展示会の強化書

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来場者の感情を誘導し、展示会ブースのメッセージを最大化して伝える

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来場者(ペルソナ)は、展示会ブースでのコミュニケーションを通してどんな感情を抱くのだろうか。いや、どんな感情になるとコミュニケーションが最も効果的に行われるのだろうか。

 

一般的なBtoBマーケティング施策であればBtoCの施策と比較したときに顧客が直感や感情で動くケースは少なく、取引に至るには理性的な判断が下されると認識されていることだろう。

 

しかし、展示会においては「来場者の感情」の重要度が他のBtoBマーケティング施策と比較しても高いと感じる。ブースの前を通過する来場者をつかまること、接客後に来場者が自社での行動を起こすこと、その双方に対して「感情」に対するアプローチが有効に働くからだ。

 

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今回はその「感情」について、展示会ブースにおける取り扱い方法を考えてみよう。

 

 

前回の作業で自社の強みをメッセージ化・コミュニケーション化した。まだ作業していない方はこちらの記事をご一読いただきたい。

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自分たちの行動だけ想定してもゴールには近づかない

 

ここで考えることは主に2つ。

 

  • 来場者(ペルソナ)に展示会後どんな行動を取ってほしいか
  • 展示会ブースでの体験から、感情をどのように変化させてほしいか

 

なぜ来場者(ペルソナ)の行動や感情などを考えるのか。それは、相手に取ってほしい行動がイメージできていないと、どんな方策を展示会ブースで実施すればよいか分からないから。また、相手に取ってほしい行動がイメージできている場合はその行動を後押しする際に感情が重要になるからだ。

 

しかし、実際には来場者(ペルソナ)の行動や感情が想定できているケースは少ない

 

例えば「今回の展示会では緊急性の高い顧客候補の名刺を100枚獲得する!」といった目標を立てることはあるだろう。しかし、この目標は「自社側」の行動だ。取引が始まるまでには「自社側の行動」と「顧客側の行動」双方が近づいていく必要がある。

 

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恋愛などの人間関係においても一方通行はあり得ないのに、BtoBの場において相手に取ってほしい行動や相手の状態は想定せずに進めているケースが多いということはヘンだろう。

 

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そこで、考えてほしいのが以下の3つ。

  1. ペルソナに、ブース接触時から接客クローズ・さらに展示会終了後にどんな行動を取ってほしいのか。
  2. そのためには展示ブースでのコミュニケーションをとおしてどんな感情を抱いてもらうことが近道なのか。
  3. 前回想定したペルソナとのコミュニケーションを円滑に進めながら誘導したい感情に近づけるためのキャラクター(アプローチ方法)は何なのか

 

この3つを押さえておくことで、どんな感情を想起するキャッチコピーにすればよいのか、パネルのストーリーはどんな構成にすればよいのか、空間のイメージはどのように作り込むのか、接客の方向性はどのようなアプローチなのか、という具体的な指針を立てることができる。

 

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展示会後に誘導したい来場者(ペルソナ)の行動を先に想定する

 

組織ペルソナと関与者ペルソナを定めていると展示会後に誘導したいペルソナの行動が具体的に想定できるようになる。

 

■ペルソナの設定について

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例えば、組織ペルソナと関与者ペルソナを定めていない状態では展示会後に誘導したいペルソナ行動は「社内で検討の土俵にあげるための資料回覧」程度のイメージにしかならない。

 

しかし、具板的に組織ペルソナと関与者ペルソナを定めている状態なら「開発部門担当者と導入に際したテストの実施」になるのかもしれない、そうなると次にペルソナが自社に取ってもらいたい行動は「開発部門が要求する仕様でのサンプル送付」かもしれないし「製造部門担当者が同席してのミーティング」になるのかもしれない。

 

このように、来場者像を具体的に定義すると、その後に取ってもらいたい行動も具体的になる。

 

■ペルソナ行動について考える際のポイント

  • ペルソナにどんな行動を取ってほしいのか。
  • ペルソナは組織や関与者に対してどのような行動を取るのか。
  • ペルソナが自社に期待する行動は何か。(関与者の説得や、関与者からの問いかけに対応するかたちで。)

