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展示会ブース装飾・デザインの常識を疑え②【動線を読んでレイアウトづくりする罠】

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 一般的に展示会ブースづくりの「常識」や「暗黙の了解」となっているような考え方は様々なものがある。しかし、中には本当に正しいのか?と疑ってしまうような暗黙の了解も多数あるのが事実。今回のテーマは「動線に対する読み」と「ブースレイアウト」の関係性について。

 

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展示会ブースのレイアウトやデザインを考えるときに、会場動線に対する読みは必須項目である。ブースデザインを依頼すれば基本的に会場動線との関係性は押さえたうえでデザイン側からプランが提出されるだろう。

 

しかし、実はここで既に罠にハマっていることがある。「動線を読もう」と考えた結果起こる状況によって、適切な集客が阻害される可能性もあるのだ。それはなぜか紐解いていこう。

 

なお、この記事は主にブース外の影響によるレイアウトの考え方について触れている。ブース内のレイアウトについて知りたい方は別の記事にしているので、この記事の最後にリンクで紹介する。

 

 

 

「動線を読む」と考えたときに捉われがちなポイント

 

展示会ブースへの集客を考えると、やはり来場者が多く流れてくる方向に対して適切なサインを掲出したり、ブースに入りやすい構成としなければ!と考えることは出展者であれデザイナーであれ共通しているように見受けられる。

 

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さて、ここで問題。

 

「自社ブースに接する通路のうち、通行量が多いのはどの通路か、あるいはどの進行方向から来る来場者か」と考えることは展示会ブースのレイアウトづくりでは一般的である。

 

この文章の時点で実は既に罠にハマっているのだ。さて、どこに問題があるかのか・・・

 

答えは「自社ブースに接する通路のうち」という部分だ。

 

会場動線を読んだのに、結局自社ブース前の「通行量」しか意識しない問題

自社ブースに接する通路の通行量を想定する際には、会場動線を参考にすることが多い。その際、一般的には以下の2点から会場動線の特徴を読み取ろうとする。

 

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  1. 会場のメイン通路はどこ?
  2. 来場者の主な進行方向はどちら?

 

これらを考えたうえで、自社ブース前の通路に対する動線を分析するのが一般的。しかし、自社ブースに接する通路の通行量を考えることは、間違っているとまでは言わないまでも、もう一歩進んだ分析と設計が必要なのだ。

 

動線分析は受身になってしまう危険性を持つ

最も大きな問題は、ブース前通路の通行量が「多い」「少ない」という視点だけで考えてしまうと、「通行量の多い進行方向に対して影響を及ぼそう」という意志が反映されないブースになってしまうことだ。

 

つまり、ブース前の通行量を最初から受け入れた状態でスタートしている、受け身のブースということになる。乱暴な言い方をすれば「自社ブース前を通過する来場者以外については諦めている状態」と言えてしまう。

 

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これは、心の底から勿体ないと言わざるを得ない。

 

展示会来場者のうち、自社ブース前の通路を通過してくれる来場者は全体の何%だろうか。しかし、もし自社ブースの訴求点が来場者の多い通路からでも視認できていたとしたら・・・!?、もしかしたら通路を曲がってわざわざブースにやってきてくれる来場者が増えていたかもしれない

 

「あなたのブースの前の通路のうち、通行量の多い動線はどこだ?どっちだ?」という考え方は間違っている。

「あなたのブースが見える通路のうち、最も来場者が多く通行する通路はどこだ?どっちだ?」という考え方が重要なのだ。

 

自社ブースが「影響を及ぼすことのできる」来場者の位置と進行方向は?

