展示会の強化書

展示会ブースの企画・装飾・デザイン・運営など展示会にまつわるプロセスのノウハウ提供ナンバーワン!展示会の狙いを強化する「強化書」です。

来場者の行動を想定することが、どこまで装飾会社にできるのか

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これまでの記事は展示会の出展者向けに発信してきたが、この記事は装飾会社(展示会のブースづくりを担う立場)の方にも読んでいただきたい内容だ。

 

展示会のブース装飾業界はニッチながらもそれなりの市場規模を持った業界だろう。(もちろん展示会以外の空間制作をしているのでディスプレイ業界と広い意味では捉えられているが

その展示会ブース装飾業界全体に蔓延する課題と私が捉えている点について触れていきたい。

  

展示会の本番を知らない装飾会社の担当者

 

展示会ブースの装飾会社にブースづくりを依頼したことのある出展者の方は、こんな経験をしたことがないだろうか?

 

無事に設営が完了しブースができあがった翌日の本番日、装飾会社の担当者が朝からブースの周りにいたんだけれどもお昼ぐらいには帰っちゃった、何しに来たんだろうか、問題なくブースと人が動き出したか確認しに来ただけ?。次に来たのは撤去の直前。

 

この担当者の行動、展示会業界では割と一般的な行動だと思われる。

 

場合によっては設営日だけやって来て、本番日には会場に来ない担当者もいる。この行動、ブース運営を請け負っているわけではなく、依頼されたのはブースの装飾工事と撤去のみなので、担当者の行動として間違っているというわけではない。しかし、この行動ばかりになると弊害が起こる。

 

装飾会社の担当者は展示会の本番を十分に見ない。出展者が心血を注いで準備に時間を費やしたうえで臨んでいる展示会本番の様子を、装飾会社の担当者は断片的にしか見ていないのだ。


展示会が終わったあとに装飾会社の担当者から「ブースの出来はどうでしたか?」、「何か気になった点はありましたか?」と聞かれることはあるだろう。しかし、装飾会社の担当者は、実際に制作した展示会のブースがどんな機能を果たしていたのか、自分自身の経験として体感していないのだ。

 

少し言葉を変えると、装飾業界にいる人たちは「作ること」が目的になっているという傾向があるように見受けられる。しかし、出展者にとって展示会ブースは「使い、成果を出す」ことが目的だ。当然だろう。

 

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「使い・成果を出す」目的に沿ったブースであったのかどうかは、展示会後に出展者からヒアリングしようが、本番の様子をブースの横からじっと見ていようが、実はよくわからない・実感ができないものなのだ。

 

少なくとも、装飾会社の担当者が実際に3日間展示会場のブースに立ってみるという経験をすれば、「聞いたこと」「見たこと」がいかに実感を伴わないものだったかが理解できるはず。

 

展示会のブース装飾を企画・デザインすることを生業にしている人のなかで、実際に展示会の本番3日間、ブースに立って運営した経験のある人はごく少数であろう。「作ること」ばかりの経験やノウハウを重視して「使うこと」からの学びが少ない、「作ること」が目的化している展示会ブース装飾業界全体の問題であると感じている。

 

「使うこと」起点でデザインができないと、いつまでたっても展示会ブース装飾業界は進歩しない。ブースを使った経験がない担当者から出てくる「効果の出るブースデザイン」という言葉、どこまで信用できるだろうか?

 

実体験を踏まえて想定するとブースデザインが変化する

 

さて、ここからは展示会の装飾会社の方に語りかけよう。


一つの具体例から考えてみるとよい。ブースの奥行きが2.7mと狭いので展示台を通路側ギリギリに設置、ある接客スタッフ1名が会期中通路に立って来場者を案内するというレイアウトを作ったとする。このレイアウトにより、スタッフには弊害が起こる。それはどんなものと想像できるだろうか。

 

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このレイアウトの場合、通路が全面パンチカーペットで覆われているような展示会でない限り、接客スタッフは展示会場の剥き出しの床に3日間立ち続けることになる。あなたはパンチカーペットのない場所(通路など)に3日間立ち続けるということが、どれだけツラいことか知っているだろうか?、体験したことがあるだろうか?

