展示会の強化書

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展示会の競合分析【顧客の課題を起点にすると競合は変わる】

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展示会に出展していると競合他社の動向は気になるもの。

 

「あの会社、こんな展示していた!」なんて会話がブースで繰り広げられたり、ご丁寧に企画の段階から「競合はこんなブースを例年作ってくるから、ウチの戦略は・・・」なんて考えることもあるのだが・・・顧客の課題を起点にすると、このような競合他社の動向を気にすることは、特に意味がないことが多い

 

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実は、顧客の課題を起点にすると、競合他社の定義そのものが変わってきくる。もしかすると、あなたが気にすべきなのは同一の商材を製造しているA社ではなく、一見まったく畑違いに思えるB社なのかもしれない・・・

 

さて、展示会においてはどのように競合他社の動向を分析してブース計画に活かしていけばよいのだろうか。展示会の競合分析を掘り下げて考えてみよう。

 

 

 

顧客の状態・段階で競合が変化する

 

例えばあなたの会社がベアリングを製造・販売しているメーカーだとしてみよう。あなたの会社のベアリングはコストメリットに優れ、他社と同じような品質でありながらも低価格で供給できることをウリにしている。

 

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さて、よく展示会でみられる「競合を意識した」PR方法だと、どんなアウトプットになるだろう。低価格ではありながらも他社製品との技術的な違いがないということを強調するために、自社の技術力・製品を生み出す背景などを提示し、他社製品と比べても品質に問題がないこと、そのうえで価格は低コストであることを謳おうとすることが常道だ。

 

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その差別化ポイントは顧客の現時点の課題に答えているのか

 

しかし、このPR方法には課題がある。このような伝え方は「顧客がベアリングを探している」段階でないと伝わらないという点だ仮に顧客が、もっと漠然とした「コストダウンを図りたい」という課題意識を持っている場合、このPR方法ではピンとこない。

 

なぜなら、このように漫然とした課題を持つ顧客にとってコストダウンの選択肢とは、①ベアリングをA社にする、B社にするという原材料費の削減という選択肢の他に、②業務システムにRPA(ロボット・プロセス・オートメーション)を導入して人件費を削減するという選択肢や、③工場インフラを見直して水道光熱費・電気代を削減しようという選択肢もあり得るから。

 

どれも、顧客のコストダウンに寄与するなら顧客にとってはどの選択肢を採用しても良いはずだ。幾つかあるベアリングを製造している会社からどこにしようか選ぶのではなく、そもそもベアリングにするのか他の選択肢にするのか、その前段階で迷っている場合を想定したことはあるだろうか。

 

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どうしても競合他社を意識してしまうと、自社のプロダクトと他社のプロダクトの比較というプロダクト比較の文脈でプロモーションを作り上げてしまう。これは軸受なのに軸がズレていると言える!?・・・

 

しかし、顧客の段階や状態によってはプロダクト比較の文脈は「まだ早い情報」であるケースがある。顧客が「今知りたい情報」はそもそも、ベアリングを変えるのがよいのか、RPAを導入するのがよいのか、工場のインフラを見直すのがよいのかという選択肢の判断材料だ。

 

担当レベルなら自社商材に関連する領域だけで製品を探しているかもしれない。しかし、ポジションが高くなれば高くなるほど、決裁権を持てば持つほど、一製品・一セクションのモノを探すのではなく組織の課題に対するソリューションを探そうと見る領域が広がることは想像に難くないだろう。

 

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だから、例えばこの顧客に対するメッセージの作り方としては「コストダウンを図りたいならウチの〇〇が最適です。なぜならば△△だからです」という顧客の課題に沿った提示方法が必要となる。

 

一見、これまでと同じような伝え方のように感じるかもしれないが、顧客の課題に対する検討の進捗状況がどの段階にあるのかを想定すると、最終的なメッセージのあり方はまったく変わるはず。少なくともプロダクトの比較という文脈でのメッセージにはならないだろう。

 

つまり、「顧客の段階」に応じて自社の競合は似た商材を取り扱うベアリングメーカーだけではなく、RPAを提供するシステム開発会社や工場インフラを整える設備会社も競合になり得るということだ。そして、競合が変わるということは、顧客に対するメッセージの打ち出し方・意識するポイントも変わってくるということだ。

