというと展示会はAIDAモデルの方が説明しやすいのだが、AIDMAもAIDAも、どちらもアタマにはAttention(認知)がきている。

 

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社名を目立たせる!という行為は基本的に最初のAttention(認知)で終わっているものがほとんどであり、しかもそのあとのInterestやDesireとの関連性が何ら無いものが多いように見受けられる。

 

来場者の行動で考えよう。展示会場を歩いている来場者にAttention(認知)を目的としてアンドンの看板を掲示した、社名を見てもらえた、やった!、次はInterest・desireだ・・・と思っているうちに、来場者は一瞬でブース前を通過してしまう。

 

そう、来場者は一瞬のうちにブース前を通過してしまうので悠長に次はInterest、その次はdesireなどと段階を踏んでもらう時間など無いのだ。出来る限り一気にAIDAであれば「AID」あたりまで一目で理解できる表現になっている必要がある。だから、展示会行動プロセスにおいては【動機付け】という表現にしているのだ。【動機付け】とはAIDあたりが一緒くたになった瞬間湯沸かし器的表現と言えるだろう。

 

余談だが、このような消費行動モデルには最後のActionとその前段階(MemoryやDesire)との間に断絶があることも指摘されている。消費者アンケートなどで「行動する意向がある」という数値が高くとも「実際の行動」に至る数値との間には大きな隔たりがあるというケースも多いようだ。だから、展示会ブースにおいても「動機付け」のあとに「後押し」があることが来場者の「行動」を誘発するにあたっては効果的に働く。

 

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ブース内の明るさに差がある状態の弊害

 

とかく「光らせる」ブースが好きな出展者や装飾会社もよく展示会場では見受けられる。パっと見の印象は「目立っていて良いね!」と感じるから。しかし、この目立ち方と集客には大して関連性がない。集客の役に立たないどころか逆効果になることさえある

 

虹彩を絞ったり開けたり選手権

人間は眼に入る光量を「虹彩」と呼ばれる部位で調節している。カメラのレンズで言うところの「絞り」に該当する部分だ。明るい場所では虹彩を絞って眼に取り込む光量を少なくし、暗い場所では虹彩を開けて眼に取り込む光量を増やしバランスを取っている。専門家ではないので詳しいことを述べることは避けるが、「虹彩 仕組み」といったワードで検索すると色んなサイトが出てくるので興味があれば調べていただきたい。

 

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例えばブース上部の看板がアンドン構造になっていて目を引いたとして、目を引いたときには「アンドンの明るさ来場者の眼の光量調節における基準になっている」ということだ。特にブースの他の装飾要素とアンドンとの間に明るさの差ができている場合、アンドン以外の要素は余計に見えにくくなってしまう。

 

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当然、まったく見えないわけではないが、「見えにくい」という状態が来場者の意識を別の方向に逸らしてしまう危険があることが問題なのだ。展示会場は暗い場所は少ないが「明るすぎる」場所は余りにも多い。目に対する負担の大きなブースも数多く存在する。

 

明るすぎるLEDパネルはずっと見ていられない

展示会場ではLEDパネルを使っているブースもよく見られる。目立つので集客の役には立つと思われがちですが、光っているだけでは「動機付け」とならないのはご理解いただけているだろう。LEDパネルだからといって集客にそのまま役立つわけではなく、そのデザインや文言が重要となる。

 

極端な表現だが、LEDパネルとは根本的に集客用ツールであって説明用ツールではないとも感じています。例えば飲食店で歩行者に向けて店舗をPRするツールとして活用するには有効かもしれないが、展示会の接客において有効とは言い難い。

 

なぜなら、最近のLEDパネルには「明るすぎる」ものが多いから。正直ずっと見てられないような明るさのLEDパネルを接客に使っているようなケースも見受けられる。

 

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そのパネルだけ見ていれば接客が完結するようなケースなら、パネルの明るさのみが眼の光量調節基準となるので影響は少ないかもしれない。しかし、実際はパネル以外の資料や展示物を見てもらったり、スタッフとのコミュニケーションが発生するものだ。展示会コミュニケーションのプロセス途中に明るすぎるLEDパネルが挟まると、来場者の虹彩を開けたり絞ったりの虹彩開け閉め選手権が開催されるブースになる。おそらく、接客には集中してもらえない。

 

また、LEDパネルを多く使ったブースは展示会後に社内で振り返りをしたときにも「明るくて目立ったから良かったんじゃないか」という評価になりやすい仮に不快感を感じていたとしても、社内の評価が「よかったね」という状態では感じた不快感も心の奥にしまいこんでしまうだろう。もしかすると不快感の正体はブースが明るすぎたことにあったことすら気付いていないかもしれない。

 

「明るさが集客に繋がる」という常識を持ってしまっていると、このような負の影響に目が向かなかったり、気付いていても見過ごしてしまうのだ。

 

運営スタッフに対する悪影響

これらの影響は来場者に対するものよりも、出展者スタッフに対するマイナスの影響がより大きなものとなる。ブース内で明るさに大きな差があるような目に負担のかかる環境で3日間接客を続けていたらどうなるか・・・きっと最終日には疲労も大きいモノになっているだろう。

