少し前のことだが、関西 総務・人事・経理ワールドを視察してきた。
構成展示会はオフィス防災EXPO、オフィスサービスEXPO、働き方改革EXPO、オフィスセキュリティEXPO、省エネ・節電EXPO、会計・財務EXPO、福利厚生EXPO、HR EXPO(人事労務・教育・採用)からなる総合展示会だ。
前回のものづくりワールドとは違った特徴も垣間見えた。今後、東京・名古屋でもこの展示会は開催される。ブースづくりの参考になりそうな情報を拾い上げてきたので、特に出展予定の方には読んでいただきたいところ。
- 視察したポイントと着眼点
- 来場者が最初に見る上部看板の使い方
- キャッチコピーの作り方と見せ方
- キャッチコピーもデザインも機能しているはずなのに、ブースに足を踏み入れてもらえない問題
- 似たような製品をPRしているブースでも集客に差が出てしまう理由は?
- おわりに
視察したポイントと着眼点
さて、視察のポイントはものづくりワールドのときと同様に課題解決型ブースの数と各ブースのキャッチコピー傾向について、そこからさらに集客に成功・失敗しているブースの特徴についても観察した。オマケに、スタッフユニフォームの導入率なども調べている。
なお、調査は前回同様すべて筆者の視認と印象によるものですので正確性は欠いている可能性がある。視察したブースは外から視認した情報のみで接客は受けていない。また、全体の8割程度のブースを見ての結果になる。しかし、今回は見て回ったブースすべてのキャッチコピーを視認可能な範囲で文字起こしをしたうえで傾向を分析している。そのため、前回よりはキャッチコピーと集客の関係性がより見えやすくなった。
最も興味深かったブースは、HR EXPOにおいてLINEを活用した採用ツールを紹介しているブースの一つ。LINEを使うという商材そのものの特性が面白かったのではなく、複数のブースが似たようなLINEを活用した採用ツールを紹介しているのに、集客に差が出ていた点だ。なぜ各ブースで集客に差が出てしまっていたのか・・・という点は、この記事の最後で掘り下げている。
来場者が最初に見る上部看板の使い方
展示会場を歩いていて最初に接する情報は上部看板だ。来場者の多くは上部を見ながら会場を歩いていることは周知の事実だろう。さて、この展示会で各社は上部看板にどんな情報を掲出していたのか?
上部看板の使い方の傾向
各ブースが掲出している情報の中から最も目立っている情報が何なのかを会場で集計した。結果、以下の4つに分類できた。
①出展者名・ブランド名
そのままの意味。株式会社〇〇という名前や展開しているブランド名、そのロゴイメージなどはこのカテゴリに集計。
②製品名
出展している製品・サービスに固有名詞が付いているうえで、製品名が最も目立つような構成の場合はこのカテゴリに集計。
③キャッチコピー
出展内容に関連した何かしらの「メッセージ」が最も目立つように打ち出されている場合は、このカテゴリに集計。
④製品カテゴリ
製品・サービスのカテゴライズを文言等で表示している場合はこのカテゴリに集計。(例:機械要素技術展なら油圧シリンダ、ハイスピードカメラといった製品のカテゴライズ。ウリを伝える言葉ではない。)
キャッチコピーとは機能や効果が異なるため、明確に分けている。
さて、この結果をどう捉えようか。意外とキャッチコピー派が多いなと思うか、まだまだ他社の傾向と比べて差別化できそうだなと思うか、印象は人それぞれだろう。
ちなみに、キャッチコピーを「課題解決型」のメッセージにしようとしているブースは全体のなかでは15%ほど。ものづくりワールドのときよりは多かった。これは製造業メーカーのように実物の製品として立体的に見えるモノが無く、システムやサービスといった無形に近いモノをマーケティングするにあたっては、普段から課題解決型のアプローチを実践している出展者が多いからかな?と推測する。
オマケ要素的な数値だが、ブルゾン・ポロシャツ・法被など、運営するスタッフがユニフォームを着用していたブースは全体の40%強だった(私個人の予想より高い数値)。オマケ、とは言いましたが実はこのスタッフ用ユニフォームもブースの効果に大きな影響を及ぼす要素であり、詳細は後日の記事で触れる予定。
製品名を印象に残したい!覚えて帰ってもらいたい!
