展示会ブースを出展するにあたって定量的な目標数値は立てているだろうか?
目標数値を立てていないと・・・
- ブースプランが散漫になりデザインの効果が薄くなる
- 費用対効果が算出できない
- 展示会後に改善策の検証ができないためPDCAサイクルが回らない
といった問題が起こり、結果「展示会に出展しても成果に繋がらない」という状態に陥る。
定量的な目標設定は展示会ブースのデザイン・運営計画と密接に連携するうえ、費用対効果の算出やPDCAサイクルを回していくための基本的な軸になり得るものだ。「なんとなく」の目標数値ではなく「意味・根拠ある数値」を考えることがキモと認識しよう。
用語の定義
幾つかのマーケティング等に関連する用語を展示会の強化書的解釈を加えて使っているので、その意味をここで定義しておきたい。
闇雲に数値目標を設定すればよいわけではなく精度が肝心
定量的な目標設定とは、ただ数値目標に落とし込めばよいということではない。数値目標の質や目標設定に付随した打ち手が的外れだと、追いかけても無駄な目標となってしまう・・・そんな失敗の具体例を幾つか紹介しよう。
定量的な目標を設定はしているが、的外れな目標や意味の薄い目標を設定している
〇到底達成できない高すぎる目標 → ただのお題目化
例えば1日の接客可能人数の限界を超えているような目標設定では現場が白けたり、そもそも目標そのものを真剣に受け取られなかったり、「達成できなくて当たり前」という空気が生まれてしまう。
なぜその目標が実現可能なのか、ブースのデザインや運営計画に基づいて根拠を持って説明できる状態でないとスタッフのモチベーションを損ねてしまうだろう。設定した目標を達成するためには相応しい受け皿が必要だ。
〇成果との相関性が低い目標 → 達成しても意味がない
【成果】とは売上や利益あるいは受注件数などと言える。
例えばリード(展示会で獲得した名刺)を200件集める!ということを目標にして、実際に達成したとしても、獲得したリードがまったく売上に繋がらなかったというケースがあったとしよう。その原因が、そもそも収集したリードの質に問題があったことだとしたら、何のために展示会に出展したのだか分からない。
目標として設定したリードは収集すれば収集するほど売上も向上する、つまり相関性が高い状態であることが必要だ。展示会においての目標設定は「成果との相関性がある」ではなく「成果との相関性が高い」状態を目指す姿勢でいることが肝心だ。さて、あなたの設定した目標と成果との相関性は高いだろうか、それとも低いだろうか。
収集するリードをより詳細に優先度の高さなどでセグメントしている場合にも相関性が低いという状況は起こり得る。優先度の高いリードに展示会後の営業活動を注力したのに成果としては薄かった。このようなケースの場合、展示会後の営業活動の適正さを検証することはもちろん、展示会における優先順位の設定方法に収益との相関性が低かった可能性も検討してみた方がよいだろう。
展示会ブースでの目標設定とブースのデザインや運営体制が連動していない
ブースの計画は目標設定を実現できるデザインや運営体制になっているだろうか。目標設定とデザイン・運営体制は相互に強い関連性があるため、企画を進める段階で密に検証する必要がある。
例えば・・・
- 100件のリードを集めるためには、最低でも100件の接客が可能なスタッフ数・ブースレイアウトが必要。
- 5人のスタッフがブース内にいても、レイアウトの都合で同時に接客できるのが3組までという環境では接客効率が悪い。
といったケースなどが考えられる。
展示会での目標設定とコンバージョン(受注)までの計画が連動していない
展示会はコンバージョン(受注)までの途中段階。せっかく有望なリードを収集したのに、展示会後のフォロー計画が立てられていなかったり、現実に即していなかったりする場合にはコンバージョンに結び付かない。
リードによって段階や状態が異なるからこそ獲得したリード群の優先順位をつけたのに、すべてのリードに対して同質のフォロー活動を展開していたがためコンバージョンに辿り着かないといった状態は勿体ないと言わざるを得ない。あるいは営業人員数でフォローできる限界数を大幅に超えたリード群の提供は、速やかなフォロー活動を阻害する要因になってしまう。
設定した目標にリード育成の観点が含まれていない
展示会はコンバージョンまでの途中段階。ということは、始点ですらないケースも存在する。どうしても「新規顧客の開拓」が高い重要度になってしまいがちですが、育成途中のリードに対しても効果があがるケースも存在する。目標数値のなかにこのリード育成の観点が含まれていないと、正確な成果を拾い上げることは難しくなる。
