展示会の強化書

展示会ブース出展の成果を劇的に向上させるための方法論をギュっと濃縮した強化書です。あなたのビジネスは展示会で大きく伸ばせる!

【展示会視察】ものづくりワールド2019から見えたコミュニケーションの傾向と対策

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関西ものづくりワールド2019が10月初旬に開催された。機械要素技術展、工場設備・備品展、設計・製造ソリューション展、ものづくりAI/IoT展、次世代3Dプリンタ展から成る、ものづくり系の総合展示会。総来場者数約4万名、出展者数約1400社と西日本最大規模のモノづくり系展示会。多くの来場者が集まるなかで自社ブースに目を留めてもらうという競争は熾烈を極めていたはずだ。あなたのブースは効果的な集客ができただろうか。

 

私は、展示会で成果を上げるためには課題解決型のアプローチを実践することが最良というスタンスに立っている。そこで今回は、西日本最大級の製造業系の展示会である本展で、実際に課題解決型を実践できているブースとは会場全体のどの程度の数なのか、そして「課題解決型」と一口に表現するが、実際にどのようなアプローチの特徴があるのか、これらを改めて整理するため・実態を把握するために、会場をリサーチしたのでレポートしたい。

 

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リサーチから見える「来場者基点」メッセージの少なさ

 

私はよく展示会場をリサーチする。目的はここでの情報発信をとおして、多くの出展者の方に成果を上げてもらうためだ。

 

そもそも、多くの出展者が展示会という場が持つポテンシャルを十二分に活用できていない。そのような状況が余りにも勿体なく、我慢ならない。私は展示会という場は今よりももっと企業の持続的成長の源泉に、企業活動の基幹的な位置づけとして活用できると考えている。だから、もっと今よりも皆さんに展示会の効果的な活用方法を知ってもらいたいのだ。

 

前置きが長くなったが、今回のリサーチは多くの展示会出展者にとっての示唆が含まれていると感じる。自分たちのブース計画に活かしてほしい。

 

■リサーチ方法

歩行している来場者が一瞬で視認できる情報として各ブースが何を打ち出しているかを目視によりリサーチ。この情報を「第一印象情報」とここでは名付ける。

 

■リサーチの意図

  • 来場者がブースに立ち寄る「動機付け」を提示できているかどうかを知る
  • 課題解決型のアプローチを来場者とのファーストコンタクトから実践しているかを知る

 

■リサーチ数

463ブースをリサーチ(会場全体のブース数:690ブース)

※会場全体のブース数は小間図からチェック

※自治体等による共同出展ブース、パビリオン系ブースは含まない。

 

リサーチできたのは会場全体の約67%。一定の信憑性はあるだろう数値になるようリサーチした。会場全体のブース数を690としているが、ここに自治体等の共同出展ブースや海外パビリオン系のブースは含んでいない。そのため「出展者数」ではないことに留意いただきたい。

 

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リサーチ結果:出展者コミュニケーションの傾向

 

ブースで打ち出している第一印象情報は大きく分けて3つに分類できた。

 

  • 【社名】 106件 約23%
  • 【商材・サービス・事業の名称または領域】 130件 約28%
  • 【キャッチコピー】 227件 約49%

 

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もしあなたが、本年度のものづくりワールド出展者だったなら、来場者から見て「最初に目に入る情報」は何だっただろうか?、と考えてみよう。

 

社名を第一印象情報として掲出している出展者

 

【社名のみ】 106件 約23%

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社名とはそのまま出展者名である。リサーチしたブースのうち、実に23%ものブースが社名と展示製品以外に集客のためのコンテンツを持たない。これには驚いた。集客を余りにも展示物に頼りすぎである。

 

 このような出展者はプロダクトで一定の集客が出来ているのだから問題ない、という考え方であることが多いだろう。しかし、製品が提供する価値を第一印象情報として提示しておかない場合大きく2つの問題が起こり得る。

 

