展示会の強化書

展示会ブース出展の成果を劇的に向上させるための方法論をギュっと濃縮した強化書です。あなたのビジネスは展示会で大きく伸ばせる!

『新・展示会論』 オンライン展示会×オフライン展示会で、ウィズコロナ環境でも価値を生む。

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※この記事は私の個人noteにUPした記事を転載しています。

 

これまでのような展示会分析や展示会に対するアプローチを体系立てたものではなく妄想色の強い記事なのでコチラにUPすることを迷いました。しかし、少しでも「未来の展示会像」を考えるキッカケになればと思い、ここにも同じ記事を掲載します。

 

私の結論からお伝えします。

オンライン展示会とオフライン展示会を組み合わせればウィズコロナ環境でも展示会を開催することは可能だと考えています。

それどころか、今までの展示会にはない価値を作り出せるかもしれません。もっと風呂敷を広げると、日本のBtoBビジネスの常識すら覆してしまう可能性もあります。

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これは、ただの個人による妄想です。しかし、一度この妄想が実現した社会をイメージしてみてください。展示会という産業のあり方が、社会を形成するビジネス商流が、人々の「あり方」が、ここで再定義できるかもしれません。

 

 

記事をつくるに至った経緯

先日から考察していた「アフターコロナ」における展示会産業のあり方。正直、拡散力なんてまだまだない私の記事ですが、どこで見つけられたのか展示会産業のこれからを憂う方々から反応をいただき、意見交換もさせてもらいました。

同時に、いまもこの国はコロナ禍の真っ最中。緊急事態宣言が解除されたとは言え、現状はまだまだウィズコロナの状態にあります。しかし、産業は少しでも元の状態に戻ろうとしています。展示会産業もウィズコロナの状態を前提として、それでも展示会を開催する方策を模索しています。

 

ここ最近の多くの方との意見交換、そして展示会産業の動向。これらを組み合わせて考えてみたときに、展示会産業がこれからも価値を保ち続ける…いや、それどころか今までにない価値を生み出すためのアイデアが見えてきました。

以前から考えていた「意思決定のための展示会」と地続きになっているのですが、オンライン展示会とオフライン展示会を組み合わせることで、さらに意思決定の色を濃くすることができそうだと気付いたのです。

 

再定義が必要な展示会の「あり方」

BtoB企業のマーケティング活動全般がオンラインにシフトしている現状と、比例して今後起こるであろう「展示会の存在感低下」については過去の記事で触れています。

展示会が開催できない現状はもちろん、仮にコロナ禍が一定の収束をみせたとしても展示会の価値は元に戻りません。「見込み客の獲得」という目的においてはビフォーコロナの段階と比較しても選択肢が増えているからです。

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だから、展示会の位置づけをビジネスの「起こり」から「決定」にシフトすることが展示会の価値を高め、来場者・出展者に対しても新たな価値提供をできるのではないかと考えたのが前回の記事でした。

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ウィズコロナ環境では、展示会の新しい価値を打ち出す必要がある

いま、各都道府県の緊急事態宣言が解除に向かうなかで、徐々に展示会産業にも動きが出てきています。先に挙げたガイドラインの発表などはその一例でしょう。しかし、肝心なポイントに主催者はまだ目が向いていません。

ウィズコロナを前提とした開催に対して加わる各種の制限に対して「新たな価値」が提示できていないという現状です。いや、気付いているのかもしれません。まずは展示会そのものを開催するために、安全な運用方法の策定などに腐心してマンパワーが不足しているのかもしれません。

ですが、そのまま開催しても客足は戻らないでしょう。会場の収容人数に制約があるうえに、多くの制限がかかる。しかし、展示会という場から得られる価値は変わらない。そんな現状では、「わざわざ参加しない」という選択肢が選ばれてしまいます。

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そもそも、このコロナ禍によってビジネスのオンライン化を進めようとする動きは多くの企業で出てきています。だから、ビフォーコロナの状態と比較すると出展者も来場者も「選択肢」が増えている状態にあるのです。