※リード育成・・・既に関係性は築いているが受注に至っていない顧客候補をフォローする行為
精度の高い目標を設定するための方策
上述の問題点を回避するための方法がいくつか考えられる。
具体的な作業としては、過去に出展した展示会の実績とその後の成果を検証することで今回出展する展示会における目標設定のヒントにすることだ。複数の展示会について検証できるのであれば、より正確なヒントに近づくことができるだろう。
また、BtoBのビジネスでは展示会での成果がコンバージョンするまでに時間を要するケースが多いため、一定期間経過後の展示会について検証できると適切だ。(ビジネスモデルや業界特性にもよるが、1~3年前の展示会について検証)
過去に展示会への出展実績がなく、今回初めて出展する場合についても考えるためのヒントは自社のビジネスモデル内にありますので後述する。
的を射た目標設定にするためのステップ
〇展示会きっかけでのコンバージョン数の算出
まず、展示会で獲得・育成したリードのうち、何件がコンバージョンに至ったかを算出しよう。展示会きっかけで受注につながった顧客数を算出する、という作業だ。コレが簡単に算出できる場合には特に問題なく次のステップに進める。いや・・・それが既に難しいんだが・・・という声が聞こえてきそうだが、頑張って算出していただきたい。
というより、コレを算出しないことには何も始まらない。算出するための方法論は特にない。ビジネスモデルやその企業独自の事情によってケースはまちまちだから。
しかし、その判断基準をつくることはできるはずだ。何も一般論との整合性が必要なわけではなく、自社内で検証するための基準にするだけなので、基準の精度よりも基準がブレないことを優先して機械的に処理できる方が後の作業がスムーズに進む。例えば、判断基準としては以下のような方法が考えられる。
【判断基準の例】
- 途中の経緯は無視して展示会で獲得・育成したリードがコンバージョンしていたら展示会きっかけのコンバージョンとみなす。
- コンバージョンに至るプロセスで特定のステップを踏んでいる場合、展示会きっかけのコンバージョンとみなす。
- コンバージョンが確定している顧客だけでなく、現時点で見込の顧客も数値に含める。
〇CVR(歩留まり率)と平均売上の算出(獲得・育成)
コンバージョンに至った顧客数が算出できると、必然的にCVR(歩留まり率:%)が算出できる。展示会で獲得・育成した顧客候補のうち何%がコンバージョン(受注)に至ったのかを示す数値だ。
CVR(歩留まり率:%)=
コンバージョン数÷獲得・育成リード×100
目標設定の数値が売上などの金額基準の場合、コンバージョンに至った顧客ごとの平均売上を算出する。ここでは「顧客ごとの売上」を基準に考えるか「製品・サービスの売上」を基準に考えるかなど、どこに算出の基軸を置くかで数値の出し方が変わってくる。自社のビジネスモデルを振り返って、どんな基軸に従って目標を立てることが適切なのかということを考えてみよう。
〇リード群ごとにCVR・平均売上に差異があるか検証する。
展示会で獲得したリードを優先順位に従ってセグメントすることは一般的にも実行されている方策だろう。分類方法には「いますぐ客、これから客、まだまだ客」で分類する方法や「重要度と緊急度の二軸でマッピング」で分類する方法などがあある。これらのセグメントをリード群とここでは呼ぶことにする。
このリード群ごとにCVRや平均売上にどのような差異があるかを検証する。
通常、展示会後のアプローチ施策はリード群ごとに優先順位をつけて取り組み方を分ける方法が一般的だ。取り組みをわけている場合、CVRも差異が出るのが当たり前だが、逆に差異が出ていない・少ない場合にはリード群の分類方法や展示会後の取り組み方を検討しなおした方がよいのかもしれない。
CVR・平均売上に「差異が出る」または「差異が出ない」は提供する製品・サービスの形態やビジネスモデルによって変化する。どちらのケースが正しいかということは一概に言えないが、自社が採っている手法や、想定していた結果から明らかに外れているようなイレギュラーが発生していないかをウォッチするとよいだろう。
〇リード群定義の見直し
これまでの項目は費用対効果の検証とも言える項目だった。ここから先の検討事項は費用対効果の向上という土台が変わるテーマとなる。
リード群分類例のうち「いますぐ、これから、まだまだ」の分類を採用した場合、「いますぐ客」が最も重要性の高いリード群として扱われることは想像に難くないのだが、これらの「いますぐ客」は実際に成果と連動していたのだろうか。もし「これから客」のなかに「いますぐ客」よりも収益との相関性が高い層が一定数いたとしたら??