 

会場全体の動線を分析したのに、自社ブース前通路の分析に会場動線に関連する情報を参考にするのは勿体ないのだ。なぜなら、得た情報からは自社ブース周辺通路の通行量もある程度の分析ができるうえ、それらの通路のなかには自社ブースが影響を及ぼすことのできる来場者の位置と進行方向があるから。

 

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会場全体を「動線」という「傾向」で考えようとすると見逃してしまいまう。それぞれの通路を歩く「個々の来場者視点」にまで落とし込んで考えてみないと気付かないものだ。定量的か定性的かというと動線分析は定量的な分析に近いとも言えるが、ここから先は個人の行動という定性的な分析とも言える段階に入る。

 

影響ポイントと進行方向

分析の方法は難しくない。自社ブースの周辺通路から、自社ブースが見える来場者の位置と進行方向を考えるだけだ。

 

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この図を見ると分かるとおり、同じ通路でも進行方向によって自社ブースが見える来場者と見えない来場者が存在する。そして、自社ブースが影響を及ぼすことのできる来場者とは、進行方向上に自社ブースが見える来場者だ

 

Cの通路、Gの通路を通る来場者に対して自社ブースが何かアクションを起こすことは難しいだろう。来場者から自社ブースはほぼ見えないため、この進行方向の来場者は、運に任せて交差点を自社ブース側に曲がってくれることを期待するしかない。

  

しかし、A・B・D・E・F・Hの来場者については進行方向をまっすぐ進めば、ある一定の場所に来たときに自社ブースが視認できる。ということは適切に働きかけをすれば、来場者をブースに引き込む動機付けができるということだ。

 

では、このA・B・D・E・F・Hのうち、どの進行方向の通行量が多いのだろうか・・・それは会場全体の動線を分析しないと見えてこない。自社ブース前通路の通行量が最も多いのであればシンプルに考えればよいが、それ以外の通路の通行量が明らかに多いことが分かっているのであれば、何らかのアクションを通路に対してするようなブースを作った方がよい。

 

手元にあるはずの主催者から提供された小間位置図を、もう一度見直していただきたい。

来場者があなたのブースに辿り着くためには、どの交差点で曲がらないといけないか?、どの交差点を直進しないといけないか?

この視点を大切にしてみよう。

 

来場者行動とストレスの関係性

さて、ここからは来場者の行動に注目してみたい。一般的に人は「いま行っている行動を変えること」に対してはストレスを感じるものだ。今続けている行動をそのまま続ける方がストレスもなくスムーズに続くのだ。

 

このような現象は現状維持バイアスとも言われているが、同じような現象が展示会場を歩く来場者にも起こるということを前提にすると、来場者が「取りやすい行動」や、逆に「取りにくい行動」が見えてくる。幾つか、展示会場の交差点を挟んでの具体例で考えてみよう。

 

①直進し続けるよりも、曲がる方がストレス。

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②広い通路に曲がるよりも、狭い通路に曲がる方がストレス

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③反時計回りよりも時計回りの方がストレス

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※ブース位置が会場端の方だったりすると異なる

※陸上競技のトラックや野球のベースも反時計回り(左回り)

 

さて、先ほどの具体例に戻ってみると・・・

 

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B・D・E・Hの進行方向にある来場者は、そのまま直進すれば自社ブース前に辿り着くので敢えて積極的に打ち手を打たなくともよいかもしれない。しかし、AとFの来場者に対しては「曲がる」という行動を誘導したいので、何かしらの打ち手が必要になる。仮にAやFの進行方向が会場内で最も通行量の多い通路であった場合、何かしらのアプローチを打つ必要性はさらに強くなる。

 

来場者にとってストレスの強い行動を取ってもらうときには、より強い「動機付け」が必要となる。そのうえ、その行動は一瞬で誘導しなくてはいけない。ブース前を通過する来場者以上に周辺通路を通過する来場者は一瞬で目線を動かしてしまうものなのだから。

 

「ストレス」は一種の警戒心とも表現できる。展示会ブースと来場者の警戒心の関係性については過去の記事でも触れているので参考にしていただきたい。

www.tenjikaibooth.net

 

モデルケースで考えてみる

実際の展示会場で見かけたケースに近い状況を分かりやすくリライトした。

 