そこで制限が多く、かといって新たな価値が提示されていない展示会が開催されても、出展意欲・来場意欲ともに落ち込んでしまう状態が想像できますよね。

特に、来場者側にその傾向が顕著に現れるでしょう。展示会に関わるプレイヤーは、既に2月の某総合展示会の惨憺たる有様を目にしているはずです。開催はできても来場者のいない展示会など地獄絵図です。

そんな状態で展示会を開催してしまうと、さらに展示会の価値が低下しオンラインへのシフトが顕著になってしまいます。だから、展示会の開催にあたっては「新たな価値」を提示する必要があると感じています。

しかし、相変わらず展示会産業は今までの価値観を引きずったまま展示会の再開を待ち望んでいるようです。特によく見かける主張は、「リアルにしか生み出せない価値がある」というものです。

展示会が開催できていない現状ではその価値は有効活用できていない。しかし、展示会が戻ってくればリアルにしかない価値が活用できる。そんな主張を実に多くのシーンで目にします。

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もちろん、「リアルにしかない価値」の存在は事実です。イベントという場がもつ空気の特殊性は他では代わりの効かないものです。余談ですが私の社会人生活はイベント制作会社から始まっています。だから、「リアルにしかない価値」も十二分に理解しています。

ですが、ですがです。理解しているのですが、展示会という場においてはその前提を一度疑ってみた方が良いとも感じているのです。

 

リアル展示会の価値として語られる「偶然の出会い」

「偶然の出会い」がある。これはよくリアル展示会の価値として語られるフレーズです。確かに展示会には「偶然の出会い」が存在します。ふらっと立ち寄ったブースのサービスが思いのほか自社の課題を射抜いていた、そんな体験談は山ほど聞くことができます。

しかし、ここで「そもそも論」から考えてみたいのですが、いったいなぜ「偶然の出会い」が展示会で発生するのでしょうか?

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その理由は二つ。「来場者が自身の本質的な課題を言語化できていない」ことと「出展者が自身の本質的な価値を言語化できていない」ためです。もし、この2つが適切に言語化できていたならば、展示会来訪前に「このブースには立ち寄ろう」とアタリをつけているはずです。

でも、そうはなっていない。言語化できていないから現地で気付くのです。偶然の出会いが起こるのです。特に来場者にとって展示会のホームページは非常に不親切な設計になっていることが多いため、この状況が輪をかけて進んでしまいます。

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この図の場合だと、間違いなく事前に気付くことはありません。フラっとブースに入り、よくよく話しをきいてみて初めて自分たちの課題に気付きます。どちらか片方の言語化だけでは足りません、来場者と出展者の双方が言語化できていることが望ましいのです。

だから、実は「偶然の出会い」が存在しない展示会を目指すことこそ、展示会主催者やプレイヤーの目指す状態だと考えています。

「偶然の出会いが起こらない」とは、事前に来場者も出展者も必要な言語化とリサーチを済ませることができているということです。偶然の出会いが起こる=事前に必要な情報を提供できていない、とも言ってしまえるでしょう。

商談目的だから、本当は商談をすべきなのです。「もしかして自分に関係あるかも?」と立ち寄ったものの、「まったく関係なかった」と落胆させてしまう体験が一体どれほどあるでしょうか。偶然の出会いとは成功例だけを取り上げています。

しかし、偶然の出会いには「箸にも棒にも掛からない出会い」が相当数あります。そのロスから目を背けて、偶然の出会いの価値部分だけを取り上げるのは展示会の価値を正しく評価できない姿勢ではないでしょうか。

だから私は、リアルの場のもつ価値を「偶然の出会い」に求めてはいけないと考えています。

BtoCの展示会ならまだしも、少なくともBtoBの展示会において「偶然の出会い」は発生しない方向に構築することが、来場者にとっても出展者にとっても良い場となる行動のはず。

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では、リアルの場の持つ価値は、どんな方向性で活かしていけばよいのでしょう?