検証したリードのうち、最も重要視するリード群と成果との相関性が高いのであれば特に問題はないが、相関性が低い場合には、そもそも重要視するリード群を定義しなおすことをお勧めする。
どのような顧客を「いますぐ客」に振り分けていただろう?、「これから客」と「まだまだ客」を分ける基準はどのようなものだろう?、「いますぐ客」「これから客」「まだまだ客」とは具体的にどのような定義なのだろう?
「いますぐ客」に定義したはずなのに成果との相関性が低かった・・・ということであれば、そもそも「いますぐ客」ではなかったのではないかと疑って然るべき。展示会ブースでの接客中にこのリードは「いますぐ客である」と判定する何らかの基準があったはずですが、その基準を見直すという作業になる。
受注件数、金額などの定量的な情報に加え、コンバージョンに至るまで・至ったあとの特徴など定性的な情報を検証することで、何らかの発見に繋がることもあるだろう。
例えば売上でなく利益を成果として設定している場合、優先リード群のCVRは高いものの社内工数や経費が他のリード群と比較して異常に高いという状況であれば優先リード群の定義そのものを検証しなおしてもよいかもしれない。
この作業を行うことで、並行してペルソナ像の補強・あるいはペルソナ像の見直しといったことが可能となる。自社を求める顧客、自社にとって望ましい顧客が一定のボリュームを持っているのかなど検証ができれば、より強固な「自社の求める、現実に存在するペルソナ像」ができあがるのです。
■参考記事:ペルソナの設定について
〇最も望ましいストーリー
展示会ブースの戦略は追いかけるべき顧客群の獲得に注力するものであることが出展効果を最大化するための近道だ。
追いかけるべき顧客群を上述の作業で具体化していくわけだが、これらの顧客は単に収益との相関性が高い・収益が高くなるといった売上面での効果のほか、企業の持続的成長に寄与してくれる存在であってほしいものだ。さて、そのような顧客像はどのようなもので、自社との関係性はどのようなものなのだろうか。
例えば・・・初回取引額の大小よりもLTVの方が重要かもしれない。あるいはロイヤルティが高いことが重要なのかもしれない。誰と・どんな関係性を・どのように作ることが自社の持続的成長のエンジンとして機能するのかをイメージすることがこれらの判断基準になる。自社のビジネスモデル・価値観・生み出すベネフィットと最も望ましい顧客・そのペルソナなど、ここまでの分析を丹念に進めていれば、その姿はもうイメージができているのかもしれない。
〇展示会出展がはじめての場合
これまでに展示会出展したことがない場合は、展示会をとおした獲得リードやそのコンバージョンなどのデータがないので、根拠ある目標を設定することが難しい。しかし、自社のビジネスモデル内に何らかのヒントが眠っている場合はあるので、そのヒントを取っ掛かりに目標設定に繋がるCVRを算出していただきたい。
展示会と普段の営業活動を比較してみると、展示会ブースで獲得したリードとは他の新規セールスにおける「初回の商談」を経過した状態と近しいものであると言えるかもしれない。
と解釈すると、他の新規セールスにおける「初回の商談」経過段階で顧客を展示会でのリード分類ルールに従って分けたときに優先リードに該当するであろう層が、実際にコンバージョンまでに至った確率や平均的な売上はどの程度だったのかが算出できれば、初出展時の目標に対する根拠数値として活用できるかもしれない。
実際に出展して成果を検証してみたときに、まったくイメージしたCVRと違う結果になったというケースもあるだろう。しかし、計画を立てる前に根拠を探し・実行を経て検証する、この果てしない繰り返しが展示会の精度を向上させるためには不可欠なのだ。
目標設定とブース計画を連動させる
設定した目標が達成できるかどうかはブースのデザインや運営計画と密接に連動する。つまり、詳細な目的の設計があるからブース計画が検討できるとも言える。
【ブース計画と目標の関係性 具体例】
- スタッフ1名が展示会開催期間中に取得できるリードの限界値が100件
- 運営スタッフとして3名がブースに常駐
この条件だとリードの取得目標限界値は300件。それ以上のリード獲得をしたいのであればスタッフを増やすしかない。
展示会の目標を実現するための2つの方向性
さて、目標の実現は主に2つの方法で狙うことができそうだ。
- ブース全体で取得する総リード数の増加
- 総リード数に占める優先リード群の構成比向上(リード獲得の精度向上)
①ブース全体で取得する総リード数の増加を図る方法例
- 小間数の増加(2小間で100件→3小間で150件!?)