 

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最近の大規模展示会の傾向も来場者の漠然とした課題解決をサポートしている

ここ最近の大規模展示会の傾向として複合的なテーマの展示会を同時開催し、一つの展示会で来場者登録をすれば他の展示会にも入場できるという運用方法が主流になっている。

 

代表的な展示会である日本ものづくりワールドでも、構成展示会は以下のとおり多岐にわたる。これが同日・同会場で開催されている。

 

  1. 機械要素技術展
  2. 設計・製造ソリューション展
  3. 3D&バーチャルリアリティ展
  4. ものづくりAI/IoT展
  5. 次世代3Dプリンタ展
  6. 航空・宇宙機器開発展
  7. 工場設備・備品展

 

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一見、それぞれの展示会の来場者層は被らないんのではないだろうか?と考える方もいるだろうが、それは自社プロダクトを中心に考えてしまっているがために受ける印象だ

 

漠然とした課題を抱える来場者にとって複合的な分野にわたる展示会同時に見て回ることができるということは、自社の課題に対する解決策を様々な視点から検討できる、あるいは今まで気づいてなかったソリューションとの出会いを演出できるといった利点がある。

 

つまり、複合的なテーマで開催される総合展示会は来場者にとっては理に適った構成になっているのだ。展示会の構成自体が、以前よりもさらに課題解決型に向かっている証拠とも言えるかもしれない。

 

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ベアリングの例で挙げれば、自社のベアリングは機械要素技術展で見てもらえるだろう。RPAは設計・製造ソリューション展で取り扱われているかもしれない。設備・インフラは工場設備・備品展の出展者から情報を拾い上げることができる。このように複合的な展示会テーマで開催することによって、漠然とした「来場者の課題」に複合的な角度から解決策を提供している。

 

逆に、直球でベアリングを探しいているような来場者を狙いたい、という目標を定めたとしよう。しかし、そこまで検討が進んでいるような顧客が展示会に来場する理由は何だろう。そこまで検討が進んでいる顧客であればある程度の資料やサンプルは既に取り寄せていて、展示会場への来場目的は最終チェックか、あるいはもっと安い仕入れ先が見つからないかという期待かもしない。さて、この顧客は長期的な関係を築くことのできる顧客だろうか

 

このように競合を再定義する際に、もう一点押さえておきたい視点がある。それは、あなたが「どんな顧客」を獲得したいのかという点だ。

 

<いますぐ客>の定義を誤ると、望ましくない売上が増える

 

展示会で獲得するリードの分類方法で一般的な手法の一つに、獲得した名刺を「いますぐ客」「これから客」「まだまだ客」に分類してその後のマーケティング活動に活かすというものがある。

 

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「いますぐ客」には即座の営業によるフォロー訪問など、「これから客」には受注に近づきやすくなる自社セミナーの案内、「まだまだ客」には顧客の興味を徐々に育成するべくメルマガ展開といったかたちで、顧客の層を分類したうえで、その後のマーケティング活動も顧客の状況に合わせて実行するといったものだ。実際に実行している出展者の方も多いだろう。

 

しかし、ここで質問したいのだが、何を判断基準にしてその名刺が「いますぐ客」であると分類しているのだろう?、収集した名刺を「いますぐ客」「これから客」「まだまだ客」に分類した基準は何?

 

この分類基準の設定を誤ってしまうと、望ましくない売上が増えてしまう。

 

望ましくない売上とは何だろう。売上に良いも悪いもないんじゃないのか・・・?という考え方もあるかもしれない。が、私は良い売上・悪い売上を以下のように定義している。顧客ロイヤルティ戦略を語るときに「良い売上」「悪い売上」はより詳細に説明されていることがある。興味があれば調べていただきたい。

 

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 例えば、ものづくり系の企業が展示会出展したときに出会いたい顧客の担当者を聞くと、調達担当ではなく開発担当であるという声はよく聞く。曰く、調達担当だとどうしても価格の話題が中心になってしまって自社技術が評価されない、反対に開発担当であれば価格よりも自社技術を適切に評価してくれる、と。

 