 

集客が最も増えるのは最終日の午後が一般的だが、その時間に向けてわざわざスタッフの疲労を増やすような方策を採ってしまうのは不合理極まりない。日程でのローテーションがあるわけでなく、会期中は同じスタッフでずっと運営するのであれば、余計にスタッフの疲労に目を向けた方がよいだろう。展示会最終日のスタッフのパフォーマンスはかなり重要だ。

 

しかし、装飾会社はそんなことを考えない。考えないというより考えられないと表現した方がよいだろうか。「3日間ブースで接客する」という時間の経過が運営スタッフにどんな影響をもたらすのか想像できる人材が圧倒的に少ないからだ。コレばっかりは体験しないと分からないことだから。

 

よって、明るいブースを作って目立たせたいと思うならば、その明るいブースが何を伝えるのか、来場者に対する動機付けも含めて表現することはもちろん、ブース内での明るさの差を極力少なくするという方策が必要だろう。

 

明るいブースがよい、暗いブースが悪い、というよりも「明るさに差があるブース」が負担となる・・・ということだ。ちなみにLEDパネルのなかには比較的目に優しい明るさのモノもあるので、接客に活用するのであれば明るすぎないものを選ぶとよい。

 

キャッチコピーやキーワードを山ほど掲示する

 

キャッチコピーが大切であるという事実を展示会の強化書では再三取り上げている。しかし、やたらめったらキャッチコピーやキーワードを配すればよいというものではない。幾つも来場者に関連しそうなキーワードを並べて、どれかが来場者に刺されば!というグラフィカルな表現をしているブースも多いが展示会においては悪手と言わざるを得ない。

 

まず、絞り込めていないメッセージというものは来場者に刺さらないものだ。ぱっと見の情報量が増えれば増えるほど、来場者はその情報を文字として受け取らず、画像や柄として受け取ってしまう。その中からわざわざ自分に該当する情報を探す前にブース前を通り過ぎてしまうか、ブースから目線を外してしまう可能性の方が高くなってしまう。

 

そもそも、たくさん情報を広げるだけ広げて、来場者側に探させるというスタンス自体が「不親切」だろう。これは顧客志向とは真逆の方向性とも言える。顧客志向を実践するのであれば、課題を深く掘り下げメッセージを絞り込み、わかりやすく表現するということは必須である。

 

目立たせようとして文字サイズをとにかく大きくしているようなケースもあるが、大きさ=視認性ではない。ここを誤解しているブースは多い。大きければ目立つだろうという大いなる誤解・・・視認性にとって重要な要素は文字数余白

 

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余白が無くなれば無くなるほど、来場者にとっては文字情報ではなく「絵柄」という認識に近づいていく。柄として認識されてしまうと、来場者の課題解決云々を飛び越えてただの展示会場の景色になってしまう危険がある。目立たせたかったはずが逆に目立たない、本末転倒とはこのことだ。

 

アンドン看板と普通の看板で集客力に違いは出るのか

 

さらに突っ込んで考えてみよう。アンドン構造の看板と普通の看板では集客力に違いが出るのだろうか。特に専門的な研究が成されているわけではないが、理性的に考えると仮に同じ位置・サイズ・内容だった場合、アンドン看板と普通の看板に「大きな違いはない」と言えてしまう。(僅かな違いはあるかもしれない。)

 

なぜなら、大切なのは看板が光っているか目立っているかどうかではなく、その看板が「何を伝えているか」だから。来場者はある程度ブースの上部をキョロキョロ見ながら展示会場を歩いているので、「まったく目に入らない」というケースはあまり考えられない。スルーされているのであれば「目に入らない」のではなく興味を持てるような内容でなかったので、「目に入ったがスルーされた」のだろう。

 

おわりに:目立つことは集客に役立つか

 

結論としては、適切に目立てば集客に役立つと言える。しかし、その適切さに辿り着くのが難しい。「目立たせる」という目的を第一に掲げると間違った目立ち方・悪目立ちになりがちだということだ。アンドン構造やLEDパネルが駄目だと言っているのではない。ただ、その使い方に注意が必要だということを覚えておいていただきたい。

 

このような事態を避けるための考え方のコツは以下の2点。

 

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これらの情報を

  1. 来場者がどの位置から見る
  2. ブースのどの位置に配する

という2つのバランスを取りながら調整するのが実際の計画づくりにおける留意点だ。この方法については次回の記事で触れてみよう。実は小間位置の見方や会場動線の捉え方も「展示会の常識」に捉われるとマイナスに働くことがあるので、ある意味で非常識な会場動線の読み方について紹介したい。

 

ちなみに、来場者の課題の正体について考えるのであれば【ペルソナ】を考えること。来場者に適切に課題解決への道筋を示したいなら【キャッチコピー】に力を入れることが方法として考えられるので、参考にしていただくとよいだろう。

 

■参考記事:ペルソナについて

www.tenjikaibooth.net

 

■参考記事:キャッチコピーについて

www.tenjikaibooth.net

 

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