 

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どんな感情に誘導すれば、ブース効果が最大化するのか

 

ここでは展示会ブースでの接触からクローズ時点で、ペルソナにどのような感情を持ってほしいのかイメージする作業だ。展示会ブースの体験で、どのようにペルソナの感情が変化すれば、その後のペルソナの行動を最大限後押しするのか、ここが知りたい。

 

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例えば、感情にはネガティブな感情とポジティブな感情がある。課題解決型であれば「問題」→「解決」が一般的な流れになるので、ブース体験をとおしてネガティブ感情→ポジティブ感情へと変化させるよう誘導できれば効果的だろう。

 

しかし、ネガティブ・ポジティブと一口にいっても様々な種類がある。

 

課題を感じている・困っているとはどんな感情なのだろう?「うまく進まないことに怒りを覚えている」あるいは「現状を悲観してあきらめている」、それとも「将来起こるリスクに対して不安を抱えている」?

 

また、課題が解決されたときにはどんな感情になるのだろう?「業務が問題なく進むようになる安心感?」「新しい製法が確立することに対する興奮?」

 

ネガティブな感情のなかでも、ポジティブな感情のなかでも、具体的に掘り下げていくと感じ方は状況によって異なり、その感じ方を誘発するキャッチコピーや展示パネルのアプローチは全く異なってくるはずだ。

 

「悲しみを表現するキャッチコピー」と「落胆を表現するキャッチコピー」では、同じネガティブ感情でも表現方法が異なる。どちらの方がペルソナにとって共感しやすいものなのか、それはペルソナの考え方や置かれた環境に合わせて考える他ない。

 

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一口に「課題解決」といっても、そこに付随する感情は様々なバリュエーションが存在する。感情を具体的に想定し誘導する意図をもってブースの構成要素をデザインすることで、より伝わるキャッチコピーやコミュニケーションに辿り着くことができるだろう。

 

具体的な感情の種類(ネガティブ/ポジティブ)

 

感情を体系的に分類したものに「プルチックの感情の輪」というモノがある。興味がある方は調べていただきたい。この、プルチックの感情の輪にある8つの基本感情をベースに、そのほか展示会で活用できそうな感情を幾つかピックアップした。

 

■感情のチョイス:備考

  • 8つの基本感情には「驚き」が含まれている。しかし、展示会ブースで「驚き」はプロセスとなることが多いので除外している。
  • 一部、感情ではなく状態であるものも含む。
  • もちろん、ここに挙げた以外の感情でもOK。

 

【ネガティブ感情】

悲しみ、恐れ、嫌悪、怒り、公開、悲観・諦め、落胆、羞恥、不安、焦り

 

【ポジティブ感情】

喜び、幸福、安心、信頼、期待、興奮、開放感、感動、名誉、優越感

 

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ブース接触時点の感情

展示会ブースと来場者のファーストタッチで想起してほしい感情をイメージしてみよう。多くの場合キャッチコピーがこの役割を担う。

 

■ブース接触時点の感情を考えるポイント

  • ペルソナの現状に近い感情をチョイス
  • ペルソナ自身が気付いていない場合もある(自身の困りごとが言語化できていない。)
  • ペルソナの行動を誘発する感情(ブースに足を踏み入れる)

 

接客クローズ後点の感情

ブース接触時点がペルソナの現状に近い感情をチョイスするのに対し、接客クローズのタイミングでは展示会後の未来をイメージした感情に誘導したいところだ。製品・サービスを導入した結果得られるベネフィットがどんな感情をペルソナにもたらしてくれるのか、という視点で考えてみるとよい。

 

■接客クローズ時点の感情を考えるポイント

・ペルソナに未来を想像させるイメージ

・ペルソナ行動を誘発する感情(展示会後の行動)

 

ブースに「キャラクター」を付与し、感情の誘導を促す

 

ここでの「キャラクター」とはブースの個性あるいは性格と言い換えることもできる。来場者とコミュニケーションを取るブースはどんなキャラクターを持っているのだろうか。

 