■展示製品に集客を頼ってしまうときの課題 

  • 課題が顕在化していない来場者がブースをスルーしてしまう。
  • 無駄な集客が増えることにより、高ランクだったはずの来場者を接客できない。

 

課題が顕在化していないとは、何も「まだまだ客」を指す言葉ではない。顕在化した場合、一気に受注まで進むような「潜在的いますぐ客」も含まれている。しかし、製品だけによる集客は、このような来場者には届かない。

 

また、集客はとにかく多ければよいというものでもない。リードとして獲得することを前提に考えると自社の接客リソースを上回る集客は望ましくない。そして、その接客リソースのなかの高ランク顧客数の比率を高めることが、成果に繋げる近道だ。

 

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商材・サービス・事業の名称または領域を掲出している出展者

 

【商材・サービス・事業の名称または領域】

130件 約28%

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例えば自社の製品名、または製品のカテゴライズといった情報だけが掲示されているブースだ。〇〇工法、△△検査、□□メーカーという表現であればここに該当する。これも調査したうち28%を占めるという驚きの数値となった。多過ぎる、という驚きだ。

 

これらの情報は来場者に対して「自分に関係があるかも」ぐらいの認識は持たせることができるが、それが「立ち寄る動機」になるかというと影響力が弱い。なぜなら、その製品・サービスの価値についてはまったく伝わっていないからだ。仮に、「関係あるかも」ぐらいの気持ちでブースに立ち入ってくれた来場者がいたとしても、展示物の詳細を見て「実際には関係なかった」とガッカリして帰ることも多い。

 

あなたのブースが商材・サービス・事業の名称または領域だけを掲示している状態で「来場者は立ち寄ってはくれるものの早々に立ち去ってしまうという人が多い」という場合、最初に価値が最初に伝わっていないから、関係ない人が集まってしまい、関係ある人がブースをスルーしてしまう、そんなチグハグな集客になってしまっているのだと考えよう

 

キャッチコピーを掲出している出展者

 

【キャッチコピー】 227件 約49%

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このように社名だけ、または商材・サービスのカテゴライズだけを掲示するだけでは、来場者に対するアプローチ力が弱い。よって、展示会においては来場者の行動を促すキャッチコピーの掲出が重要になる

 

www.tenjikaibooth.net

 

しかし、ただ単にキャッチコピーを掲示すれば来場者がやってきてくれるわけではない。大きく分けてキャッチコピーには企業コピーや事業に対する姿勢などを伝える「イメージコピー」と顧客の行動を直接的に促す「セールスコピー」の2種類がある。今回のリサーチでは以下の内訳となった。

 

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イメージコピーを第一印象情報として掲出しても来場者の行動を促さない

 

今回のリサーチでイメージコピーを第一印象情報として掲出していたブースは53件で全体の約11%にものぼった。しかし、イメージコピーでは顧客の行動を促す動機付けとしては機能しない。だから、第一印象情報として掲出することに意味はないのだ。

 

誤解なきよう補足しておくが、イメージコピーが一切不要だと言っているわけではない。企業姿勢などを展示会ブースの体験のなかで伝えていくことはもちろん大切なのだが、これらは顧客にとって「根拠」や「後押し」となる情報だ。自分たちの課題を解決してくれるといっている企業が信頼に足るかどうかを考えるときに企業姿勢などを判断材料の一つにする。だから、展示会では最初に提示しても意味がないのだ。提示するなら最後の方だ。ブースの外に掲示するのではなく、ブースの中や配布資料のなかで見せていくという方法が中心になるだろう

 

セールスコピーが来場者の行動を促す

 

よって、第一印象情報として掲出するのは顧客の行動を促す「セールスコピー」が望ましい。これを第一印象情報として掲出しているブースは全体の約38%だった。

 

これも誤解がありそうなので補足しておく、例えば商材名が第一印象情報として掲出するとカウントしたブースでも、よくよくブースを見るとセールスコピーに準ずる言葉を掲出しているような場合はあるが、ブース内にセールスコピーがあるかどうかではなく、第一印象情報としてセールスコピーが目に入ってくるかどうか、というポイントから判別している。

