ここまでまとめた自社の強みを別の角度からも確認し、展示会で打ち出す自社の「強み」を一言に集約する。
ペルソナ(顧客)の視点に基づいた強みを打ち出すことができれば、これまで自分たちが思い描いていた強みよりも、はるかに来場者の心を打ち、質の高い集客につながるはず。
現在の顧客から収集できる情報と、これまでに分析した自社の魅力や顧客(ペルソナ)の課題などを突き合わせて見比べながら、展示会で打ち出す自社・製品・サービスの強みを絞り込む。
①現在の顧客から収集できる自社・製品・サービスの強み
現在の顧客からも強みに関連する情報は収集できる
自社ビジネスに対して理解の深い顧客がいる場合、そのような一定の関係性を築くことができている顧客からは、自社の魅力だけでなく他社と比較したときの選定理由やポイントなど踏み込んだ情報をヒアリング可能だろう。これらの情報は顧客個人の実感を伴っている分、自社の強みを探すにあたっての根拠となる。
あるいは、直接ヒアリングせずとも、普段の取引のなかで発生した出来事・かけてもらった言葉・相手の反応などを、顧客と接する自社の営業担当から拾い上げることでも一定の理解に繋がる。
顧客の背景を押さえておかないと誤った情報の受け取り方に繋がる
しかし、一方で直接情報を吸い上げるということは影響力が過大になるという可能性があるということを理解しておく必要がある。取引先から直接ヒアリングできるということは、生の定性的な意見を聞くことができる貴重な機会ではあるのものの、その一方でユーザー調査を日常的に行う機会が少ない場合は、「意識して拾い上げた声」を重視しすぎてしまうことがある。
根本的に、BtoBの調達に関わる関与者は多く、取引先社内でも関与者ごとに印象が異なるケースを想定しておいた方がよい。
自社の営業担当者が接する取引先担当者には取引先担当者のフィルターが存在する。担担当者のフィルターを通した情報しか基本的には入手できないという前提のもと、吸い上げた意見を取り扱うべきだろう。
どんな顧客から情報を拾い上げるか事前に固めておく(ペルソナに近い顧客を探すこと)
まず、意見や反応を拾い上げるのはどんな顧客でもよいわけではない。一般的な方法として紹介されるのは【自社の売上上位20%に該当する顧客】といった売上起点での顧客分類だが、本当にそれでよいのかは疑問が残る。
自社の売上上位20%が、本当に自社にとって望ましい顧客であるのかは、各企業それぞれの実情により異なるからだ。本当はもっと自社技術を評価してくれる顧客との取引を広げたいのに、状況がそれを許さず価格競争を強いる顧客が売上の多くを占めてしまっているケースも当然のように存在する。
何度か触れているが、展示会とは【自社が出会いたい顧客】との出会いを【狙って演出する場】である。いま考えを深めていることは、自社にとって望ましい顧客たる企業・人が自社のどこに魅力を感じるのか知りたいという作業なのだから、自社にとって望ましい企業(つまりペルソナに近い企業や担当者)から拾い上げるべきだろう。
もちろん、この作業をする前に「自社にとって望ましい」とはどのような顧客像であるのかを社内で議論し固めておく必要がある。売上で測るのか、LTVで測るのか、あるいはロイヤルティで測るのか、判断基準は各社の実情に合わせて検討いただければよいが、私は常に「持続可能性」を軸に考えてほしいと願っている。
前提を押さえたうえで、聞くこと・拾い上げる情報
- 自社と取引をしている主な理由、他社との違い
- 最近、顧客からほめてもらったことはあるか(顧客の感動体験)
- 反応のよい顧客・喜びを伝えてくれる顧客はどんな言葉をかけてくれるか
- 応対や要求は厳しいが取引を継続してくれる顧客はどんな言葉をかけてくれるか
直接聞く方法、接点をもつ担当者に聞く方法、それぞれ方法はあるが双方に共通して意識しておいた方がよいポイントは、①どんな体験だったかという点と、②他社との違いはなんだったかという点だ。
②ペルソナ視点で感じた自社・製品・サービスの強み
顧客(ペルソナ)視点で感じた自社・製品・サービスの強みは以下の分析を経て見出す。これまでの作業は過去の記事を参考にしていただきたい。
■自社分析
■展示会のペルソナ設定
■ペルソナ視点で自社の魅力探し
展示会で打ち出す自社・製品・サービスの強み
ここまで情報を洗い出したうえで①と②を突き合わせて重要なメッセージを絞り込む。
さて、「絞る」とは取捨選択である。削ぎ落した表現であればあるほど展示会場では一瞬で伝わる。伝わる「速度」と「深さ」の両方が大切になるので、削ぎ落し過ぎもマイナスに働くことも稀にあるのだが、多くの出展者は「深さ」に対する意識のみで端的に伝える「速度」ついては意識が向いていない。
つまり、この段階では削ぎ落しすぎでは?と不安になるぐらい削ぎ落してしまって構わない。そこから見出された言葉が、顧客に最も伝えるべきワンフレーズなのだから。
概ね自社の強みが数行で表現できるぐらいになっているだろう。もし、20文字ぐらいの短文でまとめていることができれば、そのままキャッチコピーとして使うこともできるかもしれない。ここまでの作業で「何を伝えるか」がようやくカタチになった。このあとの作業は「どう伝えるか」という方法論の実践に入っていく。