- 運営スタッフの増加(4名で100件→6名で150件!?)
- レイアウトの改善、キャッチコピーの改善によるブースに入る来場者数の増加
- 接客効率の改善(接客の1回転アプローチからクローズまでの時間短縮)
- 接客時間と接客相手を探している時間のバランス改善(開催時間のうち接客している時間の比率が長くなるようにする)
②総リード数に占める優先リード群の構成比向上を図る方法例
- 優先リード群に刺さるキャッチコピーの検討。
- キャッチコピーやパネルでのリード群のスクリーニング
- 接客フローの適正化による優先リード群の離脱防止
②の最後「優先リード群の離脱防止」とは、本来優先リード群に属する顧客であったはずが、接客フローに問題がありスタッフが優先リード群に属する顧客であると気付かないうちにブースから離脱してしまうというケースだ。このような離脱リードは優先リード群ではなく非優先リード群に分類されてしまう懸念性があるため、最初にニーズチェックを行う質問などを行い、リード群の確定を接客の初期に行うといった対応策が考えられる。
もちろん、単純に運営スタッフ数を増やしたから、その数に比例して獲得リード数が増えるというわけではない。また、投資額が増えれば目標数値が変わってくる場合もあるだろう。それでも、複合的な要因を様々な角度から検証する必要はありながらも、一定の仮説を立てることは可能だ。
目標設定とコンバージョンまでの計画を連動させる。
〇展示会の前後計画
リード群ごとに展示会の前後でどのような打ち手を実践すればコンバージョンに至るかを計画することだ。
リード群の特性ごとに効果的な施策は違うはずです。事前に計画を立案・実行しておかないとCVRの高いリード群に対して自社のリソースを注力できず非効率になったり、時間をかけて育成するリード群に対して勇み足で接触してしまい逆に離脱を誘発するという事態につながったりしてしまう。
前後計画を立案する際には以下のポイントを重視して検討する。
- リード群の意向・状態にフィットした方策を検討する。
- リード群のボリュームと自社のリソースのバランスを加味する。(リソース:営業人員数や生産力など)
- リード群のボリューム(数量)が展示会を経て上下した場合の打ち手を考えておく。
〇過去の前後計画がCVRの積算根拠
過去に展示会出展をしたことがあれば、その出展前後でどのような打ち手を実践したかどうかを拾い上げてみよう。過去展示会のCVRは実際に実行した打ち手の影響により導かれた数値であるため、同種の打ち手を今回も実践する場合はある程度近しいCVRになると想定して計画を立ててみる。
- CVRは過去の実績から拾い上げるため、基本的に固定値。
- CVRを大きく変動させるような施策を投入する場合は、今回出展の展示会目標設定においてもCVRを検討しなおす。
それでは、次の項目で具体的なシートへの記入方法を紹介しよう。
定量目標設定シートの記入方法
現在出展予定の展示会に対する目標と、目標積算根拠になる過去の出展実績と成果実績について各シートに記入を進めていただきたい。
例えば2016年1月の展示会に出展したのであれば、2016年1月の展示会に出展する前段階の2015年10月ぐらいにはどんな目標を立て集客施策を実行し、実際の展示会での結果ではどうだったのか、その展示会の結果が2016年1月以降2019年の1月ぐらいまででどう成果に結びついたのかを整理する。この期間設定などは自社内の基準で検討いただきたい。
最終的な到達目標
現出展予定の展示会、過去の展示会と同時に記入を進めよう。
〇目標設定の基軸
目標の達成を何で測るか、何を軸にして目標を設定するかということで、主に2通りの考え方がある。
- 展示会がきっかけとなり獲得した顧客から得られる売上・受注件数
- 展示会に出展した製品・サービスの売上・受注件数
基点が顧客側にあるか自社側にあるかの違いだが、どちらを選ぶかで戦略の考え方も変わる。
〇目標設定(獲得、育成、合計)
定量的な目標設定とは「計測できる数値情報」であることが必須だ。受注件数や売上、あるいは利益も指標となる。売上で判断するか件数で判断するかどうかは、自社のビジネスモデルを見渡してみたときに適切な指標かどうかかを鑑みて判断いただきたい。