 

日本のBtoBビジネスの商流そのものを変える

大それた見出しが現れました。

冒頭で前フリをしていましたが、いったい何を言い出すのだと思われたかもしれませんね。しかし、これはひょっとするとひょっとすると思っています。リアルの場の持つ価値を効果的に活用すれば、日本のBtoBビジネスの商流そのものすら変えることができるかもしれません。

さて、BtoBビジネスの最も大きな課題は何でしょう?

それは、意思決定の複雑さです。今さら分かり切ったことかもしれません。関与者が多いこと、理性的に判断される(と思われている)こと、案件化に時間がかかること。これらはBtoBビジネスの常識です。必然的にマーケティングも意思決定の複雑さを前提にして進化します。

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ですが、もしこの前提が崩れるとすればどうでしょう?

「関与者」が多くて意思決定に時間を要するのであれば、「関与者」を半ば強制的に集めてしまう場としてリアル展示会が有効活用できないでしょうか。

展示会とは買い手側も売り手側も、双方のプレイヤーが一同に集う場になります。人間同士のコミュニケーションに要していた意思決定の所要時間が、展示会という場なら一気に短縮できる可能性があります。

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そう、人がリアルで会う価値は「意思決定の高速化」にこそ有効なのです。

もし、展示会で意思決定する有効性が社会全体に広まれば「展示会で決める」というビジネス文化の形成すら目指せるかもしれません。むしろ、展示会産業がこれから目指すべきなのは、そこの文化づくりなのではないでしょうか。

これがBtoBビジネスの商流そのものを変える「意思決定のための展示会」です。

 

バーチャルとリアルを掛け合わせて価値を生む『新・展示会』

さて、意思決定のための展示会はどのように実現させていけばよいのでしょう。

既存の展示会を「意思決定に利用しましょう」と号令をかけても、間違いなく変化は起こりません。展示会の仕組み自体を大胆に、ダイナミックに変化させていくことが必要になります。

そこで有効活用できそうなのが、ここ最近少しずつ広まり始めている「オンライン展示会」です。

現在のオンライン展示会はオフラインの展示会が開催できないことによる代替措置です。だから、バーチャルであってもリアルであっても「見込み客の獲得」を目的にします。

しかし、オンライン展示会とオフライン展示会は異なる役割で活用することこそ、その価値を最大化できると感じています。オンラインとオフラインにはそれぞれに特徴があり、お互いに足りていない要素を補完しあうから価値の掛け算が発生するのです。

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この性質を見比べると、オンラインは長期間にわたるコミュニケーションに最適です。一方オフラインは短期間でのコミュニケーションに最適ですね。だからオフラインは「意思決定の場」として半ば強制的に関与者を集める場として活用できるのです。出展者にとっては「コンペの場」とも言える活用方法になります。

であれば、オンラインの役目は何になるでしょう。それは、オフライン展示会につながる「下準備」であり、意思決定につながる「出会い」です。

オンラインとオフラインの組み合わせは①オンライン展示会→②オフライン展示会という順番でなければ有効活用できません。少なくとも、オフラインを意思決定の展示会として活用するのであれば、間違いなくこの順番です。

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展示会はこれまで「見込み客獲得の場」でした。いわば「ビジネスの出会い」です。しかし、オンライン展示会とオフライン展示会を組み合わせれば、「展示会とはプロセスである」と編みなおすことができます。

オンライン展示会を「ビジネスの出会い」として活用し、オフライン展示会を「ビジネスの決定」として活用する。オンライン展示会は意思決定に至るプロセスをサポートできるようにする。

これは展示会をビジネスプロセスにおける「出会い」から「意思決定」までのコミュニケーションを行うプラットフォームとして再定義する作業とも言えます。

さあ、ここからは妄想が加速していきますよ・・・!