出展する製品名を強く打ち出す企業が多かったのはHR EXPOだ。システムやアプリケーションなど、ネーミングをつけやすい商材が多いからだろう。
さて、製品名を上部看板で大きく打ち出すというこの行為、自社の製品名を覚えて帰ってもらいたいという想いが故の結果だとは思うが、本当にソレでよいのか一度立ち止まって考えてみよう。
以下の画像はちょっとしたクイズだ。このブースで製品名を大きく掲示するならA:上部看板とB:ブース奥のどちらが適切だろうか。
目的を伝えてなかったのは卑怯なクイズの出し方なのだが、「覚えて帰ってもらう」というところがキモなら製品名はB:ブース奥で大きく打ち出すべきだ。
来場者の身になって考えると理由がわかりやすい。展示会場を歩くときはまずブースの上部を見ながら歩くことが多いが、見たことも聞いたこともない製品名・サービス名が掲示されているという状況・・・コレ、覚えて帰るだろうか?
その製品・サービス名に対して認知がまったく無い状態の場合、製品名・サービス名はブースに足を踏み入れる動機としては機能しない。つまり、ただ製品名・サービス名を上部看板に掲示するだけでは覚えてもらえないばかりか、そもそもブースに足を踏み入れるところまでも辿りつかない。
その製品・サービスが自分にとって有益なものであると認識して、はじめて記憶に残そうかということに繋がる。(有益でなく不快でも印象には残るが・・・)
そして、有益なものと認識したときにこそ強い表現で印象付けられるようにした方が、来場者の意識に染み込んでいく。
来場者が上部看板を見るのは、ブースに触れた「最初だけ」が基本で、あとは「目線に近いレベル」から情報を吸い上げていく。せっかくブースでの説明で来場者に「良い製品だな」と思ってもらえたのに、強く製品名を打ち出したのが上部看板だけだとブースから出るときには見てもらえない、勿体ない。
しかし、例外もある。
製品・サービス名や社名が「ブランド」として一定の認知を築いている場合にはこの考え方は該当しない。また、製品名そのものが「ベネフィット」や「課題解決につながる可能性を感じさせる」ようなネーミングになっている場合には、必ずしもブース内でなく上部看板に掲出しても適切に機能する。サービスがイメージしやすい製品名とは、それだけでPR効果があるのだ。
それでは、看板はキャッチコピーが最も大きくないといけないのか!?
だからと言って、上部看板はキャッチコピーを最も大きくしなくては!、製品名や社名は小さめにしなきゃいけない!というわけではない。これも程度の問題、バランスだ。
必ずしもキャッチコピーが最も目立つ情報である必要はないが、最初に目に入る情報であった方がよい。
そのためには、一目で視認できるぐらいのデザインと文字数であることが必須になる。やたらと目立たせなくとも視界には入ってくるものだが、認識できる情報量には限界がある。第一印象として、来場者に何を感じてもらいたいかを整理しておくとよいだろう。
そして、第一印象で刺さる情報を提供できないと、来場者の興味は薄れてしまう。
仮にキャッチコピーをブース内の複数箇所に掲示していて、どれか一つでも目に留まればいい!という意図があったブースづくりをしたとしても、一目で視認できる情報量でなければ、よそのブースに流れてしまう。なぜなら、あなたの会社のブースでなくとも、似たような製品・サービスを紹介しているブースは同じ展示会場にあるのだからら・・・
来場者の第一印象とは恐ろしいものだ。だからこそ展示会のペルソナを掘り下げて、メッセージを磨きこむ必要がある。
【ペルソナの掘り下げ方】
逆説的だが、出展する展示会の選定方法次第では、その会場のなかでオンリーワンとなり勝ち組になれる可能性があるとも言える。自社しかそのサービスを提供しておらず、しかもその展示会がテーマとする業界からニーズが高い(一見そうとは見えないけれども)、そんな状態をつくることができれば、展示会はあなたの狩り場になるだろう。
キャッチコピーの作り方と見せ方
キャッチコピーの具体的な作り方については過去の記事でも触れているので、参考にしていただきたい。
総務・人事・経理ワールドで各社が掲示しているキャッチコピーが言わんとしている傾向
文字起こしすると理解しやすい。各ブースが出展している製品・サービスの効果は概ね4つの傾向に分類できた。