 

あの薄いカーペットでも有る場所と無い場所では足への負担がまったく変わる。そんな場に3日間立ち続けると当然疲労が蓄積します。(ちなみにピットの上に立っているともっと足にダメージが加わる。)

 

同じ人が3日間ブースに立ち続ければ、最終日の3日目の午後あたりには疲労で接客のパフォーマンスはどうしても低下する。しかし、来場者数は3日目の午後が一番多いというパターンが多い。一番来場者がたくさん来るタイミングなのに疲労でパフォーマンスが落ちてしまう、まったく非合理なことだ。

 

例えば、通路から60cm後ろに下げた場所に展示台を設置すれば、接客するスタッフも基本的にパンチカーペットの上に立てるだろう。

 

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奥行き2.7mのブースでは難しい・・・と考えるかもしれない。しかし、それは空間上成立するかどうかだけを考えていて「人の動き」が成立しているかどうかを見ていない発想だ

 

展示会のブースは空間が成立しているかどうかでなく、最終的に「人の行動」が適切に運用されてはじめて成立していると言える。しかし、「作ること」を目的としたブース制作のプロセスでは、装飾会社の企画担当者もデザイナーもどんな空間が最適なのかわからない、自分たちがわかっていないことに気付かないままなのだ。

 

人の行動を想定したデザインをするために必要な経験値

 

どうすれば「人の行動」を想定したデザインができるようになるのか。これはとてもカンタンだ、3日間展示会の開催中のブースに立てばよい


いま、展示会の装飾を依頼してもらっているクライアントに頼んでみるとよいだろう。「チラシ配りでも客寄せでも運営のサポートでも、無料でなんでもやりますので3日間お手伝いさせてください」と。そこまで言う人なら断られないような気がするが、どうだろう?

 

あるいは、展示会の装飾会社に新入社員が入ったとき、ブースの「運営」を研修プログラムの一つとしてみてはいかがだろう。「装飾会社」は「装飾」の研修をすることはあっても「運営」を研修することは少ないだろう。しかし、ブースは作ることではなく使うことが目的だ。できれば、毛色の異なる展示会で複数回経験することが望ましいが、たった一度でも経験したことあるかどうかで、認識に雲泥の差ができはずだ。

 

あなたはそこで初めて、展示会の会期本番で自分たちのデザインが適切であったかどうか実感を伴って知る

 

例えば・・・

  • 3日間という時間が存在することが、接客のパフォーマンスにどう影響するかを知る。
  • 実際に自分がパンチカーペットの上に3日間立つのと、パンチカーペットを敷いていない通路の上に3日間立つのではどれだけ体の疲労が異なるのかを知る。
  • パネルやグラフィックのサイズ・位置関係は接客する距離感で見たときに適切だったかどうかを知る。
  • ブース内の動線は複数の来場者を複数箇所で迎えるのに適したレイアウトになっていたのかを知る。
  • 照明器具の照度が明るすぎて逆に接客しずらいという事態が起こっていないかということを知る・
  • 制作したプレゼンテーションのBGMが派手すぎて接客の邪魔にはなっていないかを知る。

などなど・・・ほかにも山ほどの気づきがあるだろう。

 

こういったポイントは、自分自身が展示会の本番3日間を経験して、初めて実感できるポイントだ。遠巻きにブースを見ているだけでは中々気付かない、会期初日の午前中だけブースを遠くから見ている場合ではない。実感ができるからこそデザインに反映することができるようになる。

 

忘れないでいただきたい。すべての展示会ブースのデザインは「人の行動」を誘発するために構成されているということを。

 

また、「人の行動」とは来場者にとっては数分のことでも、出展者にとっては3日間という積み重ねがあることを。この3日間という時間軸を踏まえた「人の行動」をデザインできたときこそ、展示会の装飾会社としての価値が高まると強く感じている。

 

人間中心の展示会デザイン

 

さて、デザインや設計界隈では「人間中心デザイン」あるいは「人間中心設計」「ユーザー中心設計」「UXデザイン」という言葉が謳われ出して以降、かなりの時間が経過している。

 

しかし、こと展示会のデザインという意味では業界全体の傾向としてはこの人間中心デザインの流れから乗り遅れて二周三周と既に周回遅れになっているのではと感じている。


来場者・出展者、その双方の行動、これらを基軸にしたデザインができなければ、展示会ブース装飾会社という業態は、テクノロジーの進化によって今後無用のものとなる未来が来ることを危惧している。だが、展示会業界においても「人間中心デザイン」の原理原則が構築できれば、業界の強さに繋がっていくはず。

 

展示会ブースづくりに人間中心デザインの考え方を取り入れるとどうなるのか。それは実際に出来上がるブースそのものだけではなく、ブースづくりにおける時間軸のなかでオリエンテーションや企画・デザイン作業・制作の推進などのプロセスを人間中心に作り込むことにつながる。これは、デザイン思考的、デザイン経営的なモノの考え方に近づいていくということだ。


本来の人間中心デザインという言葉の意味からは少し逸れるかもしれないが、「人間中心の展示会デザイン」についても、具体的な考え方を考えていきたいものだ。 

 

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