最終的な合計数値だけでもよいが、リード獲得とリード育成の双方に対して根拠ある目標を設定し、それぞれに対して適切な打ち手を検討していくと精度が高まる。
〇目標達成期間
単年度の売上で成果を測るか、あるいは複数年度にわたって成果をウォッチするかどうかを設定して記入しよう。顧客に対しても、初回売上のみを展示会の成果として計算するか、一定期間内の取引回すべてを成果として算入するかどうかで展示ブース内におけるアプローチが異なる。後者の方がLTV(ライフタイムバリュー)的な考え方であり投資的なアプローチ方法と言える。
〇投資予定額(展示会・その他)
展示会ブース出展に対して投入する予算額(出展料、装飾工事等)と展示会前後のコンバージョンに向けた施策の投資予定額を記入しよう。
リード獲得(ジェネレーション)
リード獲得とは、展示会ブースで新規に顧客候補を獲得することだ。(従来接点のなかった顧客と展示会ブースを媒介にして接触をもつ)
〇リード定義
展示会のブースで獲得したリードを分類する基準や定義うする。例えば「いますぐ客」「これから客」「まだまだ客」の3つにリードを分類した場合、そのリードに分類するためのルールなどを設定し、リード群の分類数を反映してシートに線を引いて分類ごとの記入欄をつくり、各リード群に名称をつけよう。
〇事前集客施策
新規のリード獲得において事前の集客施策をうつケースは少ないと考えられる。自社ホームページやSNSなどのオウンドメディアへの情報掲載、業界関連誌やビジネス誌などへのプレスリリース、あるいは特殊なチャネルを有している場合にはそのチャネルへの情報掲出などが主な手法となるが、この手の事前集客施策は展示会場でのアンケート等で検証しないと施策の効果が見えにくいといった難点がある。
〇リード獲得目標数、リード構成比
展示会ブースにおいて獲得するリードの目標数あるいはそのリード群ごとの構成比。コンバージョンにつなげるためには集客数の向上を図る方法と、優先リード群の構成比を向上させる方法が考えられる。
〇コンバージョンに向けた活動
コンバージョンを実現するための実行計画を記入しよう。リソースは優先リード群に対して大きく割いた方が効果的だと考えられる。
〇想定CVR(歩留まり率:%)
過去の実績または自社のビジネスモデルから想定する数値で基本的には固定値になる。ただし、これまでとは異なるようなCVRに大きな影響を及ぼしそうなマーケティング施策を実践する予定の場合にはCVRも再検討いただきたい。
〇想定コンバージョン数(受注数)
リード群ごとの目標数にCVRを掛けて得られる想定コンバージョン数。この項目は機械的に計算しよう。
〇想定売上
目標数値が売上ベースでなく件数ベースの場合には記入不要。
ビジネスモデルや目標設定の基軸・達成期間の設定によっては、リード群ごとに平均の売上が変わるケースがあるため、平均の売上が変わる場合にはその数値を記入しよう。過去の展示会実績や現在のビジネススキームを参考に数値を算出するとよい。
〇リード群ごとの売上想定
目標数値が売上ベースでなく件数ベースの場合には記入不要。リード群ごとの想定コンバージョン数に想定売上を掛けて機械的に算出しよう。
リード育成(ナーチャリング)
リード育成とは、関係性は既に構築しているが受注に至っていない顧客候補や、取引実績はあるがさらに取引を拡大したい相手をコンバージョンに向けて育成する活動のことと、ここでは定義する。
〇リード定義
関係性の構築度やコンバージョンに至るプロセスなど、自社内の基準でリードを分類していただきたい。ここでは「展示会ブースへの来訪」がコンバージョンに至るプロセスのなかで効果的に機能すると考えられるリード群を選定する。当然、展示会への来訪を促す行為がマイナスに作用してしまいそうなリード群にはアプローチしない。
〇事前集客施策
リード育成は事前集客施策を適切にうつ必要がある。育成中のリード全てに対して同質の集客施策を実践することが必ずしも適切でなく、リード群の状況にあわせたブース来場促進を実践することで集客効率の改善ができる場合もあるだろう。
〇育成リード来場目標数、育成リード構成比
育成リードの集客目標数。事前集客施策の結果が来場者数に繋がる。
〇コンバージョンに向けた活動
コンバージョンを実現するための実行計画。育成リードに対しては既に一定のアプローチを実践している場合が多いので獲得リードとは施策が異なるケースが多い。