それぞれの効果によって、実はペルソナの特徴も変わってくるだろう。例えば省力化を最も喜ぶのは実際に作業をする現場のメンバーかもしれない、対してリスク排除は経営を安定化させたいマネジメント層かもしれない。
ペルソナは①自身の欲求と②上司・組織からの要請という2つの軸から思考に影響を受けている。さて、あなたの製品を喜ぶペルソナはどんな立場のどんな人なのだろうか?、そのペルソナを行動に導くアプローチはどんな言葉なのか、キャッチコピーをつくる前にもう一度考えてみると、実はアプローチが違っていた・・・ということに気付くことはよくある。
また、ぱっと見た限りではこの4つの特徴のどれに該当するのか、少し考えないと分からないようなキャッチコピーもあった。極力来場者には、余計なことを考えさせずに「自分に該当する」と思ってもらった方がブースへの誘導がスムーズだ。
専門用語を活用したキャッチコピーは避けた方が無難
考えさせることを避けるという意味では、専門用語を活用したコピーもあまり良いとは言えない。例えば、今回の視察で比較的目に入ってきたワードの一つに「RPA」がある。ロボット・プロセス・オートメーション、自動化とも言い換えることができるワードで、ある種トレンドとして消費されているワードだ。
今のバックオフィス業務に携わる人にとってはキャッチーなのかもしれない。しかし、RPAというワードそのものを掲出してもキャッチコピーとしては適切に機能しない可能性がある。なぜなら知っていると意識しているには明確な壁が存在するからだ。
確かに、総務経理人事ラインで日常業務をこなす人は「RPA」というワードを「知っている」人も多いだろう。しかし、そのワードは「日常的に話題に出る」ほどのワードだろうか?
自社が進めている事業、すなわち出展者にとって自社の製品に関連するキーワードは過大に評価してしまうリスクがある。自分たちはRPAに関する製品を作っている、すなわち日常そのものがRPAでもある、と言えるのだから過大評価してしまうのも当然だろう。
しかし、来場者としてやってくる人たちにとって「RPA」は日常的なワードなのだろうか?、様々な業務をこなす中で「一つの気になるテーマ」ではあるかもしれないが、日常という意識レベルまでは浸透していないのであれば、そもそも認識のレベルに違いがある。
キャッチコピーとして掲出したときに、この意識の壁がどんな状況を引き起こすのか。RPAというワードを見て、即座に反応するのではなく「RPA・・・自動化ね」と、一瞬の間が開いてしまう。意味を思い出す・考えるというプロセスを挟む分、キャッチコピーという一つのカタマリとして意識にしみ込まず、ベネフィットがスムーズに理解されないという事態を引き起こすのだ。
展示会ブースでは、この「一瞬の間」や「来場者に考えさせる労力」が致命的になることがある。極力、直接的に理解できる表現で伝えた方が余計なロスがない。
RPAというワードを展示会で使ってはいけない、ということではない。何度も見返すことができるカタログやチラシなどで使っても問題はないだろう。しかし、来場者の足を止めさせるという目的を果たす必要があるキャッチコピーにおいては、極力わかりやすく、一瞬で理解できる表現にしておきたい。
自分たちが伝えたい言葉を、伝えたい相手がどう認識しているか、と仮説立てることはキャッチコピーづくりをはじめとするブースでのコミュニケーションにおいて重要なこと。これは「来場者目線で考える」という作業に他ならない。
逆に、キャッチコピーを活用する目的が「関係ない来場者を接客する時間を極力排除したい」「この用語を見て中に入ってくるぐらいでないと、全く話にもならない」といったスクリーニングに重きを置く場合は、敢えて専門用語を活用するのも手段の一つだろう。しかし、その場合でも課題解決型であったりベネフィットを強く打ち出すといった工夫は必要だろう。
キャッチコピーが機能しているブース、していないブース
課題解決型のメッセージを打ち出そうと努力しているものの、キャッチコピーが適切に機能していないブースも一定数見受けられた。その主な理由は2つ。
①キャッチコピーの文章そのものがダメ問題
そのキャッチコピーは来場者に寄り添っているだろうか?、あなたのブースに足を足を踏み入れるメリットを一言で提示できているだろうか?
