展示会ブースの成果をあげるために「何を伝えるか」と同じぐらい大切なのが「どう伝えるか」。目的が明確になったら今度は手段を明確にする段階に入る。
手段についてはネット上で検索すれば<展示会で集客できる方法>という名目のコツ・方法論・アイテムが山ほど出てくるだろう。しかし、それぞれの手段とブース全体での体験に一貫性が無ければ来場者に適切に伝わらない。
そのためこの記事では、自社の強みを3分で説明できるメッセージとして変換する作業について解説する。メッセージ化された自社の強みは「どう伝えるか」を考えるための基礎資料になる。エレベーターピッチよりは長め、通常のプレゼンテーションよりは短め、端的にまとめながら根拠もしっかり提示するぐらいのボリューム感だ。
自社の強みについて
さて、「どう伝えるか」という作業に入る前にそもそも「何を伝えるか」という中身が固まっていないと先には進めない。もしまだ具体的になっていないという方がいれば、過去記事を参考にまとめていただきたい。
ブースのデザインをどうする、キャッチコピーをどうする、パネルをどうする・・・というコンテンツのイロイロを考える前に、まずは自社の強みをメッセージとして変換することが先決だ。このメッセージを先に考えるからコンテンツに一貫性が生まれる。
ブースが伝えるメッセージ
ブースの構成要素全体で来場者に語り掛ける
展示会ブースはプレゼンテーションであるとも言える。プレゼンターはブースそのもの、オーディエンスは来場者だ。
展示ブースが人格を持って(仮にブース君と設定しよう)、来場者に対してプレゼンテーションをするというイメージを持っていただければ分かりやすいだろう。そこでのスタッフの役割はブース君の行うプレゼンテーションの一要素ということになる。
ブース君はプレゼンテーションをするために様々な武器を持っている。例えば、キャッチコピー、展示物、パネルや映像、さらには運営スタッフなども武器に挙げられる。
ブース君のターゲットはここまで記入してきた企画シートで決まっている。どんな来場者がターゲットなのかはここまでの作業で固まってるだろう。ここから先は、どんな武器をどんな順番でどんな使い方をするのか考えていく段階に入る。
自社の強みをプレゼンテーション原稿にする
武器の使い方を考えるにあたって、まずは大まかな方向性を立てる。方向性はメッセージにするという作業から見出していく。
具体的には、自社の強みをそのままプレゼンテーションするとしたら?と仮定して台本を作ってしまうというものだ。3分程度で一気に話すことのできる内容ぐらいに収めよう。
- 対象・・・ペルソナ・組織ペルソナの
- 課題・・・強い痛み・悩みを
- 手段・・・自社の製品・サービス・ビジネスプロセスで解決すると
- 結論・影響・・・対象は(起こる変化)となる
- 根拠・・・なぜ解決できるのか。(3つ程度提示するのがわかりやすい。根拠にはタイトルをつけよう)
- まとめ・・・一言で表現すると(ここに記入したものはキャッチコピーの種として扱う、場合によってはそのままキャッチコピーになる)
この台本は、コミュニケーションの計画をつくるための台本だ。
台本のとして練り上げたテキストのうち、どの部分をキャッチコピーにするのか、どの部分をパネルにするのか、どの部分を接客で説明するのか、それぞれのコンテンツのなかで最もペルソナに対して効果的な方法を探っていく。
来場者がブースに接触したタイミングから接客をクローズし来場者がブースから出ていくまでのプロセスの「どこ」で「何を」伝え「感じて」もらいたいのか、そのベースになる資料だ。
メッセージをコミュニケーションに変換
次に、先ほどの台本をコミュニケーション型に変換する。
プレゼンテーションの段階では一方通行だ。しかし、実際の接客はコミュニケーションになる。ブース君とペルソナが会話するイメージで、中身を埋めていっていただきたい。
コミュニケーション型に変換することで、自分たちが「聞かれたい質問」「取りたいコミュニケーション」の具体的なイメージが沸いてくるだろう。そのイメージをもとに詳細なコンテンツを設計していくのだ。
コミュニケーションに変換する構成の例
コミュニケーションとして考えやすいパターンを例示する。あくまで一例でしかないので自社流にアレンジしてもらって結構だ。
①製品・サービス・企業の特徴
製品・サービス分析とペルソナの困りごとをふまえて端的にまとめよう。次の②でどんな質問をされたいかイメージしながら書き出してみるとよい。
②説明を聞いてペルソナが最初に思い浮かべる疑問
ペルソナの置かれた環境だからこそ思い浮かぶ疑問だと効果的。
③疑問に対する回答
ペルソナの環境や立場に即した回答をイメージしていただきたい。
④導入についての不安・障壁
既に効果については良いと思い始めている、しかしそれを信じるに足りる根拠がほしいという状態だ。
⑤不安を取り払う言葉
1-8の根拠部分、あるいは別の証拠(例えば実際に使用した別の顧客の声など)を提示する。ペルソナは社内の関与者を説得する方法を考え始めている段階だ。
⑥決断に至らない言い訳
現状維持バイアスが働いている・あるいは社内の障壁があると仮定したときに、何らかの言い訳をペルソナは口にするかもしれない。メリットと障壁を天秤にかけたときに、まだ障壁が上回っている段階だ。
⑦決断を後押しするお膳立て・クロージング
行動を促すようなお膳立てができるなら提示する。(無料サンプルの提供やキャンペーン価格の提示などは一例。顧客が行動に出るための「口実」が用意できるなら、それに越したことはない。)
あなたが聞かれたい質問は何か
ペルソナが魅力に感じる自社の要素は分かりやすく見せる必要がある。しかし、ペルソナが持つ独自の状況や条件をふまえると、製品・サービスの全体像を把握するプロセスで①疑問、②不安、③言い訳というフェーズを通過することがある。
疑問・・・製品・サービスを自社の環境に導入すると想定した際に浮かぶ質問
不安・・・製品・サービスを導入する際の障壁
言い訳・・・現状に固執する言い訳(めんどくささ、など)
これらの心情が浮かぶということは、ペルソナ自身の本音としては導入すること自体に対しては初期の段階より前進しているとも考えられる。ここで何と聞かれたいか、何をペルソナが聞けば一歩先の段階に進むことができるのかを考えたうえで説明文を作っていただきたい。
先に述べたように、ブース全体のコミュニケーションを構成するための台本なので、ブースを構成するコンテンツの各所に利用ができる。聞かれたいことに繋げる説明文ができれば、パネルのデザインやキャッチコピーなどにも反映することもできる。
おわりに
ここでまとめたことは、聞かれたい質問に対応したパネルの構成、来場者の視線に入る情報の順番、接客の基本的な方向性などに活かされる。このとき、対象がどんな感情になれば理想的なコミュニケーションが取れるのか、ペルソナの感情の変遷とペルソナに展示会後に取ってもらいたい行動・それを促す自社の行動をイメージする作業を行うことで精度を高めていく。(コンテンツマーケティングの世界で言うCTAと同じような考え方)
展示会では「ペルソナの感情」による影響度が他のマーケティング施策と比較して大きくなる。ペルソナの感情をどの方向に誘導し、そのためにどんな打ち手を用意するのか、より具体的な方策に踏み込んでいきたい。