 

オンライン展示会はプレ商談に活用(自社の課題を見つめ、関与者との調整を進める)

オンライン展示会自体はどんどん増えています。しかし、その中には単なるカタログサイトになってしまっているモノもあります。

意思決定のオフライン展示会につながるプレ商談を行うことがオンライン展示会の目的ですので、当然ながら「コミュニケーションのあり方」を工夫しなければなりません。

オンライン展示会を構成する要素として、いくつか押さえておきたいポイントがあります。

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オンライン展示会をSNS的なコミュニケーションの場として活用するイメージを持っていただければ分かりやすいかもしれません。

プラットフォーム上で様々な質問を重ねることで、買い手側の課題の言語化と売り手側の価値の言語化を図ります。それだけでも格段にマッチングする確率が上がるはずです。

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ここからは「来場者」「出展者」「主催者」の各プレイヤー視点から、その価値を考えてみたいと思います。

 

〇来場者(買い手側の価値)

来場者(買い手側)にとって課題の優先順位設定と課題を解決できる出展者探しは、非常に難しいものになります。ここで先ほども出てきたBtoBの頻出話題、「買う人」「使う人」「決める人」の三者問題が出てきます。

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まず、来場者の課題だけで考えてみましょう。

組織としてはいくつかの課題と解決策の候補があります。仮に解決策が①グループウェアの導入、②MAの導入、③勤怠管理の導入だったとします。部門や組織ごとの予算配分があるのが通常でしょうが、仮にこの3つの導入をするための財布が共通であり限度もあるとすれば、優先順位はどのように付ければよいでしょう。

この時点でも、社内の関与者は導入する解決策によって異なります。すべての導入サービスを同じ関与者で比較・検討できれば話は早いのですが、実際は関連する部署・使う人によって関与者は変わってきます。

つまり、「買う人」「使う人」「決める人」の三者が課題によって変わってくる、変わってくるのに優先順位を決めないといけないという場合が出てくるということです。(当然、組織の財布の運用ルールによって異なりますので、複雑な構造にならない場合もありますが・・・)

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しかも、それぞれの課題に対応する製品・サービスを取り扱う出展企業も複数あるわけです。課題①については3社を比較したいけど、課題②については特定の会社一択かもしれません。そして、そのすべてにおいて導入効果と費用とのバランスを比較検討する必要があります。

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課題―解決策の関係性はシンプルな平面で表現できるものではなく、非常に立体的な構造をしています。ですが、事前にこのような構造を整理しておくだけでも優先順位の設定や関与者の調整がスムーズになるのではないでしょうか。

だから、来場企業(グループ)の主担当という役割が発生します。この来場者主担当が社内調整と出展者調整の中心的な役割を担います。意思決定の展示会を実践するならば、展示会は個人で来場するものではなく組織的に来場するものとなるのです。

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例えば、課題①を解決するための候補がA社とB社があるのだけど、実際に現場で活用する〇〇さん、それぞれの製品概要を見て聞きたいことある?といったコミュニケーションを図っていくイメージです。

あるいは、自社の課題を各出展者に対し提示して解決策を募ります。解決策の提示に対して社内の確認点を集約したり、WEB商談を実施するなどして、意思決定のオフライン展示会までに確認すべき点をつぶしていきます。そして、オフライン展示会でアポイントを取る出展者を決定するのです。

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〇出展者(売り手側の価値)

出展者は自社ページをオンライン展示会内に作成できるようにしておきます。これは今の展示会でも同様です。しかし、現在の展示会における出展者ページは一言で表現するとイケてないことも多いものです。

その原因の一つは、出展者が自ら言葉を考える必要があるためです。そう、出展者の発する言葉とは必ずしも来場者の聞きたいことと一致していないのです。実際の展示会場に行くとよくわかりますが、「ただ自分たちの伝えたいこと」を前面に押し出したがために、集客を逃す出展者の多いこと多いこと。

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意外と出展者自身も「自分たちの本質的な価値」を正しく言語化できていないものです。