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このように、メイン看板をブース前の通行量【多】の動線に向けて見やすくレイアウトしたブースがあった。ブースに接する通路だけ見ていると正解に感じるのだが、実際は周辺通路に通行量が段違いのメイン通路があったのだ。そして、メイン通路からは「ブースは見えているのに動機付けにあたる要素は視認できない」という、とてつもなく勿体ない状況に陥っていた。

 

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このようにメイン通路に対するケアの情報と、ブース前通路をケアする情報をそれぞれ掲出していれば、通行量【超多】の通路に対しても動機付けができていたのに、動線分析を自社ブース前の通路だけに適用してしまったがために、打つべき打ち手を誤ってしまった事例と言える。

 

「どの来場者に」「どう行動してほしいのか」意志を乗せる

つまり、効果的な集客につなげるための動線分析と設計とは、

  1. ブースのなかで「どの方向」に「どんなサイズ」で「どんな情報」を「どんな表現方法」で掲出するか
  2. 「どの方向に歩いている来場者」が「どの地点に辿り着いた時点」で「どんな行動を取ってほしい」のか

という意志を元に構築する作業である。と言えるだろう。

 

来場者の視点で考えてみよう。「どの通路を歩いているとき」に「何が目に入ってくれば」、そのブース(あなたのブース)に向かってみようかと考えるのか。来場者の視点と感情をリアルにイメージしてみる作業だ。

 

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身も蓋もないのだが、自社ブース前の通路を通っている来場者については、基本的に直進さえし続けていればブース前を通ってくれるわけで、来場者にとってのストレスは少ない。

つまり、ブース全体のなかの視認しやすい位置に動機付け要素があればブースに入る確率は自然と高まるが、周辺通路の来場者は「強い動機付け」が無ければブースに足を向けることは少ない。それも会場の動線次第、そこまで考えなくてもよいケースとしっかり考えた方がよいケースが存在するので、適切に分析していただきたい。

 

影響を及ぼすための具体的な方策は?

最も効果的に機能しうるのはキャッチコピーであると断言できる。費用対効果の面からもキャッチコピーに力を注ぐことは非常に理にかなっている。

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キャッチコピーやサインは前述のような重要交差点に対して見せるものとも言える。しかも大抵の場合は「遠い」場所なので「視認性」が非常に重要になる。勘違いしないでいただきたいが、「視認性」と「サイズ」は相関しない

 

サイズが大きいからと言って見やすいとは限らない。「視認性」をよくするにはサイズ・余白・表現のバランスを取ることが必要だ。と考えると、やたらめったらにキャッチコピーをゴテゴテと配することはオススメできない。

 

とことん顧客志向を突き詰めて来場者に乗り移り、どうすれば自社ブースに向けて「進行方向を変えるに足りる動機付け」が出来るのか、ということを考えてみよう。

 

そのほか、会場動線に影響する項目

 

会場動線を知るにあたって、基本的に押さえておきたい項目は主に以下の3点だ。

 

  1. 小間の配置(全体の位置関係と集客力のあるブース)
  2. 通路幅
  3. 会場受付位置

 

このなかでも、小間位置図を見ただけではわからないのは2と3ですので事務局に確認が必要。

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通路幅と集客の関係性

広い通路よりも狭い通路の方が来場者のストレスが高まるため、通路幅の狭い通路の方が集客は減ると想定される。(もちろん、他の要素の影響もある。)

 

また、通路幅は視認性に対する影響が強いので、特に狭い通路の場合は動機付けにあたるサインの掲出位置を見誤らないように注意が必要になる。ブース前通路が狭い場合、ブースの前方ギリギリにサインを掲出すると、周辺からの視認性が悪くなってしまうことがある。通路幅が3mぐらいの場合には要注意だ。

 

自社ブース前を含む周辺通路の通路幅については確実に事務局から情報を得ておくように意識しておくとよい。事前に確認しておくことで、装飾会社に対するオリエン時にも相手の理解が早くなる。