 

第一印象でなければ、来場者はあっという間にブース前を通過してしまう。来場者がブース前で足を留めなければ目に入ってこない情報など、集客に寄与する影響は少ないのだ。

 

本来的には全ブースがセールスコピーを掲出しておくべきだろうとも感じるが、全体の4割にも満たないブースしかセールスコピーを掲出していなかった。逆に考えると、残り6割のブースの出展者だった方はセールスコピーに切り替えるだけでも集客を増やすことができる可能性があるということだ。

 

セールスコピーを掲出している出展者間でも集客に差が出来る

 

ここまでが、最初に会場を一周した段階でざっと分類したリサーチだ。私の仮説ではセールスコピーを掲出している企業のブースが一定の成果を上げているはずだという事前の考えを基に会場をまわってみた。

 

一定の部分で、やはりセールスコピーを掲出しているブースの方が集客できているように見えた。が、どうも様子がおかしい。セールスコピーを掲出しているブースごとでも、その言葉の練り込み具合や伝わり方の精度には違いがある。だから、同じようなセールスコピーを掲出しているブース同士でも、表現の違いで集客に差が出来てしまっている

 

また、一見、課題解決型のアプローチを採っているように見えて、まったく課題解決型として成立していないメッセージになっているブースも多く見られた。このようなブースは集客があまり出来ていたように見受けられない。

 

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この違いは何なのだろうか、と私は再度会場内を全部リサーチしてまわることにした。今度はセールスコピーを掲出している企業のブースだけを、さらに何か違う特徴がないかという点を探ろうとした。予定外の二周目である。

 

課題解決型アプローチに成功しているメッセージとは

 

セールスコピーを掲出している企業のブースだけをよくよく観察していると、メッセージの打ち出し方に以下の2つの軸が存在することに気が付いた。

 

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■そのメッセージの主体は誰か( 自分またはプロダクト or 顧客 )

 

例えば、「私たちが〇〇します」「〇〇に自信」「〇〇なら△△(自社)へ」といった表現は自分またはプロダクトに主体がある。プロダクトアウト的な表現と言ってもよいだろう。対して、顧客に主体がある表現の場合は、「〇〇になれる」「△△ができる」「□□したい」といったものが代表例だ。その製品・サービスを活用するとき、顧客に何が起こるのかをイメージするとこの表現に繋がりやすい。

 

もちろん、顧客に主体がある表現の方が自分事になりやすく、顧客に刺さる表現だ。

 

■そのメッセージのイメージさせる結論は何か( 顧客にとっての手段 or 顧客にとっての目的 )

 

その製品・サービスのもたらす効果が顧客にとっての手段で留まっている表現と、顧客にとっての目的に辿り着いているだろうと想定できる表現に分けることができた。

 

例えばIoT関連のブースではよく「見える化」がキーワードとして語られているが、来場者にとって「見える化」そのものは手段であって目的ではない。「見える化」の先に実現したい目的があるはずで、そこまで触れることができているメッセージは来場者の行動を誘発しやすい。(「見える化)そのものが目的の来場者も中にはいるが、そのような来場者は「見える化」に繋がりそうな製品・サービスを探して来いと会社で指示されているだけの来場者である可能性が高い。)

 

そして、課題解決型のアプローチが正しく機能しているメッセージとは、主体が顧客にあり結論が目的にあるブースだった。

 

主体と結論の二軸から見る、課題解決型のアプローチ

 

主体と結論を二軸にして分類したときに、セールスコピーを掲示している出展者のなかでの構成は以下の図のようになった。

 

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セールスコピーであるからには、どうしても自社の製品基点でモノゴトを考えてしまいがちである。そのため、【出展者-手段】型の分類が最も多く105件を数えた。社名を掲示しているだけの出展者に比べればマッチングの精度は高まるだろうが、やはりこれでは来場者の行動を誘発するには足りない。

 