だから、このプラットフォーム内では自社の価値を言語化するサポートができるとベストでしょう。製品・サービスの特徴を入力していくと、必然的に自社が提供すべき価値の言語化にたどり着く。そんな誘導ができると出展者にとっては価値あるものになります。

さらに、出展者は各来場者の提示する課題を閲覧できる状態にしておきます。

本質を言語化した自社の製品・サービスの持つ価値が相手の課題解決につながる場合には来場者に対してコンタクトを取り、プレ商談を実施します。その過程で担当者以外の関与者からの要望・質問に対応していき、最終的にはオフライン展示会でのアポを獲得することを目的にコミュニケーションを取ります。

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〇主催者の提供価値

出展者と来場者の価値あるマッチングを促進することが主催者の役割になります。例えば、来場者が提示した課題に対して2つの出展者がアプローチしている状況の場合、主催者側で「この出展者も、実はあなたの課題を解決できるよ」という+1社を新たに提案できることがプラスにはたらくはずです。

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通常の展示会であれば「出展者の公平性」みたいなモノが担保されていないと不平不満も噴出しそうですが、この展示会における価値の判断基準は「いかに取引につながるか」です。機会を提供して終わりではなく、取引に繋がる可能性の高さを基軸に主催者のスタンスを設定することが良いでしょう。

また、一般的な展示会は「出展者」に比重が偏ったビジネスになっています。出展料を中心に運営するビジネスモデルだから現状は致し方ないのかもしれませんが、「来場者が価値に感じる行動」に対する感度が鈍くなってしまいます。新・展示会は「来場者」を中心にした設計にすることが、結果的に出展者のためにもなるでしょう。

 

〇来場者・出展者を取引可能性でスコア化

同時に、オフライン展示会はウィズコロナの状態では「来場者数制限」が発生する可能性が高くなります。すべてのアポイントを受け入れては会場のキャパシティを超えてしまうかもしれません。だから、できる限り「取引につながる」可能性の高い来場者と出展者の関係性から優先的に会場の滞在時間を割り当てる必要があります。

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よって、来場者は取引意欲の高い企業・グループから優先的に会場滞在時間を割り当てます。来場者はプレ商談機能の活用状況、社内検討の活発性などで事前にある程度の取引意欲は測定できそうです。

また、オフライン展示会への来場が決裁権者と関与者による複数名での来場の場合は取引意欲が高いとも判断できそうです。単独での来場より意思決定にかかわる複数名で来場する方が、取引につながりそうだと見えますよね。

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出展者側は、来場者の課題設定に対して適切に応えているかという点からスコア化する必要がありそうです。スコアの高い出展者ほど、会場キャパシティのなかで割り当てられる商談時間が多くなるという形態が想像できます。

例えば、来場者側が課題を提示しているのに、十分にそれを閲覧せず不特定多数の来場者へコンタクトを取ろうとするような出展者はスコアが低くなるでしょう。

来場者の課題に適切に応え、商談の精度を高めることがこのプラットフォームの目的なので、その目的に沿わない行為は極力排除しておきたいところ。来場者の課題に真摯に応えようとする出展者が得をするシステムをつくると商談化率も高まるはずです。

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最終的に、来場者には会場キャパシティに応じた「展示会場の滞在可能時間」が割り当てられます。折衝していた出展者とのアポイントの振り分けはこの段階で自動化できると尚望ましいでしょう。

 

オフライン展示会は意思決定の試合会場(決戦は〇曜日) 

ここまでご覧いただけるとわかるとおり、この展示会には「偶然の出会い」が存在しません。事前に確定しているアポイントから意思決定のための商談を進めていきます。つまり、集客数は事前段階で確定しているのです。

集客数が確定しているということはウィズコロナ環境であっても展示会が開催できるということです。ガイドラインで定める集客数を上回らない範囲で、事前のオフライン展示会の段階で来場者の会場滞在時間と訪問人数を、主催者が設定しコントロールすることができるからです。