そんなこと言われてもコピーライターでも何でもないんだし、気の効いたことなんて言えないよ・・・と思われるかもしれないが、そもそも気の効いた表現をつくる必要はない。
大切なことは、徹底的に来場者目線であることだ。その来場者が困っていることが何で、あなたの会社の製品がなぜ課題を解決できるのか、順を追って考えていけば伝えるべき言葉に辿り着ける。伝えるべき言葉に辿り着くまでが大切で、どう伝えるかはその後でよい。
また、どうしても色んな情報を見せたいという想いが働くのは致し方ないことではあるが、「一瞬で」「効果的に」伝わるようにするためには絞り込む作業が必須だ。第一印象が「どうでもよい会社」になってしまうことを避けるためには、仮説を磨き上げることと、勇気をもって選択することが必要だ。
【文章づくりの対策まとめ】
- ペルソナ(来場者像)を具体的に掘り下げる
- 来場者の困りごとが、なぜ自社製品で解決するのかを考える
- 最も大切な情報を選択する、情報に優先順位をつける
②キャッチコピーの視認性がダメ問題
視認性がダメという点は、デザイン次第でいくらでも改善できるポイントだ。ここで損をするのは勿体ないので基本を押さえておきたい。代表的な対応策は以下の3つだ。
- 視界に入る情報量のコントロール
- 余白をつける
- メリハリをつける
■視界に入る情報量をコントロールする。
まず、情報量が多過ぎるブースは来場者が的確に情報を視認できなくなり、第一印象の段階でどうでもいいブースに成り下がってしまう可能性がある。
ブースのどこかの情報が引っかかれば来場者は足を止めてくれる?、来場者はそれほど一つのブースに目線を向けてくれない。よしんば足を止めてくれても「どうでもいいブース」という第一印象はずっと残ったままだ。
ホスピタリティという面から考えても、出展者側は情報を出すだけ出して来場者側に「あなたにとって必要な情報は勝手にあなたの方で拾い上げてね」というスタンスは不親切だろう。そんな姿勢は、ブースでのコミュニケーションに行動として現れてしまう。来場者目線になるということは、徹底的に来場者になりきって来場者が快適に情報をキャッチできるコミュニケーションを想定するということだ。
一目で理解できる程度の情報量にしておくこと。どうしても複数のキャッチコピーを掲出するのであれば、情報に優先順位をつけ、最も見てもらいたいキーワードに最初に目が行くようなデザインにするべきだろう。
■余白をつくる
文字サイズを大きくする、強調した表現にする、インパクトを出す、といった表現の方法を取ったがために、逆にスムーズに認識できない看板キャッチコピーになっているケースがある。ギチギチに詰めた文章よりも余白を取ってデザインされた文章の方が認知しやすいのは周知の事実だ。
展示会場で、実際に来場者が歩いてきたときに視界に入ってくる情報量はどの程度が限界なのか。これは会場の通路幅やブースの高さ、当日の混雑具合にも影響されるため一概には言えないが、私自身はキャッチコピーは20文字以内で収めたうえで、極力そのほかの文字情報が最初に目に入ってこない状況をつくることをオススメしている。出展者としてではなく来場者として展示会場を歩いてみると感覚が掴めますので試してみるとよいだろう。
■メリハリをつける
複数のキャッチコピーをメリハリなく掲出してしまったがために、結局どのキャッチコピーに対しても目が留まりにくくなっているブースも見受けられた。
そもそも複数のキャッチコピーを掲出すること自体が視認性を損なうのだが、どうしても複数のキャッチコピーを掲出したいという場合には、キャッチコピーごとにデザインのメリハリをつけると視認しやすくなる。しかし、どんな場合でも視界に入ってくる情報量のコントロール、優先順位付けという点は忘れないようにしておきたい。
【キャッチコピーの視認性対策まとめ】
- 情報量をコントロールする
- 余白をつくる
- メリハリをつける
キャッチコピーもデザインも機能しているはずなのに、ブースに足を踏み入れてもらえない問題
キャッチコピーは完璧に磨き上げた、視認性もバッチリ!・・・のはずなのに、ブースに来場者が入ってきてくれない・・・なぜだ!!!、という悲しい事態に陥っているブースも見つけてしまった。
キャッチコピーはうまく訴求している、デザインのメリハリも良い、開放感のある展示構成で、パッと見のデザインだけなら非常にうまく作り上げているな・・・という印象だが、来場者がなぜかブースに入ってこない。
理由はスタッフにある。それも、やる気に満ち溢れたスタッフが原因なのだ。一生懸命呼び込みをし、ノベルティをサンプリングする。コンパニオンとスタッフが通路にズラっと並び、それはまさに壁のよう。
せっかく看板を見て興味が沸いたのに、やる気に満ち溢れたスタッフがブースに入るのを躊躇させてしまった。ああ、なんということなのだろうか・・・!!