〇想定CVR(歩留まり率)
過去の実績または自社のビジネスモデルから想定する数値で基本的には固定値。ただし、これまでとは異なるようなCVRに大きな影響を及ぼしそうなコンバージョンに向けた活動を実践する予定の場合にはCVRも再検討しよう。
〇想定コンバージョン数(受注数)
リード群ごとの目標数にCVRを掛けて得られる想定コンバージョン数なので、機械的に計算する。
〇想定売上
目標数値が売上ベースでなく件数ベースの場合には記入不要。
ビジネスモデルや目標設定の基軸・達成期間の設定によっては、リード群ごとに平均の売上が変わるケースがあるので、平均の売上が変わる場合にはその数値を記入する。過去の展示会実績や現在のビジネススキームを参考に数値を算出しよう。
〇リード群ごとの売上想定
目標数値が売上ベースでなく件数ベースの場合には記入不要。リード群ごとの想定コンバージョン数に想定売上を掛けて機械的に算出する。
総計
獲得リードの数値合計と育成リードの数値合計を成果想定として算出する。(件数なのか金額なのか、目標数値と比較できる基準で算出)
想定成果と目標数値に開きがある場合の対処方法
想定した数値だと目標数値に到達できていないケースもあるだろう。大きくわけて3つの方向性からの対処が考えられる。
〇展示会での改善施策
展示会での改善施策はリード獲得・育成総数を向上させようとするか、優先リードの構成比を向上させようとするかの2つのポイントから検討した方がよい。このとき帳尻合わせ的に非優先リード群の顧客を増やそうという目標は立てないことが注意点。
望ましい顧客でない顧客を増やそうとする行為は短期的な目標達成に役立っても長期的に見て企業の持続的成長の源泉に繋がらない。例えば、本来は研究開発部門の担当者が優先リード群であるのに、数値目標達成のために非優先リード群である調達部門の担当者も積極的に集客したとすると、短期的な売上に結び付いても長期的には価格競争に巻き込まれるケースが増加してしまい、企業の成長力を阻害してしまう。
そのうえで、ブースの諸条件を鑑みて実行可能な目標に留めることが重要だ。ブースの広さや効果のあがる運営人員数の最大値から、どうあっても獲得・育成できるリードの限界値も見えてくる。それでも目標が遠い場合には、そもそも目標設定に無理があったということを考えた方が健康的だろう。
リード獲得・リード育成を区別しない場合
シンプルにリード育成とリード獲得を同じリードとして扱うことも可能だが注意点がある。既に関係性を構築している顧客の場合、ブースへの来場時に名刺を改めて交換しないなど、リード育成として判定されないようなオペレーションになってしまう場合があることを想定しておいた方がよい。
獲得と育成の区別をせずにどちらも一つのリードとして扱う場合は、育成リードが来訪した場合でも必ずブースで名刺をもらうようにするなどオペレーション上の工夫をするとよい。方法はどんなものでもよいが、リードとしての来訪が確実に判定できるようにしておけば、事後の成果検証などの際に正確な数値を見出すことに繋がる。
目標設定の基本的な姿勢
目標を根拠を持って立てることは非常に困難な作業だ。そう簡単に適切な数値やリード群の定義はできない。
何度も何度も仮説設定と展示会での実行と検証を経て精度を高めていくことが重要。初期の仮説が誤っていたからといって仮説を立てることをやめてしまってはブースの適切なアウトプットに繋がらない。市場、業界、情勢の変化によっても数値や優先リード群は変化する。よって、常に仮説を立て検証し続けるスタンスで臨んでいただきたい。
これらのプロセスは事業の到達目標や企業として望ましい顧客像を定義するような作業にもなる。経営の根幹にも関わるような事象になると担当者だけで進めても適切な検証ができない場合が考えられるため、経営者やマネジメント層が中心となって、あるいは担当者と一緒になって検討すれば、より望ましい結果に繋がるだろう。
おわりに
最後まで読み進めていただいた根気強い読者の方であれば、これらの作業もじっくり取り組めることだろう。定量的な目標設定・ブース計画・費用対効果の算出はすべてが連動するテーマだ。展示会での結果はあくまでビジネスプロセスの途中段階、適切な成果に結びつくよう密に検討を進めていただきたい。