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あなたの会社は「何を」評価してもらえば健全な売上を上げ続けることができるのだろう。どんな顧客があなたの会社に健全な売上をもたらし続けてくれるのだろう。私は、出来る限り価格競争は避け、適切に自社技術を評価してくれる顧客との関係性を築こうとすることが、企業の持続的な成長には必要不可欠だと考えている。

 

良い売上とは自社の技術を適切に評価してくれる顧客から得られる売上、悪い売上とは自社技術や特徴は置いておいて価格競争のなかから生まれる売上とも言える。そして、展示会という場は良い売上をもたらしてくれる良い顧客との出会いを、狙って演出できる唯一と言ってもよいマーケティングコミュニケーションの場なのだ。

 

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さて、ここでもう一度「いますぐ客」「これから客」「まだまだ客」の定義に戻ろう。あなたが定義した「いますぐ客」は、果たしてあなたに「健全な売上をもたらし続けてくれる顧客」だろうか?

もし悪い売上に繋がってしまいかねない顧客なのであれば、「いますぐ客」と分類する定義を見直すことをオススメする。

 

「悪い売上」が「いますぐ客」に分類される危険性

 

例えば、ある来場者からブースの接客で具体的な見積を要求された。それ自体は良いこかもしれない。さあ、案件化が近いだろうから、この顧客は「いますぐ客」と分類しようか。しかし、よくよくその顧客を見てみると顧客組織のなかの調達担当で、いろんなブースを回っては見積の依頼をかけているようだった、しかも自社技術の紹介自体には余り興味を示さずにとにかく早く見積がほしいという要求だった・・・さて、この顧客とは健全な関係性を築いていけそうだろうか、なんだか価格競争にこのあと巻き込まれそうなニオイがプンプン漂ってくる。

 

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「いますぐ」という言葉に引っ張られると、「いますぐに売上」という連想ゲームになってしまうキライがあると感じている。どうしても目の前に見えている案件化、現金の誘惑には抗いがたいものがあるからか・・・

 

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「いますぐ客」という言葉そのものに問題があるとも感じている。「いますぐ客」とは「いますぐ〇〇〇な客」という〇〇〇が省略された言葉なのだが、本来言わんとしている正しい受け取り方と「いますぐ客」というフレーズをパっと聞いた言葉の響きから感じる印象が異なってしまう。

 

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案件化、つまるところの現金化。重要な顧客だろうが何だろうが、最終的には取引を目指し現金化に繫げていくんだから同じでは?と思われるかもしれないが、案件化という視点の場合は初回取引に目線が偏ってしまう

 

顧客がその生涯で自社にもたらしてくれる利益の総額であるLTV(ライフ・タイム・バリュー)という指標的な視点ではない。当然、LTVが高くなりそうな顧客という視点でリードを分類した方が持続的な成長に繋がるだろう。

 

上述のような価格競争に巻き込んできそうな調達担当が全くダメというわけではない。自社の技術を適切に理解してもらい、適正価格での取引ができれば問題ないだけだから。ただ、このような顧客を「いますぐ客」に分類してしまうようなリードの定義方法になっていないかという点を注意するだけだ。

 

「いますぐ客」の分類が「直近の案件化」に偏った視点だと、本来あなたにとって重要なはずの「長期に渡る関係性を構築し得る顧客」の優先度が下がっているという状況すら考えられる。「いますぐ客の定義方法」と「自社の持続的成長にとって望ましい顧客像」が一致しているかどうか、いま一度見直してみよう。

 

顧客像・段階の定義方法

顧客像を具体的に定義していくための方法として、顧客、顧客が所属する組織、顧客に関与する人物のペルソナを設定することをオススメしている。ペルソナとはマーケティングの手法の一つ、ターゲットから掘り下げた詳細な仮説に基づく個人像だ。

 

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BtoBのビジネスでもペルソナを設定することは有効だがコツがある。展示会においても例外ではなくペルソナを設定したブースコミュニケーションは有効ですので、ぜひ試してみていただきたい。この記事の最後に「展示会のペルソナ設定」の紹介ページへのリンクを用意している。

 

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ペルソナを掘り下げる際に、顧客が感じている課題をイメージすると同時に、顧客が「何を」採用する立場にある人なのかということについても考えておくとよいだろう。例えば、原材料の仕入れについては決裁権を持っているが、工場インフラについては決裁権を持っていない。社業全般について決裁権は持っていないが影響力を持っている、など様々なケースが想定できそうだ。