対して、最も課題解決型のアプローチに近く、来場者の行動を促すであろう表現である【来場者-目的】型の表現ができているブースは31件だった。リサーチした総数が463件に対してこの数値だ。なんと僅かに7%

 

リサーチに確証バイアスのようなものが働いている要素もあるだろうが、それでもこの数値は低い。私が常々感じている「展示会の持つポテンシャルを多くの出展者は十二分に活用できていない」という仮説を数値が現している

 

しかし、あなたがこの7%に入るコミュニケーションを実現していたとしたら、いかに来場者を容易に集客できるかは想像に難くないだろう。なんせ、会場のほとんどのブースは来場者の方向を向いていない、来場者の目指す目的に触れていない、そんな情報ばかりで溢れている。そんな「求めていない情報の波」のなかにキラリと光るあなたのブースの情報、それは来場者が求めている、来場者の目的に導くメッセージなのだ・・・間違いなく、あなたが来場者ならブースに足を踏み入れはしないだろうか?

 

ちょっと乱暴に例えてみる。

 

あなたは独身で、いま婚活パーティーの場に来ているとしよう。このパーティーの場であなたは唐突にモテモテになってしまう。しかし、一人一人の相手と話す時間はほとんど与えられない、それぞれに与えられたPRタイムは僅かに5秒という状況で、目の前に現れる人が次々と「私は〇〇な人間です!」「スゴイんだよ!」「イイでしょ!」というフレーズを連呼してくる・・・

 

いい加減、そんな自己アピールの奔流に辟易しているところへ、颯爽と他の有象無象たちとは違う言葉をかけてくれる人が現れるのだ。どこで自分のことを知ったのだろうか、「あなたを〇〇します」と自分がしてほしいことを、自分の気持ちを理解してくれるようなフレーズをつぶやくのだ・・・コロっと行ってしまわないだろうか。(男性でも女性でも、あなたの性別に応じて想像してみてほしい。)

 

ほとんどのブースが自分主体のメッセージ発信だ。ほとんどのブースのメッセージが来場者の目的にまでは辿り着いていないそんな状況で、【来場者主体】かつ【目的】にまで辿り着いているメッセージを見てしまったら・・・それはもう、ブースに立ち寄るしかないだろう。

 

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今回のリサーチ中に、このコミュニケーションを非常にうまく構築しているブースがあったので、お話しを伺った。ぜひブースづくりの参考にしていただきたい。

www.tenjikaibooth.net

 

来場者に対する効果的なコミュニケーションの軸とは

 

いまの展示会場は、来場者がブースに立ち寄るか・立ち寄らないかの判断が難しい状態であると言える。だから逆に言うと、いまのような展示会場の状態であれば「社名」や「商材名・領域名」だけでもブースに入ってきてくれる来場者はいるということだ。なにせ、来場者が入るべきブースなのかどうかが分からないブースがほとんどなのだから、半信半疑ながらブースに立ち寄ってくれる来場者はいる。しかし、それが通用するのも今だけかもしれない。

 

来場者にとって「このブースに入るべき」と即座に分かるブースとは前述の【来場者―目的】型のブースだが、このようなメッセージを打ち出している出展者が少数派なので、「関係あるかもしれない」ぐらいの気持ちで各ブースをまわり、「結局関係なかったなぁ」とガッカリするのである。

 

メッセージの打ち出し方を変えるだけで、あなたのブースの成果は飛躍的に向上する。それは、「顧客に刺さる表現」を行っているブースが圧倒的少数派だからということからも理解いただけるだろう。

 

メッセージを構築するときには、【主体】と【結論】の軸を意識しよう。できあがったコミュニケーションが、以下の図のどこに該当するかを判断すればよいだけだ、難しいことではない。きっとできる。

 

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手前味噌ではあるが、来場者主体のメッセージを作るために「自社商材を適切に分析し」「ブースにコミュニケーションとして落とし込む」ためのフレームワークを提供している。活用するかどうかは自由だが、多角的な視点から顧客に刺さる表現と適切なアウトプット方法を考えることができるだろう。

 

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