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〇「意思決定」をすすめるために工夫が必要な会場構成

ただし、会場構成は通常の展示会と同じイメージでは適切な運用ができないかもしれません。

来場者は単独で来るパターンよりも決裁に影響のある複数の関与者による数名で来訪します。意思決定を行うためにはじっくりと相談する必要もあるでしょう。

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ならば、「来場者の控室」や「相談スペース」、出展者が逆に来訪してくる「来場者ブース」や「プレゼンコーナー」が必要になるかもしれません。意思決定に近い来場者グループを優遇して来場者用スペースを割り当てるのもよいですね。

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出展者のブースはもしかすると広い小間は必要でなくなるかもしれません。現地でないと挙動を確認できない生産設備系の商材などはじっくり見てもらうスペースが必要でしょうが、基本的には商談用のスペースがあれば良いだけです。

大人数を一気に相手するプレゼンコーナーなども不要です。極論、華美な小間装飾は不要になるかもしれません。商談の邪魔をしない、快適な商談を行うための空気を作る程度の役割にとどまるかも。

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事前のオンライン展示会で下準備をして、本番のオフライン展示会で意思決定する。もしこのプロセスが一般化すれば、BtoBのビジネスは高速化します。半ば強制的に「展示会で意思決定する」という文化を形成していくわけです。

ビフォーコロナで展示会はどんどんニッチな分野に進む「専門展」が集客力もあり一般化されていきましたが、逆に「総合展」にも価値が出てきそうですね。

複数のテーマを自社内の意思決定構造に沿って検討を進めながら、展示会当日に意思決定を行う。例えば、マーケティングオートメーションと給与計算システムという普段なら同軸で比較検討しない商材を天秤にかけることができるようになるのです。

ビフォーコロナでは重要度が低下していた「地方自治体の総合展」の価値が高まるかもしれません。

これまでは「顔見せ」のニュアンスが強く本気で商談するつもりの出展者が少なくなっているのが地方自治体で開催される総合展の特徴でしたが、複数のテーマを長期のプロセスで検討することができるなら今までにない価値を地方自治体の総合展が作り出すこともできるでしょう。

 

来場者中心の展示会構造へ

従来の展示会は「出展者のための展示会」と言ってもよいものでした。来場者にとっては自分たちにヒットするサービスを探すことは難しく、だからこそ「ビジネスの起こり」にしか活用されてきませんでした。

前回の記事でも触れていますが、これは「出展者のカネ」で動くビジネスモデルに原因があります。だから、引き続き「出展者のカネ」で動かすモデルにしようとするならば、意思決定の展示会は適切に機能しないでしょう。同じ出展料を払っているのに主催者によって差をつけられるなんて出展者の立場なら納得できますか?

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来場者のためになるサービスを全力で構築しようとするならば、根本的に来場者からのカネで動かすビジネスモデルに変えなければ難しいのかもしれません。考えられる方法はオンライン・オフラインのどちらも入場料方式にするような運用形態でしょう。

入場料を払う時点で、必然的に「意思決定に対する意欲の高い来場者」であると言えるかもしれません。本気の来場者グループをスクリーニングする効果が現れれば、意思決定の展示会での案件化率も高まることでしょう。

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もちろん、100%来場者からの入場料だけでこのビジネスモデルを成立させることは難しいかもしれません。しかし、来場者のためのサービスは来場者のカネでなければ構築できません。今までどおり出展者からの出展料も確保しながら、来場者からの入場料をいただく選択肢を検討しておきたいですね。

 

これからの展示会を評価する価値基準 

ビフォーコロナの展示会は、その成功を測る判断基準が「集客数」に偏っていました。しかし、意思決定の展示会においては極論、集客数はどうでもよい情報です。それよりも、いかに「ビジネスの成立」に寄与したかを価値判断の基準にすると価値観が変わります。

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来場者数よりも案件化数や案件化額を評価する仕組みが望ましいですね。展示会による「契約誘発効果」など、展示会の本質的価値も今までより測定しやすくなるかもしれません。