 

こう聞くと、大体の場合が「決裁権者に出会いたい」という答えになってしまう。これは当然の想いだろうが、決裁権者に出会いたいのはどのブースも同じだ、つまりとても倍率が高い。また、日本の展示会は欧米に比べて未だに商談よりも情報収集の要素が強いという事実もあります。

 

さて、あなたが出展する展示会でどんな立場にある人と出会おうと試みることが、出展成果を最大化するのだろう。これは総量と質のバランスから仮説を立てて実行に移し検証をし続けるしか方法はない。

 

仮説を立てることがブースの企画を一貫性あるものにしてくれる。そして、一度立てた仮説に基づいて実行すれば、それはあとから検証ができるという強い財産になる。その繰り返しが出展成果の最大化に繋がる最短距離だ。

 

展示会の競合分析

 

さて、顧客の課題や状態によって競合他社が変わるということは感じてもらえただろうか。ここからようやく<分析>に入っていく。この時点ではまだどんな会社が展示会場で自社の競合になるのかまでは分からない。しかし、顧客の課題・状態は定義できているはずなので、順番に沿って参考になる情報を拾い上げていこう。

 

出展者リストから洗い出し

まず、本年度の出展者リストが既に公開されている場合はそのまま、公開されていない場合には前年度の出展者リストから自社と同じ顧客の課題解決に繋がりそうなサービスを展開している企業を探す。

 

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幸い、最近の展示会ホームページにある出展者リストは課題に対するソリューションが見つけやすいように出来ているため、そこまで時間はかからないだろう。この作業は自分自身が顧客に「なりきる」「埋没する」というプロセスを経ないと適切に見つけることができない。ペルソナの設定などを活用して顧客の思考をトレースするように努めていただきたい。

  

競合各社が「どう言語化しているか」を押さえていく

顧客課題の解決につながる製品・サービスを提供している企業の一覧をつくることができたら、各社のホームページや前年度の出展写真などを調べ、顧客の課題に対する解決策として、どのように言語化しているかをチェックしよう。

 

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これは「顧客が競合のアウトプットを見たときにどのような印象を感じるか」というチェックのみでよい。競合各社の製品の全体像や詳細などまで理解する必要はない。そのとき感じた印象をメモしておき、自社ブースでは競合他社よりも「強い動機付け」を行うことができているかという観点で競合分析を活用すればよいのだ。

 

結局、わかりやすく言葉にできている企業は強い。一瞬で展示ブースを来場者が通過するなかで、顧客が足を止める理由を言語化できているか、それは競合各社と比べても一際強い理由付けになっているか、そんな視点でチェックしていただきたい。

 

また、もし今が展示会の本番中で来年もその展示会に出展予定なら、このような視点で展示会場を歩いてみて、直接実地で競合分析すると、より精度の高いものになるだろう。

 

競合分析の落とし穴

しかし、このような展示会の競合分析とは「現時点から過去に対して分析をかけるもの」でしかない。出展者リストやホームページ、あるいは展示会本番の分析も過去に対するものだ。そして、コミュニケーションの方策というものは「僅かな気付き」一つで変えることができてしまうもの。あまりにも鵜吞みにするのは危険なので、競合の分析に時間を費やすよりは顧客像を具体化させていく作業に時間をかけた設計をすることが無難だろう。

 

おわりに

 

いかがだっただろうか。展示会において競合とは自社と同じ商材を扱う企業だけではないかもしれない、それは顧客の課題と状態によって異なるということだ。そして、その顧客像はどんな顧客と出会いたいかという設定をによって変化するのだ。

 

すべては自分たちの設定次第、だからこそ丁寧に考えることでブース内のコミュニケーションを「相応しいもの」として構築することができる。効果的な競合分析を行い展示会ブースのメッセージが来場者に最大限伝わるように検討を進めていただきたい。

 

■参考記事

展示会のペルソナ設定

 

もし、検討プロセスに迷ったなら展示会アドバイザーの依頼を一つの選択肢として検討していただきたい。出展者と装飾会社だけの関係性で企画を進めるのではなく、新たな視点からアプローチすることで展示会ブースの企画をより精度の高いものに導くことができるだろう。

 

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