 

受付位置から近い入口より来場者は会場内に入ってくる

展示会の受付位置は事務局に確認しないとわからない場合が多い。当然、来場者は受付をしてから会場内に入るので、受付に近い入口から展示会場に入ってくる。

 

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困ったケースでこのようにほぼ同じ場所に2か所出入口が作られる場合がある。この例では通路幅の広い動線が入口となって来場者が流れてくると安易に想定したところ、実際には受付がもう一方の出入口側に作られていたため、裏側からの来場者が多かったという困った事態が起こっていたブースだ。

 

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主催者の想定を確認する

会場全体の来場者の流れは主催者に見解を聞くことができれば最もスムースだろう。もちろん、実際の展示会場では想定通りに来場者が動くとは限らないので確約はしてもらえないうがだろうが、そもそも「主催者が作りたい人の流れ」という意図があるはず。会場全体の人の流れのイメージを教えてもらえるかは聞いてみないと分からないが、それでも確認することから一定の方向性は見えるだろう。

 

来場者「個人」の行動に落とし込んで考える

 

個人の行動まで落とし込んで考える視点が重要とは既に述べた。改めてここを掘り下げてみよう。

 

「動線」という総量で見ると全体的な傾向はわかったとしても、最も重要な「来場者個人がどう感じるか」という観点が抜け落ちてしまうことが、実は問題になる。

 

余談だが、展示会場で個々人の行動にまで落とし込んで観察すると非常に面白い発見がある。このサイトや各所で言われる一般論や方法論は、もちろん「多数派」という行動を切り取ったものであり、多数派を狙うから効率的という側面もあるのだが、一方で多数派に該当しない「少数派」という行動を取る人たちが相当数いるのも事実だ。

 

例えば、来場者の多数派は同じ通路を何度も通らないだろう、しかし少数派の中には何周も同じ通路を通って何周目かでようやくブースに入る来場者もいる。(ブースに入る勇気が出なかっただけかもしれない)

 

来場者の多数派はブース前を一瞬で通過する。しかし、少数派の中にはブースを遠巻きにじっと見つめ、来場者がわざわざ声をかけに来るのを待っているような来場者もいる。

 

このような、ある種「理にかなわない」行動を取る来場者は、展示会場で「個人の行動・視点」を起点に行動観察しないと存在に気付かない。そして、このような来場者を「少数派だから」と無視してしまっていると、個人個人の行動のなかにある重要な気付きを漏らしてしまう危険がある。なぜなら、我々が知りたいのは客観的な視点ではなく来場者の主観的な視点なのだから。

 

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総量から分析できるのは傾向だ、傾向は重要だが全てではない。そこから落とし込んだ「個人」に目を向けないと、せっかく傾向を掴んでも打ち手を誤ってしまう危険がある。

 

実際の図面から確認する項目

 

 

■会場図(全体) 

会場受付・入口の位置、会場のなかで主要な動線、主な通路幅、駅・バス停の方向、その他集客や動線に影響を及ぼす可能性のある要素を確認する。

 

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■会場図(ブース周辺)

各影響ポイントと進行方向、周辺の通路幅  ( 装飾規定の高さ制限:セットバックも記載すると分かりやすくなる)を確認する。

 

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おわりに

 

会場動線を分析しようとする姿勢自体は絶対的に必要なモノだ。しかし、それが自社ブースに接する通路だけの分析になるのは受け身のブースづくりに繋がり勿体ないということはお分かりいただけただろう。

 

ただし、どんなに分析をしたとしても実際の展示会本番に挑んでみると、思ってもみなかった方向から来場者が流れてくるというケースも当然のようにある。その為、自社ブースに接する通路・進行方向のなかで「捨てる通路・進行方向」は基本的に存在しない、という前提に立っておいた方が適切だろう。

 

今回はレイアウトのなかでもブースの外の要素について考えてた。次回はブース内のレイアウト設計について考えてみよう。

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