キャラクターを考えるとは、自社の製品やサービスを紹介するときの紹介方法に個性・性格をつけるという方法だ。例えば医者のように相手の課題を診断するというスタンスで紹介するのか、伴走するパートナーとして相手の支えになるというスタンスで紹介するのか、ブースにどんなキャラクターを付与するかということで伝わり方が全く変わってくる。

 

キャラクターはブースの体験に一貫性をもたらし、来場者が没入しやすいモノにしてくれる。つまり、ブースにキャラクターを付与することで感情の誘導を的確に進めることができる。

 

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展示会ブースで活用できるキャラクター(個性)

 

ざっと挙げるだけでも10パターン以上はあり、これらすべては性質が異なる。自社の製品・サービスとペルソナの感情を誘導したい方向を合わせて検討し、どのキャラクターであれば伝達効果を最大化できるか考えよう。

 

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①説明者・説得者

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説明者は淡々と説明するタイプ、説得者は「これいいですよ!、ぜひ!」と薦めるタイプ。無味無臭、色がついていない分フラットに受け取られるが感情の誘導は難しい。よって展示会ブースではなるべく使わない。

 

②講師・レクチャー

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知識やノウハウを提供する。相手先の成長を促すといったケースで活用しやすい。ペルソナに知識がない状態だと効果的。例えば、新業態に挑戦するペルソナが専門家である自社に教えを乞う、といった状況などにも活用可能。

より強い性格が付与されると情熱的指導者になる。やや上から目線になるがアツさで相手を巻き込んでいくスタイル。いわゆる修造型である。相手の未来像をイメージさせ期待感を持たせる場合にはこのアプローチもあり得る。

 

③伴走パートナー

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長期間にわたって、相手に寄り添い様々なアドバイスやサービスを提供する「パートナー」である場合はコレ。ただし、単一カテゴリにおける製品・商材の場合にはパートナー感を出してもあまりピンとこない。

複数の領域から相手をサポートする、いわゆる「ソリューション系」のサービスが該当するケースが多いが、「ソリューション」という言葉では結局何をしてくれるのか分からず上滑りするので使わない方がよい。

 

④救世主

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もうどうしようもない場面で、突然救いの手を差し伸べてくれる相手である。

「今すぐ課題が解決する即効性」が製品・サービスにある場合は効果的。ペルソナ側は「今すぐ何とかしなければならないが八方塞がりという状況に近いかもしれない。感情のリストには入れていないが「絶望」という感情が近いかもしれない。

もっとライトに表現するなら「ドラえもん」をイメージしてもらえばよい。ペルソナがのび太で、自社がドラえもんである。「自社えも~ん!、助けて~!!」「ペル太くんどうしたの?」・・・ということからコミュニケーションがはじまるので、あなたの秘密道具でペル太くんを助けてあげればよい。

 

⑤ドクター・カウンセラー

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ドクター・カウンセラーは①相手を診断し、②どこに問題があるかを突き止め、③解決策を提示するという段階を経ると表現できる。

自社のビジネスモデルが相手の課題を言語化することに長けている場合、また解決方法として複数の手段を持っている場合に活用しやすい。このイメージの訴求は安心感や信頼感の醸成に長けている。

 

⑥疑似体験

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製品・サービスを採用したときに、ペルソナや組織ペルソナにどんな変化が起こるのか、具体的にイメージさせながらコミュニケーションを取るタイプだ。映像やマンガを使って表現するケースや、フローチャートなどで「〇〇したら△△になる」という表現するようなケースも疑似体験の一環と言える。来場者を的確にイメージへ没入させる段階が必要になるが、未来像をイメージさせやすい。

 

⑦事例紹介者

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納入事例などを紹介する方式。信頼感の獲得に効果を発揮するケースがある。事例が推薦者としての機能を果たしてくれるケースもあるので、可能なら社名・担当者名とも本名が望ましい。

より性格が付与されると「レポーター」や「新聞記者」になる。伝え方にストーリーが構築され、より来場者にとって受け取りやすいものになるがテキストの構成などは緻密な検討が必要。

 

⑧職人・自信家・権威者

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自社技術の自信をアピールする方式だが、3者は若干性質や効果が異なる。どのケースにおいても「根拠がわかりやすいこと」が必須である。(根拠が示されている、では足りない。)