次回の記事では、そんな展示会ブースと運営スタッフの関係性についても触れてみたい。よいデザインでしっかり誘客できていたはずなのに、スタッフの動き方一つでその成果が台無しになってしまうこともある。そんな危険性を認識しておくだけでも成果が全く変わってくる。
似たような製品をPRしているブースでも集客に差が出てしまう理由は?
さて、冒頭で触れた同じような商材なのに集客力に差が出ていたというテーマについて掘り下げてみよう。
既に紹介したとおり、LINEを活用した採用ツールを紹介しているブースが複数あった。しかし、パッと見ただけではLINEを活用するというポイント以外にどのような違いがあるのかは通路からでは分からない。つまり中に入って接客を受けないと、それぞれのツールの違いを比較できないという状態だ。
一方、来場者がブースに足を踏み入れるためにはパっと見の印象が大切になる。しかし、サービスそのものには第一印象の段階で違いを感じられないのに、集客に差が出ているのはどんな理由からだと思われるだろうか?
来場者にとってのメリットを広い範囲から考える
集客に成功しているブースを観察していると来場者のベネフィットにしっかり触れているブースはうまく集客できていた。そして、ベネフィットの考え方にもちょっとしたコツがあるようだ。
決して装飾が目立っていたとか、入りやすいレイアウトになっていたということではない、むしろ集客に失敗しているブースは装飾に予算がかかっているものだった、原因は来場者がブースに足を踏み入れる動機付けとなるベネフィットの見せ方に差があったことだ。
集客に成功しているブースが打ち出していたのは、LINEを活用したときに起こるメリットの訴求ではあった。その中でも一般論と言える要素を来場者にわかりやすく見せていたことが特徴だった。
一般論とは、LINEを活用したときに起こるメリットではありながら、自社製品だけの特徴ではないポイントのことだ。
例えば「LINEを活用すれば、求職者側の返信率が上がる」という情報は、この情報を掲示した出展者だけに該当する情報ではなく、他のLINEを活用した採用ツールを提供するブースでも共通のことが言える。その情報を、敢えてブース内で掲示していたのだ。
それって、ライバルに塩を送る行為になるんじゃないの?という危惧があるかもしれないが、基本的に来場者はブースで体験したことは、そのままブースでの評価として受け取るようだ。
一般論のようなベネフィットであったとしても、それが来場者の心に刺さる内容であれば自社製品の評価として受け取ってもらえる。つまり、一見すると当たり前の一般論が、自社製品の評価にプラスになって作用するということだ。
今回のケースで言えば、LINEを活用する一般論の中に来場者の心を最もくすぐるベネフィットがあった。その要素をうまく活用できていたブースが集客において成功していたのだろうと仮説立てることができる。
実際「返信率」については複数のブースで同じようなことに触れていたが、特に通路側から見やすい位置に情報を掲示していたブースが集客に成功していたように見受けられた。
ちなみにこの状況から来場者の特性もある程度分析できそうだ。この会場に来ていた来場者の思考は
- 採用ツールにLINEを活用したいけど、どの会社のツールにするか迷っている人?ではなく
- そもそも採用活動にLINEを導入するか、しないか?を検討したい人かもしれない
まず、社内を説得するためにはLINEを導入するメリットを説明する必要があるのだろう。そんな情報を探しているときに、そもそも論のメリットが目に入ってくれば、そのブースで説明を聞いてみたいと思うのは自然なプロセスと言える。
自社製品の特徴という「自社の枠組み」だけに捉われず、来場者が何に困っていて何を求めていて何に気付いていないのか、仮説立てて掘り下げていくことで、適切なコミュニケーションのあり方が見えてくる。そのときに活用するのは自社製品の特徴だけでなく、もう少し広げた範囲でモノを見ると新たな気付きがある。
喜ばれそうなノベルティや、客寄せのイベント的なモノ、チラシ配布のコンパニオンスタッフがいなくても、来場者のベネフィットに寄り添えば集客はできる。逆にベネフィットに寄り添えないと如実に差が出る、という実例を生で見た現場だった。こうも露骨に集客に差が出るものかというのは恐ろしいことでもある。
おわりに
新たな気付きもあった総務・人事・経理ワールドの視察だったが、今回触れることができなかった「運営するスタッフ」に関連する情報もレポートしている。スタッフの行動やユニフォームのような些細に思えそうなモノも集客に影響力を及ぼすことは知っておいていただきたい。