主催者はこの「契約誘発効果」が高くなるように展示会を企画・構成していく。複数の主催者によって「契約誘発効果」を競い合うような産業構造になれば、きっと日本のビジネスは大きく変革するはずです。

もし、これを本気で実践するなら何から始めればよいでしょう。キーになるのはどうしても主催者だと思います。しかし、いきなり大規模展示会のあり方を変えることは主催者にとってもリスクが高いと判断されるので難しいでしょう。だから、絞ったテーマでスモールに試行し、実験を繰り返すことが最善でしょう。特にビジネスモデルを変えるにあたっては、出展者よりも来場者を先に集めるという従来とは真逆の発想が良いかもしれませんね。

 

おわりに

いかがでしたか?、終始ツッコミどころだらけだったかもしれません。懸念点や、成立していない考え方なども山ほどあるでしょう。

でも、一度想像してみてほしいのです。この妄想が実現したときに、日本のBtoBビジネスがどんな変化をしているかを。

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私が強く影響を受けた一冊です。

もちろん、このとおりに社会が変わるとは思っていません。あまりにも大それた構想であり、あまりにも大きな変革であるからです。でも、この妄想が誰かの手に届き、カタチを変え、進化すれば、もしかすると近しい未来がやってくるのかもしれないですよね。

オンラインの台頭でオフライン展示会の価値は相対的に低下することが目に見えています。だからといって、「展示会産業を救おう」という発想では展示会に関わる人々のためになる価値を提供できません。

視点は「次の時代に展示会ならどんな貢献をできるか」という思想です。その観点からこれまでの常識や先入観をいったんフラットに見渡してみると、妄想した展示会のあり方が見えてきたのです。

この妄想は、ある種の触媒でもあります。この触媒を起点にして、皆さんのなかに新しいアイデアが生まれれば、それはそれで嬉しいことです。

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ここにたどり着くにあたって、前回・前々回の記事をご覧いただいた方との意見交換が強い触媒になりました。最後にご紹介させていただきます。

ファッション・アパレル・雑貨などの分野に強いオンライン展示会「グランストラ」を展開されているイーストフィールズの東野さん。オンライン展示会の「あり方」「価値づくりの方法」は東野さんとの会話から想起されていきました。いま組み上げているプラットフォームが、多くのブランドとバイヤーをつなぐ起点になることを応援しています。

 

展示会出展者向けのコンサルティングを実施されている「展示会の学校」の森田さん、小代田さん。リアル展示会の価値を伝えながらバーチャル展示会のあり方を真っ先に探りはじめた方でもあります。

私が個人運営している「展示会の強化書」とは学校と強化書で相性が良さそうですね(笑)

展示会で成果を挙げるためのアドバイザリーを行うことのできる人は、圧倒的に足りていないと思います。だから一見、競合にも見えるのですが展示会の学校を応援しています。展示会の未来、これからも考えていきましょう。

 

そして、経済産業省のクールジャパン課の皆さん。似たような課題意識を抱えている方が行政にいらっしゃることを知り、展示会の未来に期待が持てました。

もし本当に「意思決定の展示会」を実現するなら、展示会主催者が「小さく実験する」ことからスタートするはずです。いきなり大きなチャレンジをすることは難しいでしょう。そんなときに、行政のサポートがあれば力強いかもしれません。

もうすでに何かしら検討されているかもしれませんが、研究会や支援の枠組みなどをこれから作り上げていただければ、産業に関わる一人として嬉しく思います。

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私たちは、まだまだ展示会が持っている価値を十二分に活用できていません。それは同時に、未来にはとてつもない可能性が広がっているという事実でもあります。

こんな未来になったらステキだなぁと、あり方を妄想し続けていきましょう。ぜひ、多くの方と対話をしていきたいと思っています。

 

冗長な妄想の垂れ流しにお付き合いいただき、ありがとうございました。

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