【職人】

他者に自慢する体ではなく、自分たちが「誇り」を持っている技術を言語化する。

【自信家】

逆に他社に自慢する体で言語化する。相手が不安感を持っている場合に効果的になることもあるが、納得感ある根拠が示せないと「自称」という印象を持たれてしまう。

【権威者】

自社技術が既に一定の知名度を獲得している場合や、自社技術を権威ある個人・企業から評価されている場合、その権威を活用する方式。

 

⑨セバスチャン・御用聞き

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執事・コンシェルジュ的な印象を付与する場合を総称してセバスチャンと名付けた。このケースは基本的に「自社から困りごとがないか聞きに行く」のではなく「ペルソナから問い合わせがあったときに即対応する」という「安心感」と「出しゃばらない感」をPRするものだ。

対して「御用聞き」は自ら困りごとがないかを聞きに行くパターン。このケースは「なんでもできます」「ありとあらゆる」といった表現になりがちだが、個人的にはオススメしない。

 

⑩贈り物

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製品・サービスを相手へのプレゼントに見立て、真心を届けるというスタンスの表現。

「あなたのことを本気で想っています」というメッセージを練り込まないと下心感や上から目線感が強くなるので注意が必要。ペルソナを愛している・・・ぐらいの心情で検討するとよい。

 

⑪リスク周知・恐怖を煽る

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これらの方策は基本的に効果が大きい。人間はリスクやデメリットから誘発される行動の方が推進力が高いのだから。ただし、恐怖を煽るのは基本的にブース接触時点までにしておいた方がよく、ブースに入って以降はメッセージの方向性を変更した方がよい。

 ブースでのコミュニケーションも終始恐怖を煽るようなかたちでは、ポジティブ感情への連動が難しく企業に対して好意的な印象につながらない。そのような場合、「行動しなければ」という認識は与えられたとしても、まず他社の情報をなるべくたくさん集めようという競合を有利にする行動に繋がる危険がある。BtoBのビジネスで競合比較は必ず通る道だが、当然できるだけ主導権を初期の段階で握っておきたい。

 

⑫その他

もちろん、ここに挙がっていないキャラクターでも問題ない。ペルソナの感情を的確に誘導できるか、自社の商材・サービスにマッチしているか、この2点からキャラクターを考えてみるとよいだろう。

 

キャラクター・性格を付与する意味

一般的な展示会ブースは特にアプローチ方法に対して性格を付与したりせず、淡々と自社製品・サービスの説明をするケースが多いだろう(①説明者・説得者に該当するケース)。しかし、この方式は無色透明でありペルソナの感情誘導には余り役割を果たさない。

 

例えば、ペルソナが求めているのが「自社のどこに課題があるか分からない」という状態の解消であり、自社製品・サービスが「独自かつ丁寧な診断手法でどこに課題があるかを的確に見出す」といったものである場合、採用するキャラクターは⑤ドクター・カウンセラー型だとより効果的に伝わる。

 

ブースのキャッチコピーやグラフィックの作り方も、ドクター・カウンセラーをイメージしたような振る舞いで構成すると、ブース全体のストーリーが一貫し、狙いに沿った感情誘導ができるだろう。一貫したメッセージは一貫したイメージを与えるため、ブースでの主張が伝わりやすくなる。

 

また、複数のキャラクターを組み合わせることも可能ではあるが、全体を見たときに違和感のある構成にはしないことが大切だ。リスクや恐怖感を煽ってくるばかりのドクターなんて言っていることが事実だとしても関わりたくはないものだ。「正論」と「受け入れられる言葉」は異なるということは意識に置いてくことをオススメする。

 

おわりに

 

ペルソナの感情に着目し、感情の誘導を促すキャラクターを付与する方法については理解いただけただろうか。これら感情に沿った行動・キャッチコピー・デザインを考えていくことが、一貫したコミュニケーションを実現するためのプロセスだ。

次回は、この感情の誘導とキャラクターに合わせてキャッチコピーをどう構築するかということについて考えてみたい。

 

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