7%
これは、ある展示会でリサーチした来場者がブースに立ち寄る動機付けをデザインコミュニケーションに落とし込むことができている出展者の割合だ。
つまり、来場者を適切に集客できるブースをつくることができている展示会出展者は、多くのブースがひしめく会場のなかでも、たった7%しか存在しないということなのだ。(記事最下部にリサーチの詳細リンクを掲載)
展示会という産業は、まだまだそのポテンシャルを十二分に活用できていない。それが、私が日々感じている課題意識であり、プロジェクトの出発点。
展示会という場は、特にBtoBのフィールドで活動している企業にとって大きなマーケティングの機会である。これは周知の事実だろう。しかし、展示会という場を適切に活用できている出展者は会場全体の僅か7%だ。展示会という場が自社のビジネスを成長させてくれると期待して出展したものの、思ったような成果を上げられないと感じてはいないだろうか?
いや、数年前と比較すれば出展者と来場者を結び付けるような仕組みは飛躍的に向上している。例えば、事前アポイントのシステムは以前とは比べ物にならないぐらい活用されており、来場者と出展者が出会いやすい環境が整っているだろう。展示会の外に目を向けても、BtoBの調達を支援するようなシステムを開発するスタートアップの活動など、企業同士を結び付ける活動に類する分野は注目されている。
このような「仕組み」としての進歩は拡大してきているので、恩恵を受ける企業も多いだろう。だが、それはあくまでも「仕組み」であり、もっと根本的な部分が足りていないのではないだろうか。だから、7%という数値が展示会場で現実として現れてきてしまう。
マッチング以前のそもそも論になってしまう。自社の製品・サービス・組織の何が顧客にとっての価値なのか、正しく言語化できていない企業が多いのではないだろうか。言語化したことを、正しく伝えるための手段を確立できていない企業が多いのではないだろうか。
いま、世の中には「繋ぐための仕組み」が増えている。しかし、そのプラットフォームを最大限に活用するためには「繋がる側」が「何を繋げるべきなのか」を適切に理解しておく必要がある。つまり、企業が自社の持つ価値を正しくアウトプットする能力を獲得したときにこそ、最大限そのプラットフォームも有効に活用できるものなのではないだろうか。
それは、展示会の出展者「自身」が気付き、言語化しなければならない作業だ。
これを言語化する能力を持っているからこそ、自社の持つ能力を正しく顧客と共有しビジネスを前進させることができる。いま作り上げられている「仕組み」はきっとあなたがた自らが、自分たちの価値を正しく言語化できているからこそ、活用できる。
だから、私はこの7%という数値に戦慄を覚えた。多くの展示会をリサーチしているが、適切なアウトプットを行っている出展者が10%を超える展示会は少ない。展示会産業はこの状態でよいのだろうか。この課題意識が、私の出発点だ。
産業全体に目を向けてみよう。
日本国内では凡そ年間700以上の展示会が開催され、展示販売面積は年間で20万㎡を超えるという。しかし、展示会のポテンシャルを正しく活用できている出展者は圧倒的に少数派だ。
各出展者は、自社の価値を正しくアウトプットできていないが故に、本当は展示会場で出会えていたはずの顧客を逃している。その顧客と展示会場で出会うことができていたらビジネスが成立していたのに。
と、仮に出展者1㎡あたり100万円の売上を「正しいアウトプット」ができていなかったがために逃していたのだとすると、産業全体での損失は100万×20万㎡=2000億円にもなる。1㎡あたりのロスが500万だと仮定すると産業全体での損失は1兆円だ。展示会出展による契約誘発効果は定量的なリサーチが見当たらないため、アウトプットエラーによる機会損失の適正額をどの程度に設定すればよいのかという基準はない。これは荒唐無稽な数値だろうか、そうではないと感じている。
1㎡100万という数値は大した金額ではない。通常の展示会ブースの1小間を3m×3mの空間と考えると9㎡。つまり、100万×9㎡=900万を1小間あたり喪失しているという考え方だ。もちろん、商材やビジネスモデル、展示会規模によって大きく違うだろうが、これぐらいの成果はアウトプット次第で上げられないだろうか?、もっと成果を上げることができそうではないだろうか。現に1小間のブースでもアウトプットの手法を改善するだけで売上が10倍にも20倍にもなったという話はザラにある。
私は、展示会という場の持つポテンシャルに大きな可能性を感じている。
ここまでに挙げた「売上の獲得」だけに留まる影響力ではない。企業の持続可能性を高め、成長し続けるための源泉を生み出すポテンシャルがあると感じている。顧客志向経営の実践、デザイン経営へのトライ、究極のカスタマーインタビュー、展示会だからこそ実現できる価値は山ほどある。むしろ、展示会出展が企業活動の根幹になってしまってもよいとさえ考える。
しかし、実態は7%だ。
一見、産業として拡大しているようで、根本的なところに目が向いていないがために、場が持つポテンシャルを最大限発揮できていない。やきもきする、モヤモヤする、憤りと言ってもよい感情が、このプロジェクトの出発点だ。
「展示会出展したけれども、大して成果が上がらなかった」
こんな言葉は聞きたくない。必ず成果を上げることができる。
あなたのプロダクトが、サービスが悪いのではない。ただ、伝わっていないだけ、伝わるための方法論で展示会という場をデザインできていないだけ、それだけなのに「展示会は成果が上がらない」と言われてしまうことは悔しい。
「それなりに成果が上がっているよ」
そんなあなたも、展示会という場を最大限活用できているわけではない。あなたが展示会という場を正しく活用できたとき、「それなり」という言葉は「とんでもなく」という言葉に飛躍する。
だから、多くの方に展示会という場の価値を知ってほしい、展示会という場で成果を上げるための方法論を知ってほしい。この産業全体で、もっと「展示会という場が持つ価値を最大化する」ためのムーブメントが起こってほしい。
展示会出展者も展示会主催者も、装飾会社などのサプライヤーも、展示会に関わる全てのプレイヤーが、もっと産業全体の価値向上に目を向けてほしい。そんな想いがアウトプットの原動力だ。
このサイトでは、従来は体系化されていなかった展示会で成果を上げるための方法論を様々な角度から考察している。デザインは?、メッセージは?、コミュニケーションは?、運営は?、多くの展示会プレイヤーにとっての疑問の解消につながるような情報を発信することに努めている。
BtoBの取引額はBtoCの20倍、また、中小企業に属する従事者の数は就労人口の約7割だと言われている。そんなBtoBの企業、あるいは中小企業にとって大きな価値を生み出すのが展示会という場だ。展示会という場をもっと価値あるものにする。これが実現できたとき、この国に住む多くの人が幸せになる。そこに繋がっていくインパクトのある場が展示会だと捉えている。
たった一人の個人プロジェクトからスタートしている。しかし、この活動が少しでも多くの人の目に留まり、あなたと展示会との関りを変えるきっかけになってくれれば、そう願ってやまない。
■まず初めに読んでいただきたい記事
■参考記事:7%の根拠についてのリサーチ
■参考記事:展示会出展の価値について